《2026衆院選》「人権」を中心に投票を 同性婚、トランスジェンダー当事者、難民支援など21団体が意見表明

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(C)LGBT法連合会

危機の時代。「人権」に注目して一票を託す人を決めよう!

2月8日投開票の衆院選に向け、政党や候補者の人権政策を問う緊急集会「人権に鬼は外、福は内」が2月3日、東京都内で開かれました。同性婚やトランスジェンダーの当事者、難民支援、非正規公務員、国際人権団体など、のべ21団体が「投票に人権の視点を」と訴えました。

「性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」(略称:LGBT法連合会)の神谷悠一さんが呼びかけの趣旨を説明しました。

政治や選挙を「推し活」などエンタメとして消費するだけでは、私たちの「人権」が制限される未来はもうすぐそこであるという危機感がある。多数派も“普通”の人も例外ではない。消費税など経済の問題だけではなく「人権」も問われている選挙だということを強調したい。
向こう2年半は衆議院の解散がなければ、国政選挙がない。その間の人権政策も問われている選挙だ。私たちはどのような政権であったとしても人権保障を進めていただきたいと考えている。
一方で、選挙で選ぶ際は多くの人に「人権」政策に注目をしていただきたい。
そのため、私たちは参加している各団体から様々な材料を提供したい。
一例として、米国のミネアポリスでは政府機関関係者に異議を唱えたことで移民当局に銃殺された人がいた。同性パートナーと暮らしていた人だ。しかし、それが理由ではなかった。私は、どんな人にも起こり得てしまうということに恐怖を覚えた。法の支配や民主主義が危うい。選択を間違えると悲劇が起こり得る。
自由な発言が制限される、萎縮するということがすでに起きている。
SNSによる選挙の妨害、人権侵害がある。人権を重視しないでSNSの規制の議論をすれば情報統制にもつながる。両刃の剣だ。
かつてない危機感から企画をし、人権団体に呼びかけた。
もっと各政党や候補から語ってほしい、まだ聞かれていないテーマを取り上げた。
節分には季節・時期の転換点という意味合いがある。今日を境に人権状況の改善に一段階ギアが入ってほしいという意味を込めた。人権にとっての厄や邪気すなわち「人権侵害」を払うという意味もある。差別なく誰もが平等に扱われる真に自由な社会を選択しようと呼びかけたい。

LGBT法連合会は、衆院選に関し政党を対象にアンケートを行っています。

各団体のスピーチ

「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」(略称:マリフォー)共同代表、寺原真希子さん

同性婚については地裁、高裁判決のほとんどが現行法は違憲と判断し、早ければ来年度中にも最高裁の統一見解が出る。最高裁で違憲判決が出れば国会は法改正を迫られる。どのぐらいのタイミングでどの程度の法改正ができるかは、同性婚に賛成の議員の数に影響を受ける。今この瞬間も、婚姻出来ない不安を抱える同性カップルや将来の展望がもてない性的マイノリティの子どもたちが生きている現実を考えると、国会主導による一日も早い法制化が望まれる。選挙ではさまざまな政策が問われるので、安全保障や経済対策が優先と考える方も多いかもしれない。ただ、誰もが何かの面でマイノリティだ。マイノリティの人権を軽視することは国民一人ひとりを軽視するということ。そのような候補者に安全保障や経済対策を委ねることはできない。

同性婚への賛否は候補者が国民一人ひとりのことを真剣に考えているかの試金石。

マリフォー国会メーターでは候補者の同性婚への賛否を検索できる。政党アンケートも参考にしてほしい。

トランスジェンダー当事者らでつくる「Tnet」の共同代表、木本奏太さん

僕自身トランスジェンダー男性の当事者であり、CODA(耳の聞こえない両親を持つ子ども)としての当事者でもある。トランスジェンダーも聞こえない人も今の社会ではマイノリティにあたる。僕は、そうしたマイノリティを含め全ての人が自分らしく生きられる社会の実現を願っています。政治の大きな役割の一つは個人の生活を守ること。その基礎となる人権の保障にある。その一方で、性的少数者やトランスジェンダーをめぐっては法制度の整備や差別をなくす仕組みが十分とは言えない。

選択的夫婦別姓、同性婚を実現するのに大してお金はかからない。法律上のポイントもすでに検討されている。やろうと思えば今すぐできる。また、この法整備によって損をする人がいるわけでもない。人権擁護関連の施策を速やかに実施して、他の政策議論に時間を使うのがあるべき政治の順番じゃないかと考えている。実際には特定の方々が問題を複雑化させて、有権者の望んでいない議論の時間を消費してしまっている。少数者の人権は特別な人の問題ではない。不当な扱いを受けないというのは誰にとっても必要なこと。誰かを切り捨てる政治ではなくて、違いがあってもともに生きられる社会を選ぶことは私たち一人ひとりの生活を守ることだと感じています。

https://tnet-japan.com

木本奏太さん(撮影・提供:LGBT法連合会)

