学研都市に長射程ミサイル保管か 弾薬庫14棟増設に揺れる京都・祝園㊦

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軍拡反対。声を上げ続けることが今を生きる者の責任だ

京都、大阪、奈良にまたがる西日本随一の文教都市に陸上自衛隊の弾薬庫が増設されようとしています。数年にわたりこの問題を追い、2本のドキュメンタリー番組を制作した毎日放送報道情報局の亘佐和子記者から寄稿をいただきました。全2回の2回目です。

納得出来る説明がないまま始まった工事

2025年7月、祝園分屯地が立地する二つの自治体の主催で、工事説明会が開かれました。防衛省ではなく自治体が主催し、そこに近畿中部防衛局の担当者が来て説明するという形です。京田辺市が1回、精華町が2回開催しましたが、精華町は町民以外の参加を許しませんでした。分屯地から5km圏内に住む「ほうそのネット」共同代表の呉羽真弓さんは、精華町民でないという理由で会場に入れず、質問の機会もありませんでした。

自治体が開催し近畿中部防衛局が出席した工事説明会 ©MBS

会場では、防衛局から30分間程度、資料に沿った説明がありました。祝園が面積・地盤・アクセスなどの面で火薬庫増設に適した地であること、学校や病院などとの保安距離の確保など安全措置が施されていること、そして2027年度末までの工事スケジュールなどが語られました。

「具体的なことは何も分からなかった」

住民からは、有事の際に標的になる危険性や避難計画についての質問が出されましたが、防衛局は「安全だ」と言うばかりです。「火薬庫に何が保管されるのか」「長射程ミサイルが来るのか」という基本的な問いに、「個々の火薬庫でどんな弾薬をどれだけ保管するかについては、自衛隊の能力が明らかになる恐れがあり、お答えできません」と繰り返しました。参加した住民の多くが、閉会後、「具体的なことは何もわからなかった」と不満を表明していました。

工事説明会から3週間がたった2025年8月18日、弾薬庫建設のための造成工事が始まりました。監視を続けていたほうそのネットのメンバーが、この日の朝、工事車両が次々と分屯地に入っていくのに気づきました。

祝園分屯地に入っていく弾薬庫増設の工事車両=2025年8月 ©MBS

ほうそのネットでは、住民の納得できる説明がないまま着工したことに抗議する書面を2日後に提出。8月24日には、大阪府や奈良県在住の人も含め130人が分屯地の正門前に集まり、石破茂首相や中谷元防衛相(いずれも当時)に宛てた請願書を提出しようとしました。このときの自衛隊の対応が、ほうそのネットのメンバーを怒らせました。トップの分屯地司令に直接会って請願書を手渡すつもりが、応対したのは部下で、かつ敷地外の路上で受け取ろうとしたからです。この日の提出は中止となりました。

その後、交渉を重ねても自衛隊の側が譲歩することはなく、9月30日、共同代表の呉羽さんが、敷地外の路上で請願書を提出しました。トップの分屯地司令に会うことはできませんでした。

以下、請願書の内容です。

祝園分屯地火薬庫増設工事の着工に抗議・反対する請願書
京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク
昨年来、近畿中部防衛局に対し、祝園分屯地火薬庫増設についての住民説明会を求め、4度にわたり交渉を重ねました。また、説明会を求める住民の声1万4250筆の署名も提出いたしました。
7月22日に京田辺市、7月24日と26日には精華町主催の工事説明会が防衛局出席のもとに開催されましたが、多くの住民が懸念する、何が、何のために、どのように増設、保管されるのかといった計画内容は、防衛上の機密ということで、何ら納得いく回答はありませんでした。また、私たちが当初から望んでいた防衛局主催の計画全体の説明会は開かれないまま、工事が着工されてしまいました。
住民の大きな懸念である長射程ミサイルの保管に関する情報は、一切非公開とされ、有事の際に攻撃目標とされる、災害・事故に際する大きなリスクも払拭されないままで、不安は増大しています。また、敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルは、他国を破壊するものであり、平和を望む私たちには、他国の市民を殺傷するミサイルの保管は理解しえないものです。
このように到底納得できない不安な状況で、祝園弾薬庫周辺住民は、火薬庫増設工事を受け入れることはできません。地元住民の暮らしの脅威となる国防政策に、大きな疑問を感じざるを得ず、強く抗議します。
私たちほうそのネットは
●防衛局主催の工事全体に係る、地域限定しない住民説明会を開催すること
●陸上自衛隊祝園分屯地への長射程ミサイルの保管・配備をしないことを確約すること
●懸念が払拭され安心できる対応がなされるまでは、主権者である住民として工事は認められない
以上、強く申し入れますので、真摯に検討され対応していただくことを要請いたします。

高市政権の進める「防衛力強化」と長射程ミサイル配備

2025年10月19日、祝園分屯地のある京都府精華町で、「祝園全国集会」が開かれました。「私たちは二度と戦争をしたくない! 平和でこそ文化は香り立つ!」の呼びかけのもと、全国から2700人が祝園に集まったのです。「南西シフト」で自衛隊配備や基地建設が進む沖縄・南西諸島、長射程ミサイルの保管・配備が見込まれる大分・敷戸や熊本・健軍、「多機能な複合防衛拠点」が整備される広島県呉市、ミサイルの製造工場がある愛知県、アメリカ海軍と日本の海上自衛隊の基地がある神奈川・横須賀など、各地から報告がありました。

祝園全国集会のデモ行進=2025年10月 ©MBS

祝園全国集会に先立つ2025年2月には、軍拡の流れを止めようと、「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク(沖西ネット)」が発足しました。合言葉は「知り、つながり、止める」。政府交渉を行い、情報を共有し、それぞれの地域で闘う市民のネットワークです。「祝園全国集会」は、この沖西ネットのつながりをベースに開催されました。急速な「防衛力強化」に危機感を抱く市民が、地域を越えてつながり始めています。

しかし、事態は深刻さを増しています。2025年10月に高市政権が誕生し、2026年2月の総選挙で圧倒的な勝利を収めました。2026年3月31日、熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地と静岡県の富士駐屯地に、国内初の長射程ミサイルが配備されました。高市政権は武器輸出解禁、安保3文書の改定にも前のめりで、国会で議論しないまま閣議決定でことを進めています。

ほうそのネットの呉羽真弓さん(中央)©MBS

祝園分屯地でも弾薬庫の工事が進んでいます。「ミサイル弾薬庫は必要だ」と話す住民や、関心のない住民もいます。それでも、ほうそのネットが活動を止めることはありません。共同代表の呉羽真弓さんは言います。「無力感を感じることもあるけれど、声を上げ続けることが今を生きる者の責任だ」と。関心を持たれた方はぜひ、ほうそのネットのホームページやSNSをのぞいてみてください。

◆ほうそのネット https://hosonomissilemag24.jimdosite.com

わたり・さわこ 毎日放送記者。神戸市出身。1993年毎日放送入社。テレビ報道、ラジオ報道を経て現在はテレビドキュメンタリー「映像’26」ディレクター兼ラジオの報道番組プロデューサー。
毎日放送(近畿エリア)で2026年2月に放送したドキュメンタリー「弾薬庫が増える町」が、5月17日(日)25時28分~26時28分、TBSドキュメンタリー「解放区」で放送されます。関東地区でご覧いただけます。https://www.tbs.co.jp/kaihou-ku/

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