
国際女性デーに合わせ7日と8日の2日間、韓国のソウル・景福宮駅近くのカフェでは、京郷(キョンヒャン)新聞の中にあるおんな語りアーカイブ『フラット』チャンネルの5周年を記念して誕生日カフェが開催されています。
来場者がカフェの中にある展示室に入ると、国際女性デーを象徴する赤いバラ一輪が渡されます。そしてポストカードをもらい、「入居者」(読者をこう呼びます)証に記入し、くじ引きを引くと、トートバッグやステッカーなど記念品がもらえます。
京郷新聞は韓国の進歩的全国紙の一つで、2020年3月8日の国際女性デーに、女たちの物語を集めてアーカイブするチャンネル「フラット」を立ち上げました 。
フラットのホームページでは、政治・経済・社会・国際・文化など多様な分野のジェンダー視点の記事を配信しています。配信は月平均約40件で、2024年10月現在、2100件以上の記事をアーカイブしています。
「読者とのつながり」を大切に
「読んで書くジャーナリズム」だけでなく、「読者とのつながり」を大切にしているフラットは、2022年8月に週1回のニュースレターを開始し、約2200人の読者がいます。インスタグラムのフォロワーは2022年10月には1万人を超えました。
この日も、“フェミおしゃべりクラブ”と名づけられているとおり、訪れた読者は記者とゆっくりおしゃべりをしていきました。
今回、誕生日カフェというスタイルにしたのは、「K-POPのファンたちの交流カフェを真似しました」とキム・ソヨン記者。


展示室の奥にある誕生日記念撮影スポットでは来場者が次々と写真を撮っていました。また、「応援棒を飾る」コーナーでは、「傾いた運動場が平らになるまで」と書かれたリボンやアクセサリーで自分の応援棒を飾ります。

読者のオ・ミンジンさんは活動家。今日の記念パーティをニュースレターで知り、訪れました。京郷新聞作業服取材班が昨年出版した『あなたの制服の話』のブックトークにも参加してフラットには親近感を持っているそうです。

男性の姿もありました。近くにある市民社会団体の参与連帯で働くクォン・ドンウォンさん(24歳、写真左)とキム・ユンジンさん(27歳)もいつもフラットの記事を読んでいると言います。
展示室には、これまでの記事や写真が飾られ、フラットの歴史を振り返ることができるようになっています。


たとえば、「私たちはお互いの証言者だ」という連載企画です。
1980年5月18日に始まった光州事件当時、戒厳軍から性的暴行にあったと申告した多くの被害者は、2018年に性被害を告発したソ·ジヒョン検事の「#MeToo」に影響を受けたと話しました。
その2年後、光州事件を調査する「5·18民主化運動真相究明調査委員会」は当時に起きた性暴力事件に対する調査を始めました。2023年12月、そのうち16件に対して「あなたの被害は事実」という真相究明決定を下したのです。
これは、「性暴力被害者」という烙印が恐ろしくて言えなかった被害者16人が、お互いに「証言者」になって被害事実を明るみにし、彼女たちの体験が「集団的経験」であると証明できたからでした。フラットは、勇気を出した被害者の証言を「私たちはお互いの証言者」という企画にしました。
「本の分かち合いコーナー」は、読み終えた本を持ってきて、その代わりに別の読者が持ってきた本と交換し、持ち帰る仕組みです。
読者のひとりハン・ジエさん(27歳)は3冊の本を持ってきて、そこにあった本と交換しました。いつもインスタを見ているというハンさんはフラットの記事について、「いつも心地よい内容だけではなく、むしろ辛い、悲しい記事が多い。けれど記者の方たちはそうした辛く悲しいことをなくさければならないと思っている。それを少しでも近くで感じたくて来ました」と語りました。


入居者たちはフラットへの思いや、今後取り上げてほしいテーマなどをポストイットに書き込んで、壁に貼っていきます。
「フラットチームの取材と関心がなかったら、デートDVの生存者や遺族たちの声を聞くことはできなかった」
「存在してくれてありがとう、フラット!」
「オフラインで会う女性たちの声が貴重だ」
フラットのチーム長、ナ・ジウォンさんは「取材記者として、利害関係のない一般読者の応援に接する機会はあまりありません。今回、私たちの記事を深く読み込んでくれる読者と直接会うことができ、新たなモチベーションを得ました」と感想を話しました。
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