「観光レディー」もうやめませんか

記者名:

女性は「観光資源」じゃないんだよ…

 2月29日、秋田市の市政だより「広報あきた」が自宅に届きました。 
 表紙には「ミルハス」という秋田最大の芸術劇場で映画祭がある、という告知が載っていました。いろんな俳優や監督が秋田に来るんだな…と思いながらページをめくり、こんな募集記事が目に留まりました。

〈あきた観光レディーになりませんか〉

 あきた観光レディーは、秋田の観光PRやイベントのアシスタントがメインの仕事。メイクやマナー、立ち居振る舞いの習得のための研修があるそうです。さらに応募方法に「全身1枚、上半身1枚の鮮明なカラー写真」を添える必要がある、と書かれていました。

 誰か、秋田市に意見を伝えてくれるだろうか。いや、自分が言うしかない。

 あきた観光レディー、もうやめませんか。

 少なくとも公の機関が、女性にのみこういう役目を負わせるのはもう、終わりにしませんか。(※「あきた観光レディー」は性別不問とのことです。文末に2点、追記しました

なぜレディーか? 道理がない

  やめたほうがいいと思う一番の理由は、レディーでなければならない理由が立たないからです。なぜ観光PRに「レディー」が必要なのか。秋田の良さを伝えたい人であれば、誰でもいいではないですか。

 それでも「レディー」でなければいけない理由として、おそらく挙がりそうなものを自分なりに推測してみました。

  • 女性のほうが華がある、華やかだから。
  • 女性がPRしたほうが目を引くから。
  • 今までずっと続いてきたことだから。

などでしょうか。令和の時代、これらの理由は全部アウトです。少なくとも私は、もう女の子たち、若い女性たちに、このような役目を負わせたくはないです。

女性を「人寄せ」に使っている

 地元紙の記者だったころ、秋田の観光をPRする「秋田美人ポスター」について批判的な記事を書いたことがありました。ある市民の「秋田美人、もうやめない?」という問題提起を記事にしたのです。

 その時、私はずるかった。私自身このポスターの在り方を「嫌だ」と思っていたのに、自分の意見は表に出さず、あくまで「問題提起した人がいる」という客観報道をしたのです。その人に、言わせたのです。
 でももう会社員記者ではないので、はっきり言います。女性をアイキャッチに使うのは、やめるべきです。

 「秋田美人、もうやめない?」の記事には賛成の声が多く寄せられました。
 「女性を人寄せとして使っている」「公的な機関が女性を観光資源のように利用していることに問題を感じる」「ルッキズムを助長している」などなど。

 一方、記事への反論も寄せられました。
 「このような形でふるさとの良さを発信することに誇りをもって活動している女性もいる」「美を追求するのは人類の欲求である。それを否定するのか」「考え過ぎじゃないでしょうか?」

 いやいや、考え過ぎではないです。いままでが、考えなさ過ぎだったのです。

「考え過ぎ」で済ませられる人は

 「秋田美人ポスター」は、いまも秋田市内のあらゆるところで目にします。公的施設から、近所のお店まで(※「秋田美人ポスター」作成は2023年で終了)。

 「女性って、昔からずっとそうやって何かを引き付けるアイキャッチに使われてきたんだから」「それを望む人もいるんだから」。だから、これからも続けるのでしょうか?

 「何でもかんでも目くじらたてるのはよくない」「うるさく言われると何もできなくなる」。だから、見て見ぬふりをして続けるのでしょうか?

 たぶん「続けることに疑問を持たない人、疑問を持ちたくない人」は、他者を見た目や性別などでジャッジできる「特権」のある人だと思います。性別を問わず。そして、その特権は自覚されにくいものなのだと思います。

 女性は、きれいに化粧しなければならない。
 女性は、スタイルや洋服に気を遣わなければならない。
 食べ方や立ち居振る舞いは美しく。
 他者を気遣い優しくおもてなしする。
 ケアは女性の役目である。

 私はこれらのことが、ずっと苦しかったです。思えば中学生くらいから三十数年の苦しみでしょうか。

 もう、十分です。秋田県に「若い女性」を呼び寄せたいようですが(出生率向上のため)、こんなことが当たり前のように続き、しかも「考え過ぎじゃない?」と言われるような秋田には、そうそう人は戻ってこないと思います。

選択の自由の問題ではない

 やりたい人が自分の意思で選択すればいい。それはその通りです。ただ同時に、女性の人権も守られなければならない。

 何の疑いもなく女性を「アイキャッチ」として消費する意識のもとでは、女性の人権も、容易にないがしろにされます。そして男女格差は知らず知らずのうちに、温存されるか、広がっていきます。「選択の自由」で済ませていい問題ではないと思います。

 「女性は『美しく』あらねばならない。美しくあってこそ利用価値がある」
 「おもてなしといえば女性」
 「華を添えてこそ女性」
 そういう価値観にずっと苦しめられてきた人(あるいは現在進行形で苦しんでいる人)がいます。SNS全盛の時代、もしかすると、10代、20代が一番、苦しんでいるかもしれません。

 無邪気に惰性で続けていることが、実は女性を「人」として見ない価値観を再生産している。「考え過ぎでは?」と言われるくらいに、私はこのことに意識的でいたいと思っています。

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(※追記 2024年3月5日)

①地元紙に「あきた観光レディー」の募集記事が小さく載っていました。「性別不問」とありました。レディーは「淑女」という意味だと思っていましたが、あきた観光レディーは性別を問わないのだそうです。レディーという名称、そしてこちらの広報を見て、私は女性を募集しているのだと受け止めました。
補足して説明いたします。

応募要件には確かに「女性」とは書いていません。一方「性別不問」ともありません。秋田観光コンベンション協会の募集要項にも「性別不問」という文言はありません。これを見て、女性以外の人が応募しようと思うでしょうか。秋田観光コンベンション協会によると、過去に女性以外の応募はなかったとのことです。

②あきた観光レディーの実施主体である秋田観光コンベンション協会は、経常収益の約67%にあたる9660万円が秋田市からの補助金となっている公益財団法人です。副理事長は秋田市観光文化スポーツ部長。秋田市とはかかわりが深く、このように広報でもしっかり取り上げられている事業です。

協会のホームページによると「あきた観光レディー」は〈昭和33年に行われた「第1回全県おばこコンクール」が前身(※おばこ=若い未婚の女性を表す方言)。秋田美人コンテスト、秋田市観光コンパニオン、ミス観光あきたなどの名称変更を経て、平成6年から「あきた観光レディー」という名称で活動〉とのことです。
ちなみに、秋田観光コンベンション協会の役員、評議員は全員男性となっています。
https://wwacvb.or.jp/organization/

【参考資料】
・広報あきた 2024年3月1日号

・秋田魁新報電子版「秋田美人」もうやめない? 会社員、ネットで問題提起( 2021年1月27日 掲載)
・秋田魁新報電子版 秋田美人は誇り?男目線?さまざまな意見続々 読者の反響編(2021年2月9日 掲載)

・人口減少に関する分析と視点について (秋田県公式サイトより)
https://x.gd/qfoqJ

・令和4年人口動態統計(概数)に係る知事コメント(秋田県公式サイトより)https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/75831 

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