「女性差別撤廃条約実現アクション」の共同代表、柚木康子さん

女性差別撤廃条約が1985年に批准されて、1986年に男女雇用機会均等法ができて、もう40年が経つ。日本のジェンダー平等が実現したのかというと、とてもそんなことは言えない。2009年に女性差別撤廃条約実現アクションを作った。条約を批准して、選択議定書を批准しないということは、条約を実現する気がないと表明することと同じ。みなさんにも男女平等が後退するような政策がないかを見てもらいたい。今日本は労働者の4割が非正規になっている。非正規を増やすのも「規制緩和の時代だから」とかつて官僚に言われた。その結果、多くの非正規女性が食べるに困る、子どもを育てることができない、結婚なんかできない世の中になった。

政府がジェンダー平等を実現するためにもっと努力してほしいし、有権者にもそういう候補者、政党を選んでほしい。

日本に逃れた難民一人ひとりへの支援、また難民とともに暮らす社会をつくるための発信、政策提言などを行っている。難民や外国人に関するフェイク情報や誤解がSNSや政治の場で広がっている状況に強い危機感を抱いている。たとえば「日本には偽装難民ばかりがいる」など事実と異なる情報が政治家からも発信されている。特定の民族やコミュニティを否定し、社会から排除するようなヘイトスピーチも拡散されている。

難民保護や外国人との共生に関する各政党の公約を取りまとめ、アンケートを実施した。

アンケートにおいては「人種差別やヘイトスピーチを法律で禁止するべきか」「日本の難民認定状況を改善するべきか」「収容について期限を設けるべきか」など、制度や法律の必要性について見解を問うものとなっている。回答があった七つの政党からは、国籍や在留資格で差別せず、日本にいるすべての人の人権を尊重するべきだという回答をいただいた。一方で、制度、立法の必要性については見解が分かれている。

難民の方々の中には自国で自由な言論が保障されず、民主的な選挙も叶えることができず、そういったものを求めたことで命が危険にさらされ、やむなく国を離れた人も珍しくない。彼らにとって民主的な社会の象徴である選挙が誰かを排除するのではなく、誰をも包摂する方向を模索する場になることを願っています。

石川えりさん(撮影・提供:LGBT法連合会)

「反差別国際運動」(IMADR)事務局長代行、小森恵さん

日本はこれまで4回にわたって国連人種差別撤廃委員会の条約審査を受けてきた。そのたびに、人種差別禁止法の制定や国内人権機関の設置をはじめ、部落、アイヌ民族、在日コリアン、移民難民などへの差別がもたらす様々な問題について勧告を受けてきた。これら勧告の多くが十分・適切に実施されないまま差別は今日も続いている。

勧告の一つに政治家や公務員による差別に適切に対応していないということがある。条約第4条C項は「国は公職にあるものの人種差別を認めてはならない」と明確に規定している。2001年日本政府は「人種差別助長の意図がある場合のみ処罰可能」としたが、委員会は「将来にかかる事態を防止する観点において、適切な措置をとるべきだ」と勧告した。それから四半世紀。日本の状況はその懸念が現実になっている。差別事案を起こし、人権侵犯があったと法務省に認定された国会議員が、「そんな事実はない」と否定するまでになっている。さらに昨年は選挙演説中に差別用語を吐き、「今のはカット」とごまかす公党の党首までいた。そうした状況は「差別をしても許される」というメッセージになる。いまこれを止めなければ。そのためにも議員公務員によるヘイトスピーチを許さない。許してはならない。差別にノー。

「外国人人権法連絡会」の事務局長、師岡康子さん

現在政党や政府によって行われている外国人ヘイト「外国人は優遇されている」「外国人の犯罪は多い」はデマ。外国人の人口に占める割合も、生活保護受給者に占める割合も3%。外国人が生活保護で優遇されているわけではない。にもかかわらず政府が総合的対応策で外国人への偏見を煽っている。

優遇どころか同じ税金を払っているのに選挙権はなく、公務員になることも難しい。また就職や(住宅の)入居にも差別がある。埼玉県川口市ではクルド人の子どもたちが盗撮されたり暴力を振るわれたりしている。行き着く先は米・トランプ政権の外国人射殺や、外国人を敵とする戦争だ。私たちが望むのはだれもが国籍、民族その他の属性によって差別されない社会。手を取り合って協力し合って生きていく社会。そのために必要なのは差別を禁止する、誰しも人権が保障されるような法制度だ。このような法制度を進めていく人を選びたい。

https://gjhr.net

「アムネスティ・インターナショナル」日本ユース代表、本谷碧さん

アムネスティは自由と尊厳が平等に守られる社会を目指す国際NGO。人権は一部の人が享受できるものではない。一人の人間として誰からも、国家からもその尊厳を踏みにじられないための概念だ。人間の命や生活を守ることに国による違いはありません。

