デマで収益化 悪質な手法とは
インターネット上でデマを流したり、委託事業について自治体に情報公開請求を大量にかけたりして、女性支援団体を攻撃する例が後を絶たない。攻撃する側はカンパを募り、自身の主張を動画サイトや投稿サイトで販売し、収益化している。新宿・歌舞伎町周辺で、10代の女性たちへの支援活動を続けている一般社団法人Colaboが10月16日、都内で会見を開き、1年以上続くこうした嫌がらせの被害や、被害について訴えた裁判について報告した。
膨大なデマや誹謗中傷、活動拠点への直接妨害も
Colaboは昨夏以降、SNSやインターネット上で膨大なデマや誹謗中傷を流され、活動拠点のバスカフェへの直接の妨害も受けた。現在、Colaboが妨害者を相手取った4件の損害賠償請求と、20数件の発信者情報開示命令申立が東京地裁で進行中だ。
会見では裁判の経過報告があった。
主たるデマの発信元であるハンドルネーム「暇空茜」こと水原清晃氏に損害賠償を求めた裁判は16日、争点整理手続きが終了し、来年1月23日に原告であるColabo代表の仁藤夢乃さんと被告の水原氏への本人尋問が決まった。
Colabo弁護団によると、水原氏はSNSに「Colaboは女性をタコ部屋に入れて貧困ビジネスをしている」などと書き込んだ。また、自らとフォロワーが若年女性支援事業の委託元の東京都に情報開示請求をするなどして、Colaboが税金から不当に利益を得ていると主張し、「公金チューチュー」などと攻撃をあおったという。(都監査委員は水原氏らの住民監査請求について大半を「妥当ではない」と退けた。一方、税理士費用を他の事業と按分していないなど約193万円を経費と認めなかったが、その分を差し引いた経費が委託額を上回っていたため、Colabo側に返還は求めなかった。)
弁護団は、ほかに、川崎市議の浅野文直氏が、Colaboが公金を「裏帳簿で処理した」など虚偽の情報をネット上に流した、とした。ニュースサイト「エコーニュース」の江藤貴紀氏は「大量脱税の疑い」などの表現で、Colaboの名誉を毀損し、活動を妨害したとする。両氏に対する損害賠償請求訴訟も東京地裁で係争中だ。
「妨害者は他人のお金で嫌がらせや裁判を続行」
Colabo弁護団の一人、太田啓子弁護士は「Colaboへの攻撃の大きな特徴は、デマを流し、嫌がらせをすることが収益化しているということ」と説明した。収益化の方法は、YouTube番組の放映、裁判書類を投稿サイトで販売するなど。また、暇空茜(水原)氏は弁護士費用にあてるとしてカンパを募り、彼自身が公表したところによると、その額は9ヶ月間で1億1445万200円にのぼったという。太田弁護士は「敗訴しても、自腹はまったく痛まない。他人の金で嫌がらせや裁判を行っている」と述べた。
集票に利用する議員も 「まるで悪意の見本市」
また、情報公開や住民監査請求など住民自治の基礎となる制度の濫用も目立つ。都議会議員や国会議員を含む複数の議員が、自分の人気取り、集票につながるとみて、コラボバッシングに参加するなどの動きも見られる。
太田弁護士は「悪意の見本市のような状況。大変な損害がColaboに起きている」とした。
弁護団は匿名アカウント20数件に対し、発信者情報開示の手続きを取り、すでに16件が開示された、と発表した。すでに、4件のアカウントと和解が成立し、解決金の支払い、投稿の削除、謝罪文の掲載がなされた。一部のアカウントについては、なぜ誹謗中傷を投稿したのかについて、本人へのインタビューが行われたという。太田弁護士によるとインタビューで妨害者は「ゲーム感覚」「公金の不正を暴くという正義感に駆られてやった」などと話したという。
少女たちを支える活動に支障 経済的影響も多大
仁藤さんは「私たちは虐待や性暴力・性搾取の被害にあった10代の少女たちを支える活動を続けてきた。その中で暇空茜によるデマや誹謗中傷をたくさん拡散されたことによって、甚大な被害・影響があった。まだまだ続いている」と話した。誤情報に接した少女たちがColaboを敬遠してしまうなど、アウトリーチ活動やシェルター運営といった直接的な支援が妨げられた。活動の拠点や仁藤さんの自宅もさらされ、盗撮などの嫌がらせも続いた。
「暇空本人への尋問では、自身の口からどうしてこういうことをしたのかを聞きたい。裁判を通して、女性支援や少女に対する攻撃を許さない社会づくりを目指していきたい」と仁藤さん。ただ、被害は甚大だ。デマを信じた寄付者が離れていったり、東京都がColabo側に「(嫌がらせが)危ないから」と活動中止を要請したり。
「Colaboはいま経済的に大変な状況にある。でも、加害者たちは攻撃をすると儲かるわけです。そういうことにノーと言っていきたい」。
訴訟の見通しについて、Colabo弁護団の神原元弁護士は「Colaboが少女たちをタコ部屋に住まわせて貧困ビジネスをしていたという暇空氏の書き込みには、真実性がない」と断じた。少女たちが過ごしていた部屋の写真や動画、契約書類などを証拠として提出したという。発信に公益性があったかどうかも争点になる。神原弁護士は「暇空氏は、自分の趣味(マンガ)を脅かされ、むかついたので投稿したと主張している。公益目的ではないわけです。裁判所は司法制度の威信にかけて、暇空氏の主張を認めてはいけないと思う」と述べた。
(生活ニュースコモンズ編集部)