熊本市東区の健軍駐屯地に9日午前0時18分、長射程ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の発射機が搬入されました。健軍駐屯地は住宅地に隣接し、長射程ミサイルが配備されれば、市民らの攻撃を受けるリスクが高まります。これまで九州防衛局は住民説明会を求める声に応じず、搬入日についても知らせていませんでした。搬入の状況はどのようなものだったのか、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会熊本」の事務局長、海北由希子さんにインタビューしました。
メディアは事前に知っていた
——ミサイルの搬入を知った経緯は?
3月7日夜、愛知県小牧市で軍拡に反対する抗議行動や集会の後、懇親会に出席していました。そこに熊本の仲間から電話がありました「NHKが8日に搬入と報じている」。慌ててニュースを見て、NHKに電話をしました。ソースを確認すると「防衛省情報です」とのこと。地元紙の熊本日日新聞にも問い合わせました。「NHKが報じたから、うちでも報じた」と言われ、マスコミは少し前から搬入日を知っていたのではないかと思いました。
8日朝、飛行機で福岡へ。福岡の警固公園で開かれた国際女性デーのデモで、「本日21時30分から健軍駐屯地の正門前で集会をします」とスピーチしました。その甲斐あってか福岡や長崎、佐賀、そして地元・熊本から市民ら150人が集まりました。私は21時45分ぐらいに正門前に着きました。抗議行動をする市民らはペンライトを持ち、寒いのでカイロや飲み物が配られていました。正門に向かって右側に私たち、左側にミサイルに賛成している人や右翼30〜40人がそれぞれ結集し、騒然としていました。

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警察官は20人ぐらいいましたが、基本的に何もしません。
声が届かないので、私たちがマイクを使ったところ、すぐに「マイクを使わないでください。何時だと思っているんですか」と警察官から制止されました。一方で右翼がヘイトスピーチをしていても取り締まらないんです。仕方がないので、プラスチックのメガホンでしゃべりました。
住民説明会の求めを無視した政府
急きょ書き上げた抗議声明文を読み上げました。
健軍駐屯地への12式地対艦誘導弾改良型配備に抗議します!!
3月7日の夜、NHKが陸上自衛隊健軍駐屯地に12式地対艦誘導弾改良(能力向上)型の車輌を搬入することを明らかにしました。各社の報道によると、搬入は8日の深夜から9日の未明とされています。このミサイルは、従来の12式地対艦ミサイルよりも射程が大幅に伸び、日本の領域外にある対象を攻撃する能力を持ちます。政府はこれを「反撃能力」や「抑止力の強化」と説明しています。しかし、私たちはこの配備に対して強い懸念を抱いています。
まず第一に、このような重大な軍事装備の配備が、地域住民への十分な説明や議論の機会すらないまま進められたことです。本来、地域社会の安全に大きく関わる問題については、住民に対する丁寧な説明と意見を述べる場が設けられるべきです。しかし今回、そのような住民説明会はまったく開かれていません。私たち県民の殆どが住民説明会の開催を求めているにもかかわらず、これを無視した政府の行為に私たちは強い憤りを持って抗議します。
第二に、このミサイルは日本国憲法、特に“戦争放棄を定めた日本国憲法第9条”に反しています。この長射程ミサイルは相手国の基地や拠点を攻撃できる能力を有し、これまで日本が掲げてきた「専守防衛」の原則を大きく転換させることになります。
さらに、現在、中東はじめ世界中で軍事的緊張が高まっている現状にあります。このような時期に、攻撃能力を持つミサイルを国内各地に配備することは、地域の緊張を一層高め、日本が戦争に突き進む危険性を高めることになるのではないでしょうか。
健軍駐屯地は熊本市街地に位置しており、人口密集地の中にあります。そこに長射程ミサイルが配備されることは、万が一の際に地域住民が攻撃対象となるリスクを背負うことにもつながります。政府は犠牲になる県民のことを考えているのでしょうか。
私たちは、日本が再び戦争への道を進むことを望んでいません。憲法の理念に基づき、外交や対話によって平和を築く努力を求めます。
そのため、住民の声を無視して進められる健軍駐屯地への12式地対艦誘導弾改良型の配備に対して、私たちは断固として反対の意思を表明します。
2026年3月8日
平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本
熊本県平和委員会
駐屯地の中から警官がバッと出てきた
——搬入時の状況は?
