国連の女性差別撤廃委員会が10月、ジュネーブで開催されるのを前に、日本政府に女性差別撤廃条約の「選択議定書」の批准を求めるパレードが22日、東京・銀座周辺で行われました。男女間の賃金差別解消や女性の地位向上などに取り組む民間団体でつくる「女性差別撤廃条約実現アクション」が主催し、集まった約90人がプラカードやのぼり旗を手に「女性の権利を国際水準に」と声を上げました。
「ジェンダー不平等日本」を変えたい
同アクションは「ここで批准の意思決定をしなければ、永遠にできないのでは」と危機感を募らせ、「ジェンダー不平等日本」を変えるカギは議定書の批准だと訴えています。パレードでは参加者が口々に「選択的夫婦別姓、今こそ実現を」「女性の貧困なくそう」「差別はノー」などとコール。休日でごった返す沿道の人たちに手を振りながら、約2kmにわたって行進しました。埼玉県八潮市からパレードに参加した女性は「女性の権利について日本は後進国なんだよ、ということを皆さんに知ってもらいたい」と話しました。
選択議定書は、差別を受け、国内で救済されなかった個人または集団が女性差別撤廃委員会に直接救済を申し立てることができる「個人通報制度」と、信頼できる情報に基づき、同委員会が国内状況を調査し、勧告できる「調査制度」を定めています。条約が効果を発揮し、女性への差別を解消するには議定書の批准が欠かせませんが、日本は条約の批准はしたものの、選択議定書については批准していません。
政府は早く政治的意思を示して
同アクション共同代表の浅倉むつ子・早稲田大学名誉教授はこう訴えます。「今日のコールにもありましたが、『25年も何してた?』というのは、1999年に女性差別撤廃条約選択議定書ができてから、日本政府は25年間、批准に向けた歩みを一歩も前に進めてこなかったことへの抗議です。選択議定書は、条約の実効性を高めるものなので、当然、批准すべき文書ですが、日本が批准しないために、日本の女性たちは個人通報ができないのです。これは重大な人権侵害が国内で解決されない場合でも、国連に通報できないということです。選択議定書を批准するためには、難しいハードルはありません。政府が政治的意思を示せばよいだけです」。
10月に8年ぶり日本報告審議
来月の女性差別撤廃委員会には、8年ぶりに日本政府代表団が参加し、日本の状況報告に対する審議が建設的対話をとおして行われます。これに合わせ、女性や人権にかかわる39の非政府組織(NGO)で構成する「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」から80人を超えるメンバーが現地に向かい、審議を傍聴するとともに、選択議定書の批准や、同委員会から繰り返し勧告を受けている選択的夫婦別姓の導入、男女賃金格差是正などを求めて、ロビー活動を展開する予定です。
日本報告の審議に先立ち、女性差別撤廃委員会は雇用や政治分野での格差是正、女性への暴力撤廃、差別の解消など25項目にわたる事前質問を日本政府に出しています。事前質問に対し、同ネットワークは日本の現状を踏まえ、NGOとしての回答を委員会に提出しています。ネットワーク共同代表の柚木康子さんは「日本は政局で誰が担当大臣になるのか、誰が政府代表として出席するのかも分からない状態ですが、きちんと準備して批准を実現してほしい」と話しています。