ベルリンの少女像撤去反対 日本の市民団体 駐日ドイツ大使館と新内閣へ要請

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ベルリンの平和の少女像撤去反対 日本の市民団体がドイツと日本新内閣へ要請書

駐日ドイツ大使館に向かう日本軍『慰安婦』問題解決全国行動のメンバーたち。2024年10月7日。=東京、駐日ドイツ大使館前

“この像が持つ多面的で深い意義を思い返して”

4年前の9月28日にドイツ・ベルリンのミッテ区に設置された《平和の少女像》(以下、少女像)”アリ”に対して、日本政府からの要請を受けて、今年9月28日にミッテ区長は、少女像を設置した韓独シンクタンク「コリア協議会」に撤去を言い渡しました。

撤去に異議を唱えて日本の市民団体「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」(以下、全国行動)はこれまでベルリン市長とミッテ区長宛に撤去に反対する公開書簡を送るための署名活動を続けてきました。

署名は、団体39、個人562名が集まり、全国行動は、ドイツ時間で9月23日午前9時半頃(日本時間午後4時半頃)、ベルリン市長とミッテ区長に公開書簡と署名をメールで送信しました。

10月7日、同団体の梁澄子共同代表らは同様の公開書簡と署名を持参し、駐日ドイツ大使館の参事官に手渡しました。参事官はベルリン市長とミッテ区長に必ず伝えると約束しました。

公開書簡では、「平和を愛する私たち日本の市民は、このような日本政府の行動を危惧し、恥ずかしく思っています。どうか今一度、(日本軍「慰安婦」の=編集部注)サバイバーたちの壮絶な生と、切なる思いに心を寄せてください」と結ばれています。

【公開書簡】
ベルリン市長 カイ・ヴェーグナー 様
ベルリン市ミッテ区長 シュテファニー・レムリンガー 様
 
 日本では最近、ベルリン市ミッテ区モアビットに建立された「平和の少女像」について、ミッテ区が撤去を求める意向だと報道されています。
 
 私たちは日本の市民として、この「平和の少女像」の撤去に反対します。私たちがこの碑を大切に思い、安定的な設置を求める理由は以下のとおりです。
 
1.「平和の少女像」は、日本軍の「慰安婦」にされた女性たちを記憶し、今も世界中で起きている戦争下、紛争下で性暴力の被害に遭っている女性たちを力づける碑だからです。
 
 第2次大戦下で日本軍の性奴隷にされたサバイバーたちは、戦後半世紀を経て名乗り出て、戦時性暴力が撲滅されるべき戦争犯罪であり、被害者に癒しがたい打撃を与える行為であることを全世界に訴えました。
 
 「二度と同じような被害が起きてはならない」
 
 全身全霊でそう訴えて亡くなっていったサバイバーたちを記憶することは、戦時性暴力ひいてはあらゆる暴力を抑止する上で非常に重要です。そのような意味で、単に日本軍「「慰安婦」を記憶するだけではない、きわめて普遍的かつ現代的な意味を持つ碑なのです。
 
2.日本軍「慰安婦」が性奴隷であったことを認めず、記憶することさえ許さない日本政府の姿勢は間違っています。
 
 日本政府は、日本軍「「慰安婦」問題は「解決」しており、「慰安婦」は性奴隷ではなかった、強制連行はなかったと主張しています。しかし、真の解決は自らの加害の歴史を直視し、それを記憶・教育し、歴史の中で教訓を生かしていくことです。それは、ナチス・ドイツの過ちを反省し、繰り返し謝罪し、教育している貴国では熟知されていることだと思います。
 
 私たちは、日本政府もドイツ政府のように、過去を直視して記憶・教育し、過去の過ちを繰り返さないための取り組みを積極的におこなうよう願っています。残念ながら、現在の日本政府の言動は、それとは真逆の、記憶することさえも許さない、自らの加害を歴史から抹消しようとするものです。そのために、平和を祈願する像がまるで日韓の対立を煽るものであるかのように喧伝しています。しかし、日韓の間に対立があるのだとしたら、それは自らの加害を率直に認めず、被害者を貶めるような言動を繰り返す日本政府が引き起こしている摩擦です。
 
