長射程ミサイルの東富士演習場への配備の期限が3月末に迫る中、反対の世論を盛り上げようと、市民団体「富士にミサイルやめて!の会」が21日、静岡市葵区の駿府城公園で集会を開きました。県内各地から450人が集まり、晴天の下、「富士から撃つな、ミサイル要らない」のコールを響かせました。
富士駐屯地ミサイル配備問題 富士山周辺には本州最大の1万2000haの東富士、北富士演習場がある。そのうち東富士演習場は静岡県の御殿場、裾野、小山の2市1町にまたがる8800ha。戦後、米軍が占領し、返還されたが、陸上自衛隊富士学校が管理し、米海兵隊のキャンプ富士が併存する形で今に至っている。1980年代から日米合同演習も行っている。
2025年8月、防衛省は国産スタンド・オフ・ミサイルの長期整備計画を発表。我が国への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除可能なスタンド・オフ防衛能力を強化する目的で、飛行距離1000km以上の長射程ミサイルを導入するとした。静岡県富士駐屯地の教育機関「特科教導隊」に2025年度中に島嶼防衛用高速滑空弾(長距離弾道ミサイル)を配備し、実践的な運用を開始。さらに2027年度には、国産の12式地対艦誘導弾能力向上型(長射程巡航ミサイル)を配備する計画だ。
憲法9条「武力による威嚇は永久に放棄する」
会の共同代表を務める弁護士の小笠原里夏さん=浜松市=が長射程ミサイル配備の現状について説明しました。

「昨年8月、防衛省から、富士駐屯地と熊本の健軍駐屯地に長射程ミサイルを配備すると発表がありました。期限は3月末です。来年度には、北海道、宮崎、横須賀にも配備されます。この狭い島国である日本全土をミサイル基地化しようとしているとしかいいようのない状況です」
小笠原さんは憲法9条を読み上げました。
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
「ミサイル配備の問題は日本を取り巻く安全保障環境が悪化している中でやむを得ない措置だと言われていますが、武力による威嚇という手段をとることは、日本国においてはできないはずです。静岡県がミサイル配備という形で武力による威嚇の一翼を担うことはどうしても避けたい。富士からミサイルを撃つ、富士がミサイル攻撃の対象になることは絶対に避けなければいけません」
同会によるミサイル配備反対の署名は1カ月で9000筆以上が集まりました。3月末までに静岡県の人口の1%にあたる3万筆を目標に募り、国に住民への説明と配備撤回を働きかける予定です。

すべての生き物の命を脅かすミサイル
続いてリレースピーチがありました。
◇三島市の大学生、浅羽いづみさん
昨日、洗濯物を干していたら、御殿場の演習場から訓練の音が大きく聞こえてきました。静岡県東部で平和な毎日が続くようにと思い、今日は参加しています。私たちの平和な生活を壊させません。

◇静岡市の保育士、服部瑶生さん
私の勤めている保育園では節分の行事をします。2歳〜5歳の子ども達はクラス一丸となって鬼に向かっていきます。最初は物を投げる、パンチするなどの暴力的な行動に出ますが、4歳児、5歳児さんが「それじゃだめだ」「鬼を倒すんじゃなくて、追い払うんだ」と諭しました。子どもたちは鬼の気持ちを考え、どうしたら鬼を傷つけずに保育園から出ていってもらうのかを考えました。
他国からの脅威は鬼のようなものです。それに対して、ミサイルのような武力行使で対抗していいものでしょうか? 子どもたちの方がよほど平和とは何かを知っています。保育園に来られること、いっぱい遊べること、ママと一緒にいること。これらは子どもたちが平和とは何かについて発した声です。
すべての生き物の命を脅かすミサイルは、たとえ自衛のためであっても持つべきではないと、子どもたちの姿を見て改めて思いました。子どもたちの未来をできる限り温かくて、幸福なものとしてつないで行きたいです。

