困難を抱える若者を支援している認定NPO法人D×Pが今年7月、相談チャットなどで給付型奨学金を受けている大学生を対象に食料支援を募集したところ、前年10月の2.5倍の応募があり、約半数が「普段の食事に満足していない」と回答したことがわかりました。8月21日、今井紀明代表が東京都内で記者会見し、明らかにしました。物価高騰の影響で生活費が足りず、多くが給付型奨学金に加えアルバイト代を生活の原資にしており、自由記述では「実習が始まると、バイトができずに生活が詰む」などの現状がつづられていました。
若者対象の食料支援、前年比1.5倍に
D×Pは2012年から大阪を拠点に、困難を抱える若者をオンライン相談「ユキサキチャット」に食料支援や現金給付などを組み合わせて、支えて来ました。ユキサキチャットの登録者数は2025年8月現在18400人超、水道やガスなどライフラインの状況に合わせた30食を1パックにして送付する食料支援の発想食数も33万1860食と、前年比約1.5倍に伸びています。
このうち給付型奨学生からの相談が増えてきたことから、面談を経ずに緊急食料支援を行う「給付型奨学生食料支援プロジェクト」を始めました。今年7月1日〜25日の期間に日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金を受給している354人から応募がありました。
奨学金とバイト代を組み合わせても、生活苦
応募者の普段の生活費の収入源は「アルバイト代」79.7%、「給付型奨学金」70.3%、「両者を組み合わせている」55.1%。

最近の物価上昇の家計への影響では「非常に苦しくなった」19.8%、「苦しくなった」71.2%と9割超が「苦しくなった」と回答しました。

特に食費について聞くと、「支出が大幅に増えている」10.2%、「増えている」65.5%。
普段の食事に満足しているかでは「全く満足していない」6.2%、「あまり満足していない」50.3%で、過半数が食事を満足に摂れていないことがわかりました。

「実習」期間、身体的にも精神的にも大変
自由記述では、とりわけアルバイトができなくなる「実習」期間に生活に困窮する様子が目立ちました。
教育実習の期間は収入が減る
中学生のころ、両親が離婚し、それ以来母子家庭で育った。母は定職に就いていないことに加え、4人きょうだいであるため、自身の生活費は自分で賄う必要がある。現在は、学費免除を受け、給付型奨学金を受け取っているが、物価の高騰のために十分な額の収入がない。アルバイトもしているが、現在の勤務時間でも研究活動に支障が出ているため、バイトの時間は減らしていきたいと考えているが、収入状況が変わらなければそれも無理である。今年度は教育実習もあるため、その期間はアルバイトができず、収入が減ることも心配である。
看護実習でバイトに入れず
私は看護学生で大学の看護科に通っており、最近は実習に向けて授業や課題が今までの倍以上になり、身体的にも精神的にもとても大変です。家に帰っても課題や勉強をしないと追いつけず、バイトをしていると提出期限にも間に合わないことがあるので、ここ3カ月ほどアルバイトに全く入れず、収入が途絶えてしまいました。そのため、今までのような生活ができず、友達に外食や遊びに誘われても断るしかなくなりました。今は生活費や食費を切り詰めて何とかしていますが、正直しんどいです。これからいよいよ実習が始まると、実習先までの交通費がさらにかかりますし、実習中は課題や記録でいっぱいいっぱいになるので、朝昼晩のご飯を作る時間すら取れないのではないかと不安です。実習に集中するために、少しでも食事の心配を減らしたい、というのが今の正直な気持ちです
また「食事を抜いている」状況も伺えました。
夜ご飯と昼ご飯を抜いている
ひとり親で育ちました。今は親元を離れて暮らしていますが、家賃や食料、電気、ガスなど自分で払うものが増え、なおかつこれらの値段が上がり続けています。家賃が払えないので夜ご飯と昼ご飯を抜くことが増えました。学校でお腹が鳴るのが一番の悩みです。恥ずかしいです。
「奨学金を物価スライド制に」要望

今井紀明代表は「消費者物価の総合指数は2020年を起点にすると11.7%も上昇した。でも、奨学金の額は上がらない。これでは学生は困窮する一方だ。まずは緊急給付等を行ってほしい。さらに、奨学金に物価スライド制を導入するなどして、奨学金の実質価値が下がらないようにしてほしい」と要望しています。