今年に入って「生活苦」が主な理由とみられる無理心中がひとり親世帯を中心に相次いでいます。コロナ禍に続く物価高が中東危機で更に加速し、子どもの生命を脅かしているとして、子どもの貧困対策に取り組む5団体が5月22日に記者会見を開きました。政府に対し、近く編成する補正予算から、困窮子育て世帯を対象にコロナ時と同様の現金給付を行うよう求めています。
5団体は公益財団法人すのば、認定NPO法人キッズドア、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会です。
ひとり親世帯の生活苦、極まっている
会見の冒頭で2つの事件が紹介されました。
・8歳長女を殺害した容疑、母親を逮捕「生活苦しく、子育てに疲れた」(朝日新聞、2026年5月2日)
・福岡のマンション3人死亡、母子と判明「3ヶ月前から家賃滞納」と通報 生活に困窮か(産経新聞、2026年1月8日)
あすのばの小河光治代表理事は、「私自身、幼い頃に父を亡くし、母ががんばって育ててくれたが、中2の時に『心中するしかない』という状況に追い詰められたことがある。日本の母子世帯の母親の就業率は非常に高いが、収入は低い。コロナ禍に続く物価高で、ひとり親を中心に子育て世帯の生活苦は極まっている。緊急一時金を補正予算に入れていただきたい」と話しました。
困窮世帯の子ども1人あたり5万円を
5団体は児童扶養手当を受給しているひとり親世帯と、住民税非課税世帯(ふたり親含む)を対象に子ども1人につき5万円の給付金を想定。補正予算3兆円のうち、約2000億円をこの給付金に充てて欲しいと要望しました。
ひとり親家庭サポート団体全国協議会の赤石千衣子理事長は「コロナ時に多くのひとり親が雇用先から自宅待機や解雇を言い渡され、非常に困窮した。私たちも緊急小口資金の特例貸付や総合支援資金の制度を紹介し、独自に食料支援なども行った。2020年8月から2023年3月の間に、政府から5回にわたり困窮世帯を対象に特別給付金が出され、心配していた無理心中事件は起きなかった」と話し、政府による対策の必要性を訴えました。

保護者のメンタル悪化「心中事件は氷山の一角」
キッズドアの渡辺由美子理事長は、ひとり親世帯に支援を届ける同法人の「ファミリーサポート」登録世帯へのアンケート結果を紹介しました。登録世帯の8割以上が年収300万円未満です。年収とのクロス集計では「保護者の食事が減ったり、栄養バランスが悪化している」は年収100万円未満で82%、100〜200万円で78%、200〜300万円で74%。「子どもの食事が減ったり、栄養バランスが悪化したりしている」が年収100万円未満で61%、100〜200万円で54%、200〜300万円で42%。「保護者の健康状態が悪くなった」という回答も年収100万円未満で48%を占めています。

渡辺さんは「保護者、子どもの健康状態が所得と連動している。コロナ禍以降、食事を摂れていない母親が増え、メンタルの状態も非常に悪い。心中事件は氷山の一角で、追い詰められた親子がたくさんいることを知ってほしい」と話しました。
食事を満足に摂れず、子の発育にも悪影響
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの鳥塚早葵さんも同法人が実施する食料支援「子どもの食応援ボックス」の利用者アンケートを紹介。「子育てで心配なこと、不安なこと」の1位が「物価上昇に収入が追いつかず、生活費が足りないこと」(74.2%)だったことなどを挙げ、「食事が満足に摂れていないことは、子どもの発育や精神面にも悪影響を与えている」と経済支援の必要性を説きました。

しんぐるまざあず・ふぉーらむの小森雅子理事長は「酷暑で給食のない夏休みはひとり親にとってリスクが高い。今から打てる手を打たないと」と指摘。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを除く4団体と子どもの貧困対策推進議員連盟が4月、黄川田仁志・こども政策担当相に要請した「夏休みこども緊急セーフティネット構築プランの活用」に沿った対策を求めました。プランでは「学校や児童館、放課後児童クラブを拠点化し、冷房の効いたクーリングシェルターとして活用し、食事を提供する」「拠点に来た子どもたちに確実に食事を提供するため、フードバンクの活用など食料供給ラインを構築する」などを各自治体に要請しています。
息子のみ食べて、自分は食べずにやりくり
しんぐるまざあず・ふぉーらむの会員の女性がオンラインで生活の実情を話しました。
中3の息子と2人暮らしです。物価高騰のため生活はギリギリ。お米は5kgで5000円もするため、2kgずつ買い足しています。それでもすぐになくなってしまい、お菓子や菓子パンでしのいでいます。スーパーや百均で安いお菓子を探すのですが、それも「中身が少なくなったね」と息子と話しています。外食もできません。できたとしてもファストフードのみ。息子のみ食べて、自分は食べないでやりくりしています。
児童扶養手当は給与所得が増えると減ってしまう。家賃、水光熱費、学費、部活動の積立を支払うと何も残らない。来年の高校受験に向け、これから塾代もかかってくるので、何を優先すべきか日々悩んでいます。
コロナの時にいただいた給付金はありがたかったけど、もう残っていません。収入を増やそうにも、持病があってダブルワークができません。
このまま物価高騰が止まらないのかと不安。子どもの成長とともに着るもの、食べるものにお金がかかる。私は子どもが1人ですが、2人、3人のご家庭はもっと厳しい状況だろうと思います。支援の手を差し伸べていただけるとありがたいです。
日本大学の末冨芳教授は「2000億円で困窮状態の親と子どもたちの命がつながる。ひとり親に限らず、子育て世帯全体の1割強が衣類や食事を購入できていない状況にある。政治の力で改善してほしい」と訴えました。