肌の色や性別、障害の有無で差別を受けないこと。健康に生きる権利を保障されること。されないこと。これらは自然に湧いてでるものではなく、ご褒美として与えられるものでもない。わたしたちが自分の手で選び取り、整備し守っていかなければならない。しかしながら、現状私たちが選び取れているかは疑問だ。特に選挙が近づくと、一部の人を敵とみなし、私たちと彼らに分断する動きがある。誰かを敵として叩いても、あなたの生きづらさや不満は解決しない。一部の人の利益のために環境負荷や不平等を覆い隠すような動きにも注意が必要だ。一見豊かな社会に見える開発の裏に、未来の資源を先取りしたり、前借りしたり、弱い人を差別している現実はたくさんある。

誰か強い力を持つ人にすべてを委ねるのは一見スピードがあって効率的に見えるかもしれない。しかし、効率のために誰かの権利を踏みつける社会はいつか必ず、私やあなたの自由も奪うことになるだろう。だからこそ、誰かを傷つけて支持を集めるような手法に惑わされないで。あなたの支持する政治家や政策が、本当にあなたの大切な人を守っているか。権益のために嘘をついていないか。全ての人に共通する権利を守ろうとしているかを一緒に考えましょう。

https://www.amnesty.or.jp

本谷碧さん(撮影・提供:LGBT法連合会)

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」日本代表、土井香苗さん

ニューヨークに本部があり、世界中の人権問題を取り扱っている。

日本に人種やSOGIを理由とする差別を禁止する法律はない。差別禁止法の制定が非常に重要だと思う。人権状況をモニタリングし政策を提案する、政府から独立した「国内人権機関」も日本にはない。世界の中では非常に珍しい状態です。日本国内の政策の基盤を作っていくことが重要だ。

グローバルなことで言うと、アメリカですと憲法修正1条に抗議の権利、表現の自由があるが、それがないようになっているのがトランプ政権だ。表現の自由がない国々は世界にたくさんある。アメリカもそうなってきている。日本の人権状況もグローバルを無視して考えることはできない。

昨年、高市首相あてに人権外交に関する提言を出した。

日本の政府も世界の人権のために、人権外交を始めないといけない。そういうところにも注目していきたい。

非正規公務員「voices」のアドバイザー、竹信三恵子さん

なぜアドバイザーの私がここで話しているか。非正規公務員は顔を出せないからだ。地方公務員法で会計年度任用職員の制度が2020年から始まった。「1年限りの職務」と書かれているが、1年で終わる仕事ではない。DV相談、児童相談、保育士も入っている。仕事はずっとあるのに、法律では1年で切れるとなっている。上の都合のいいときだけ任用が継続される。名古屋では昨春、保育士が一斉に打ち切られた。これは世論の力で打ち返した。東京では100人を越すスクールカウンセラーが打ち切られ、裁判を起こしている。外国語担当教諭(ALT)も会計年度になり、労働基本権さえなくなった。1年有期、公務員なので、身分保障がない。クビを切られても訴える先がない。「未払い恐怖症」に陥っている人が多い。

国際規約に実態的に違反するような雇用を国が率先してやっている。彼女たちが自分たちの声で、顔を出して「おかしい」と言えるように、労働権をきちんと使えるように制度を変えていただきたい。

https://f.2-d.jp/voices

国会の不作為で当事者の苦しみ続く

質疑応答では司法判断後に国会審議が停滞している法改正などについて、質問がありました。

セクシャルマイノリティに関する法改正についてLGBT法連合会の神谷さんは「理解増進法、ハラスメント防止法制でSOGIに関する差別・ハラスメント禁止は一定進んだが、異常事態もある。基本計画をつくるのは国の義務なのに2年半作られていない。3年ごとに行われる法の見直しが今年6月なのに、基本計画も指針もない。法に書かれていることが履行されていない」と話しました。

また「性同一性障害特例法についても、最高裁の違憲判決の後、2年半にわたり法改正が放置されている。極めて異常な事態だ。今の日本で、法の支配や民主主義が機能しているのかが、端的に表れている。しっかりやっていただきたい。最終的には差別禁止法を制定していただきたい」としました。

同性婚について寺原さんは「国がやるべきことをやっていないので、やむを得ず原告がバッシングを受けながら司法で闘っている。複数の判決が違憲とし、かつ国会が一日も早く個人の尊厳が侵害されている状況を改善する立場にあるとしている。選挙の最中も、同性婚法がない、差別禁止法がないことによって、ヘイトスピーチがあふれている。法制度がないことによって二級市民的な扱いをされている弊害が、選挙の際にも明らかになった。国が今の状況を踏まえて、一日も早く自ら同性婚の法制化をしていただきたい」と述べました。

トランスジェンダーの権利侵害について、Tnetの木本さんは「性同一性障害特例法については、手術要件がまだ残っている。手術をしなければ戸籍上の性別変更ができない。これを早く変えていただきたい。SNSでのトランスジェンダーに関する間違った情報やヘイトが増え続け、拡散されている。実際どういう人がこの社会で生きているか、トランスジェンダーの実態をしっかり見ていただきたい」と訴えました。