日本を強い国にするなら軍拡より教育を
◇静岡市で中2、小5の子どもを育てる西田玲奈さん
学校教育にツッコミどころが満載です。まず、学校にお金がありません。校舎はボロボロ、トイレは暗くて和式のまま。命に関わる暑さなのに、教室にエアコンがないんですよ。体育館にもないところがある。そんなところに子どもたちが毎日行かなきゃいけないの、おかしいですよね。
先生たちも限界です。教員不足。誰かが休職すると、代わりの先生が見つからない。担任のいないクラスがある。おかしすぎます。
不登校の子どもが全国で35万人いるといわれています。実際にはきっともっといるはずです。こんな大問題がなぜ放置されているんですか?
子どもの貧困。教育費が払えない家庭、文房具を買うのも苦しいという家庭があるんです。
私は仲間たちと教育委員会や国会議員に聞きにいきました。みなさんが言うのは「お金がない」。お金、ありますよね? 使い方が間違っているんですよね? ミサイルに何千億円も使うのならば、そのお金を教育に回してください。
軍拡より教育。子どもたちの未来より大事なものはありますか?日本を強い国にするのなら、まず教育ですよ。子どもを大事にしない国がどうやって強くなるんですか?
なので、富士にミサイルは要りません。熊本にも、横須賀にも、北海道にも、沖縄にも要りません。

◇静岡市の牧師、松坂克世さん
(横断幕を広げ)富士駐屯地に配備される予定の高速滑空弾の長さを描いてみました。
これは何のために必要なんでしょうか? 人を生かすためではないですよね。地震や津波は人の手では止められませんが、ミサイルは止められます。私たち自身の手でミサイルを止めていきましょう。

説明も同意もないまま標的にされる怖れ
東富士演習場の地元からの発言もありました。
◇小山町の渡辺希一さん
ミサイルが配備されようとしている小山町から来ました。地元の思いをここで話します。小山町は私のふるさと、生まれ育って現在も住んでいます。私の家の上をオスプレイがあいさつに通過します。毎日のように砲弾の音が聞こえ、聞こえるだけなら大分慣れましたけど、時々家が揺れます。そんなところに住んでいながら、私はこれまで東富士演習場で大砲などを撃つことに対して、「世界遺産の富士を撃つな」と言ってきました。
ところが、今度はミサイルを配備するという。「富士から撃たせない」という新たな気持ちが生まれました。東富士演習場は50年以上前に防衛省と「ミサイルを持ち込まない」「ミサイル基地化しない」という約束をしている。それをいま、国は両方とも反故にしているんです。絶対にこれは許しておけない。
富士山が見える裾野市では国道を越えてロケット弾を撃って、住民の安全が脅かされています。遠い東の果てと思わず、ぜひ、県民のみなさんも演習場を見に来てください。こぶしを上げて一緒にがんばって行きましょう。

◇裾野市から10歳、7歳、4歳の子どもと参加した男性
裾野は東富士演習場の地元ですが、住民は事前に何も知らされていません。同意もしていないのに勝手にミサイルが配備されて、もしかしたら殺されるかもしれないし、標的にされるかもしれない。何の説明も同意も得ていないことをそのままにしてよろしいでしょうか、という問題だと思っています。
富士を加害の拠点としない
最後に静岡市の鈴木千佳さんが集会アピールを読み上げ、拍手で採択されました。
本日、私たちは、「富士にミサイルやめて!の会」の呼びかけにこたえ、駿府城公園東御門前広場に集いました。参加者は450人でした。
政府・防衛省は、他国領域を直接攻撃することができる「長射程ミサイル」の配備計画を進めています。陸上自衛隊富士駐屯地には3月末までに高速滑空弾、27年度末までに12式誘導弾能力向上型を配備しようとしています。
私たちはこの長射程ミサイルの配備計画に対して、断固とした反対の意思を表明します。
私たちが最も危惧するのは、この富士の地が誰かを傷つけるための攻撃の拠点となること、すなわち加害の場へと変貌することです。このミサイル配備は日本国憲法に違反し、「専守防衛」を外れ、平和共存を崩すものです。
私たちが求めるのは、武力による抑止という敵対の連鎖ではなく、粘り強い外交と対話による信頼関係の構築です。膨大な軍事予算は、本来、私たちの生活を支える福祉、教育、医療、そして災害対策のためにこそ使われるべきです。
平和の象徴でもある富士の麓に、誰かを殺傷するための武器を並べることを、私たちは望みません。私たちは改めてここに、戦争に反対し、加害の拠点とならず、被害の標的ともならないよう、行動することを誓います。


