殺傷能力のある武器輸出、「アメリカを排除しない」巧妙な条件設定 防衛省交渉で明らかに

記者名:

殺傷能力がある武器輸出解禁。「民間人を殺傷するリスクが増大するとは考えていない」なんてウソでしょ?

高市早苗内閣は4月21日、殺傷能力がある武器の輸出に道を開く防衛装備移転三原則の改定を閣議決定しました。これまで、「救難・輸送・警戒・監視・掃海」に限っていた使用目的の「5類型」を撤廃。戦後維持してきた武器取引禁止の最後の砦が崩れる政策の大転換です。これを受け、翌22日、「武器取引禁止ネットワーク(NAJAT)」など市民団体のメンバーら約20人が、東京都内で防衛省(防衛装備庁)、外務省、国家安全保障局の職員らと交渉を持ちました。交渉を通して、武器取引の相手国からアメリカを外さないよう巧妙な条件設定がされていることが浮き彫りになりました。

輸出された武器の適正管理は可能?

政府は閣議決定について、武器輸出に一定の歯止めをかけたと説明。「輸出先は日本と防衛装備移転協定を結ぶ国(現在は17カ国)に限る」「現に戦闘が行われている国への輸出は原則できない」などです。ただし、「我が国の安全保障上の必要性を考慮して特段の事情がある」と判断した場合は例外的に輸出できる」としています。

これらの条件について、NAJATの杉原浩司さんらが防衛装備庁に質しました。

「5類型を撤廃したことのデメリットは何が考えられるか?」という問いに、防衛装備庁の見解は「(殺傷力のある武器の輸出は)国際社会に色々な影響を与える。しっかりと管理していかなければ悪い影響を与えかねない。(武器の)移転先国が他国に侵略したりすることのないように、相手国に確認するなどして(輸出された武器の)適正管理を確保していく」。

アメリカの「国際法違反」 判断避ける

市民団体側の参加者が口々に「イラン攻撃をしかけたアメリカはどうなのか。ガザでジェノサイドを行っているイスラエルはどうなのか。国際法違反ではないのか」と尋ねました。

しかし、外務省人権人道課の職員は「具体的事実に即してその状況下で判断する必要がある。『民間人の殺傷』や『民間施設の破壊』が『戦争犯罪』にあたるかについて、我が国の認識を一概にお答えすることは困難」とし、アメリカのイラン攻撃が国際法違反であるとは断定しない政府の立場を踏襲しました。

これまでも、武器の共同開発やライセンス生産という抜け道があり、日本の三菱重工がライセンス生産したパトリオットミサイルが、すでに米国に輸出されています。このミサイルがイラン攻撃で使われていないか、また今後使われる恐れがないかについての質問もありました。防衛装備庁は「当該ミサイルは、インド、太平洋地域の平和と安定のために使われることを確認しております」と回答するのみでした。

防衛省防衛装備庁、外務省、内閣府国家安全保障局の職員が市民らの質問に回答した=東京都内

民間人を殺傷するリスク「増大するとは考えていない」

また、5類型撤廃によって、「日本製の武器が他国の人々を殺傷するリスクは増大するか?」という質問には、「移転(輸出)を認めうるケースを広げる一方で、審査を厳格化するので、リスクが増大するとは考えていない」と回答。市民団体側の参加者らは「ちょっと何を言っているのかわからない」「あり得ない」と声を上げました。

輸出先としない条件として挙げられている「武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国」にアメリカが含まれるかどうかについては、「個別具体的かつ総合的に判断することになるため一概にお答えすることは困難。装備移転(武器輸出)の案件が発生した段階で、その都度、そのときの状況で判断する」と回答がありました。その上で「(武器輸出の)仕向け国・地域において、現に戦闘が行われている」という条件をくり返しました。アメリカは第二次世界大戦終結後、ベトナム、アフガニスタン、イラク、イランなど他国への攻撃、派兵を行ってきましたが、自国内では戦闘が発生していません。

杉原さんは「こんな定義はアメリカを利するだけ。いま世界で最大の脅威はアメリカ。この定義は変えてください」と要望しました。

国際法違反の形で使用「想定していない」

また、「日本が輸出した武器が国際法に違反する形で使用されたりした場合、武器の回収や部品の提供停止などをするか」という問いに、防衛装備庁は「相手国により装備移転協定違反の形で使用されることは想定していません」と回答。

その上で、もし国際法に違反する形で使用された場合は「維持整備に必要な部品等の供給差し止めを含め、厳正に対応することが想定される」としました。

これに対し市民団体側からは「実効性が弱すぎる」と改善を求める声が相次ぎました。

「市民が武器輸出の状況を監視し、縛る」

交渉の後、杉原さんは「五類型が撤廃されたが、日本製の武器により民間人が殺傷されることにならないよう、市民が武器輸出の状況を監視し、縛りをかけていく必要がある」と話しました。交渉で明らかになった問題点を国会議員らと共有し、国会審議の中で実効性のある歯止めがかかることに期待を示しました。

交渉に参加した日本平和委員会などは、武器輸出禁止を求める署名に取り組んでいます。5月末を第一次の締め切りとし、衆参両院議長に提出の予定です。

紙の署名はこちらからダウンロードできます。

オンライン署名はこちら

感想やご意見を書いてシェアしてください!

記事を紹介する
  • X
  • Facebook
  • Threads
  • Bluesky