はて? 男性に不利益が偏っている? 第6次男女共同参画基本計画のオンライン公聴会を傍聴して

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男女共同参画基本計画の公聴会。オンライン参加者から事前に寄せられた意見とは……。

 年内の決定に向けて、第6次男女共同参画基本計画の策定作業が進んでいる。

 男女共同参画基本計画は、男女共同参画社会基本法に基づき、性別に関わらず誰もが活躍できる社会の実現を目指して定めるもので、政治、職場、家庭、教育など社会のあらゆる分野で男女の平等な参画を促すための目標や取り組みがまとめられている。

 今年は5年に一度の見直し時期にあたり、8月末には素案が示され、意見募集(パブリックコメント)も始まっている(9月15日まで)。

 9日にあった内閣府主催の基本計画のオンライン公聴会に参加した。計画策定の専門調査会委員を務めた有識者や内閣府の担当者が登壇し、計画の内容について説明があったあと、全国の現場で男女共同参画の取り組みや女性支援に携わる民間人らが、それぞれの分野から意見や要望を表明した。

ミソジニーやバックラッシュが続出

 そこまで聞いて、さてパブコメをどう書こうか、と考えていた時だ。公聴会に申し込みオンラインで参加している人たちから、事前に寄せられた計画に対する意見の読み上げが始まり、私はその内容に動揺し、同時に失望した。「女性への優遇が過ぎる」「男性に不利益が偏っている」「男女共同参画が少子化を促進している」――。ミソジニーや男女共同参画に対するバックラッシュに起因するような意見が続いたからだ。

 すべてをメモに残していないので、男女共同参画推進に反対する声とそれ以外の声がどのような割合で紹介されたのか正確なことは言えない。しかし、どう思い返しても7~8割が反対の声だったように記憶する。これを真に受けていたら、計画の推進などできなくなってしまう。

 ジェンダー平等を願う立場からは受け入れ難い意見を聞きながら、私は15年前に取材した第3次計画策定の際の公聴会を思い出していた。主催側が会場からの意見を募ったところ、挙手した人を何人あてても、「私は主婦です。夫婦別姓には反対です」とほとんど同じ内容の意見が繰り返されていた。当時は民主党政権。法務相は弁護士で参院議員の千葉景子さん、男女共同参画担当相は参院議員の福島瑞穂さんで、選択的夫婦別姓を推進する立場をとっていた。「危機感」を強めた別姓反対の右派勢力は、ロビーイングや署名など徹底的な運動を展開していた。国会周辺を取材していた私は、その過激さに恐怖を感じるほどだった。会場を埋めた女性たちも右派勢力に動員された人たちだったのだろう。

すべての人が生きやすい社会に、分断はいらない

 当時と比較すると、現在はそれほど明らかに組織化された勢力が存在しているようには見えない。しかし、SNS上における執拗な「女性支援団体叩き」などを目にするにつけ、一部の女性に利する政策ばかりが推進され、自分たちは損をしていると考える人たちが増えているのではないか、社会の分断が深まっているのではないかと想像する。

 第6次計画の内容については、改善に向けて物申したいところはいろいろある。しかし、何はさておき、全体として男女共同参画の推進やジェンダー平等実現に向けての動きを一歩も後退させるわけにはいかない。日本は調査対象148か国中118位という、まれにみる「ジェンダーギャップ」の残る国であり、そこが出発点であることを忘れてはならない。公平公正で、すべての人が生きやすい社会にするために分断はいらない。