 平和を愛する私たち日本の市民は、このような日本政府の行動を危惧し、恥ずかしく思っています。
 
 どうか今一度、サバイバーたちの壮絶な生と、切なる思いに心を寄せてください。この像が持つ多面的で深い意義を思い返してください。心からお願いします。

                     日本軍『慰安婦』問題解決全国行動

ミッテ区長とベルリン市長宛の公開書簡を手渡す日本軍『慰安婦』問題解決全国行動の梁澄子共同代表と受け取る駐日ドイツ大使館参事官。2024年10月7日。=東京、駐日ドイツ大使館

新内閣にも要請

全国行動は、日本政府がベルリンの少女像について「日本を永続的に非難する象徴」(駐独日本大使館広報部)と位置づけ、設置した4年前から撤去の要請を続けてきたことを問題視しています。

明日10月8日、石破茂内閣総理大臣と岩屋毅外務大臣宛に以下の「日本軍『慰安婦』問題の解決を求める要請書」を届ける予定です。

内閣総理大臣 石破茂様
外務大臣 岩屋毅様
                     2024年10月8日
                     日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
 
          日本軍「慰安婦」問題の解決を求める要請書
 
去る9月30日、ドイツ・ベルリンの公有地に建てられている「平和の少女像」に地示ミッテ区が撤去を命じました。日本政府は、4年前の平和の少女像設置以来、この像を「日本を永続的に非難する象徴」(駐独日本大使館広報部)として、様々な形で撤去要請を続けてきました。
 
しかし、この平和の少女像は「被者の苦難を記念し」「このような惨禍が二度と繰り返されないように求める」と碑文に刻まれているように、性暴力の根絶と平和を願う象徴です。「日本を永続的に非難する象徴」ではあません。
 
日本政府はこれまで、ベルリンの平和の少女像だけでなく、世界各地の日本軍「慰安婦」の像や碑の撤去要請を行ってきました。これは世界に向けた公約である1993年の河野談話に反しています。河野談話では、日本軍の要請によって慰安所が設営され、募集・移送・慰安所における強制性を認め、歴史の教訓として事実を記憶し、同じ過ちを繰り返さない、と述べられています。しかも、「河野談話の継承」は閣議決定され、歴代政権が継承すると公言しています。
 
また、日本軍「慰安婦」問題が戦時下の女性に対する重大な人権侵害であることは国際社会の常識です。1990年代から現在に至るまで、多くの国連の人権機関が日本政府に対して被害者の人権回復を求める勧告を出しています。日本政府は国連中心、人権重視を外交の基本に据えているのに、これらの国連勧告には従っていません。
 
さらに、韓国の裁判所は、2015年の日韓合意では解決にならないと、被害者たちの訴えを認め日本政府に賠償を命じる判決を 2021年と2023年に出しています。
 
私たちは、石破新政権の発足にあたり、政府が日本軍「慰安婦」問題に今一度真摯に向き合い、性暴力の根絶や平和と人権を求める国際社会で、日本が名誉ある地位を確立する為にも、以下のことを要請いたします。
 
1.日本政府は日本軍「慰安婦」(日本軍性暴力・性奴隷制度)による人権侵害の事実を認め、被害者に対する公式謝罪、賠償、再発防止を行うこと。
 
2.日本政府はベルリンの平和の少女像など、世界に建立されている日本軍「慰安婦」の像や碑に対する設置妨害や撤去要請をやめること。
 
3.日本軍「慰安婦」を歪曲する教科書を認めず、歴史教育の中で事実を正しく伝えること。
 
4.2021年1月のソウル地方裁判所、2023年11月のソウル高等裁判所の判決(国益よりも人権を重視する国際慣習法の潮流に沿って主権免除を否定した)に従い、被害者に損害賠償を行うこと。
 
5.国連の人権機関などの日本政府に対する勧告に従うこと。
特に直近の 2022年11月の自由権規約委員会、2024年のILO専門家委員会の要請に従うこと。
また、2024年6月の女性差別撤廃員会の韓国政府に対する勧告で「依然として日本軍『慰安婦』が適切な賠償を受けていないことに懸念を表明」していることに対して、日本政府として責任を果たすこと。2024年7月の拷問禁止委員会が韓国政府に対して「日本軍『慰安婦』問題が未解決であり、法的賠償のために努力するよう」勧告していることを重視し、法的責任を果たすこと。

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