ミサイルは静岡県の陸上自衛隊富士学校から持って来たと聞きました。静岡から新門司港まで船で運び、8日の21時ごろ到着。その後は九州自動車道で運ぶ。仲間の一人が益城・熊本インターで見張っていて、23時50分ごろ「幌付きの大きなトラックが3両、降りた」。続いて「また違うのが来た!」と連絡がありました。
私はミサイルは正門から1kmほど離れた東門(裏門)から入ると考えていました。十数人の市民と一緒に東門に回りました。
正門に幌付きのトラックが入るのとほぼ同時に4両のトラックが東門に到着しました。東門が開いたと思ったら、駐屯地の中から警察官と機動隊員が計50人ぐらいバッと出てきて門の前に3列に並びました。私はフェイスブックのライブ中継を始めました。一人の警察官が張り付いてきて「危ないです」「危ないです」と繰り返しました。他の警官は無言でした。
https://www.facebook.com/yukiko50kg/videos/814933998301693
警官の半分が向かいの弾薬庫側にある日の出門に並びました。電気が一斉に点いてミサイル発射機が搬入されていきました。警官に体をぶつけて制止され、座り込みをすることもできませんでした。搬入が完了したのは日付が変わって9日の0時19分でした。
「偽物の車輌」が正門から入った
——そのとき、どんなことを考えましたか?
偽物の車両を正門から入れた。
誰を欺くため? 明らかに市民を欺くためですよね?
この計画自体、果たして民主主義国家がすることだろうかと思いました。
警察が自衛隊を守っている。では、私たちは誰が守ってくれるんだろうと思った。
今ここで止めないと車輌が中に入ってしまったら、市民にはもう何が起きているかわからない。それなのに、本当に簡単に搬入を許してしまった。
私たちは一体誰に助けてもらったらいいのか。
涙がこみ上げてきて、1回出始めたら止まらなくなりました。

——中国メディアの取材も受けたそうですね。
9日朝、中国と香港のメディアの取材を受けました。「私たち市民は中国との戦争を望んでいません」と伝えました。一方で、市民の中には、中国が攻めてくるという恐怖心にあおられてミサイル配備に賛成している人もいます。中国に日本の状況がどう受け取られるか、心配しています。
12式ミサイルを置いても抑止にはなりません。1両に6発ずつミサイル搭載が可能だそうですが、全部撃ったら、ミサイルを充填しに基地に戻るんです。ミサイル発射が一旦始まると攻撃も防御もなくなります。長射程ミサイルをお守りにするのではなく、戦争は絶対にしない、という一択しかないんです。
熊本県知事、市長とも知らされず
——ミサイル搬入は自治体の長にも知らされていなかった?
知事公室に聞いたところ、「今までは九州防衛局から連絡があったが、今回は県知事に事前に説明なく搬入された」ということでした。大西一史・熊本市長は全く知らされていなかったようで、Xで記者会見のやりとりを公開しています。「搬入されることをニュースで自治体の首長が知るのはいかがなものかと思います。そういう意味で遺憾だと申し上げました」と。
説明会に代え「ミサイル装備品の展示会」?
——搬入後はどのような行程があるのでしょうか?
「搬入」と「配備」の違いについて九州防衛局に聞きました。「搬入」しただけでは使える状態にはなっていない。すぐに運用可能となる「配備」は3月31日と聞いています。健軍には小さめの弾薬庫しかなく、全長10mの12式ミサイルは置けない。現在、造成中の覆土式弾薬庫が完成する2027年3月までは大分県の敷戸弾薬庫に保管することになるのだろうと思います。
どこかで阻止したいと考えています。
3月17日に、県知事、市長、県議会議員、市議会議員、地元の代表者(自治会長や町内会長)を駐屯地に招待し、「ミサイル装備品の展示会」があるそうです。それで説明したという既成事実とされてはたまりません。
3月29日には大分県の敷戸弾薬庫へのミサイル搬入があると聞いています。
3月31日が健軍駐屯地への配備完了。
この3日間に合わせ、抗議行動を行う予定です。

