軍拡に反対する市民らが3月9日昼、防衛省を訪れ、「2026年度防衛予算の見直し」「東富士駐屯地への長射程ミサイル配備撤回」などを求める申し入れ書を高市早苗首相、小泉進次郎防衛相、片山さつき財務相らに提出しました。
この日未明、自治体や住民への説明なしに熊本県の健軍駐屯地に長射程ミサイルの発射機が搬入されたことを受け、強く抗議する一幕もありました。同日、参議院議員も防衛省に抗議しています。
長射程ミサイルは「専守防衛」を逸脱
防衛予算の見直しを求める申し入れ書を提出したのは「大軍拡と基地強化にNO!アクション2025」の池田五律さん。

2026年度予算案で過去最高となる9兆円超の防衛費を計上していること、2027年度から所得税額に1%を付加し、「防衛特別所得税」(仮称)を実施することなどを踏まえ、次の点について見直しを求めました。
・今のペースで防衛費を増大させれば財政赤字の拡大は必至である。財政危機は円安、国債暴落にもつながりかねない。防衛費を“聖域化”することなく抑制・削減することを求める。
・財政規律を守り、国家財政の単年度主義を貫くことを求める。
・軍需関連産業育成は、その市場の拡大、すなわち武器輸出拡大につながる。日本の“死の商人”化につながる防衛費の研究開発費及び、「危機管理投資・成長投資」を見直すことを求める。
・スタンドオフ・ミサイルの購入・配備や国産の長射程ミサイル開発は相手からの攻撃の兆候段階での「敵地攻撃」も想定したものであり、「専守防衛」を逸脱する。ミサイル軍拡競争を回避すべく、購入・配備・開発系各区そのものを中止・撤回することを求める。
・ミサイル配備先や弾薬庫周辺の住民の不安が高まっている。周辺住民に納得が得られるまで説明会を実施し、それまでは2025年度末までとされる熊本・健軍駐屯地、静岡・東富士駐屯地へのミサイル配備を止め、計画の全てを見直していただきたい。
・防衛省・自衛隊は「強靱化」の名で、司令部の地下化=要塞化も進めようとしている。一方、国民保護は地方自治体に押しつけている。「強靱化」優先をやめ、住民の生命・財産を守る視点を優先して「国家安全保障戦略」総体を見直していただきたい。
・宇宙・サイバー・電磁波領域に加え、各種無人機やAIの軍事利用を前提にした予算案が組まれている。それらの軍事利用自体の見直しを求める。
・自衛官が死傷することを前提とした「衛生機能強化」関連の予算が計上されている。自衛官を死傷させないという観点に立って、防衛予算及び国家安全保障政策を見直していただきたい。
・常時緊張状態に自衛隊員を置くような国家安全保障政策を改めていただきたい。高市首相は「台湾有事=存立危機事態」発言を撤回し、緊張の緩和をなすべきである。
日本がアメリカの戦争に利用されるおそれ
長射程ミサイルの配備に反対する要請書を小泉防衛相に提出したのは「富士にミサイルやめて!」の会の竹内康人さん。2月21日に静岡集会で採択した要請書に、米国とイスラエルによるイラン戦争開始後の状況を加えました。
「アメリカとイスラエルはイランへの戦争を始めました。これは国連憲章や国際法を無視し、国内での議会承認もない不法な暴挙です」
「日本に長射程ミサイルを配備すれば、アメリカの戦争に利用され、日本の平和国家としての存立を危うくします。長射程ミサイルの配備計画も中止すべきです」
「防衛省は東富士駐屯地(静岡県)の開発実験団から12式ミサイル能力向上型を、地元自治体への連絡もなく、熊本県の健軍駐屯地へと輸送しました。私たちは富士がミサイル配備の拠点とされ、富士から健軍へと長射程ミサイルが配備されたことに強く抗議するとともに、富士をミサイルの拠点としない活動をすすめる意思を示します」

県・市に事前の告知なし
熊本市東区の健軍駐屯地の周辺には3月8日夜、市民ら約200人が集まってミサイル搬入を監視。警備員が市民を排除する中、9日午前0時過ぎに裏口からミサイル発射機が搬入されました。
小泉防衛相は3月6日の記者会見で、搬入日程の地元自治体への周知について、「必要な準備が整いましたら、事前に九州防衛局からお知らせしたいと考えています」と回答しましたが、今回、熊本県にも熊本市にも事前の告知はありませんでした。
また、住民説明会について、小泉防衛相は記者の質問に対し、「現時点において、住民の方々を対象とした説明会を行う予定はありませんが、自治体等からの御意見も踏まえつつ、九州防衛局のウェブサイトにQ&Aを掲載しており、問い合わせ窓口も設置して、質問に逐次お答えするなど、我が国の安全保障上の意義や重要性について、既に積極的な発信に努めているところであります」と回答。不安払拭に努めようという態度は見られないままです。
https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2026/0306a.html
同日に実施した防衛省正門前の抗議行動で、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の杉原浩司さんは「むちゃくちゃなやり方。憲法の3原則である基本的人権の尊重、平和主義、主権在民のすべてを踏みにじっている。ミサイル配備や弾薬庫増設を不安に思うあらゆる地域の人がせめて住民説明会の開催をと訴えているが、防衛省は一切応じていない」と強く批判し、搬入したミサイルの搬出と、配備計画の撤回を求めました。
国会議員からも抗議文
9日16時からは、参議院議員の小池晃(共産)、高良沙哉(沖縄の風)、福島みずほ(社民)、ラサール石井(同)の4人が、「陸上自衛隊健軍駐屯地への長射程ミサイル発射機搬入に関する抗議文」を小泉防衛相に提出しました。

抗議文の内容(抜粋)は以下の通りです。
「健軍駐屯地は住宅地に囲まれており、すぐ近くには学校や病院もあります。他国を攻撃できるミサイルが発射された場合、熊本市街が攻撃の対象とされる危険があることから、地域住民からは不安の声が上がっていました」
「今回の搬入は、熊本県・熊本市に対する事前通告がなかったと報道されています。住民の合意を得ないまま、ミサイル配備を強行したことに、強く抗議します」
「そもそも敵基地攻撃能力を持つミサイルの配備は、武力による威嚇を放棄するとした憲法9条に違反しています。全国で予定されている長射程ミサイル配備計画の撤回を強く求めます」
市民の要望書、国会議員の抗議文とも、防衛省側で応対したのは地方協力局総務課の職員で、事実関係の確認や要望への返答ができず、ただ書面を受け取るだけにとどまりました。

