住み慣れた地域で暮らし続けたい、というAさんの願いが叶いました。
脊髄損傷による麻痺があり、支援事業者の介護を受けながら一人暮らしをしている秋田市のAさんの介護時間について、市はAさんが希望していた「24時間」とすることを決定しました。9月11日に代理人の弁護士を通じ、Aさんに通知しました。これまで秋田市は「17時間」しか公的な介護を認めず、対象外の7時間は支援事業者が持ち出しでAさんを介護。「このままでは立ち行かなくなる」という危機的な状況でした。Aさんは「安心して暮らしていけるんだと、ほっとしました」とコメントを寄せました。
公的な介護を受けられない「空白の時間帯」
Aさんが24時間の介護を希望した経緯について、詳しい記事はこちらです。
Aさんは秋田市の特別支援学校を卒業後、施設での生活を経て、2022年8月に市内のアパートで一人暮らしを始めました。脊髄損傷により胸部から下を自分で動かすことができないため、公的な障害福祉サービスを利用して支援事業者の介護を受けながら、暮らしてきました。
しかし、秋田市がAさんに公的な介護を認めたのは午前7時から午前0時までの「17時間」のみ。深夜から早朝にかけての「7時間」は対象とならない空白の時間帯となり、結果的に、Aさんの支援事業者が自腹で介護を続けてきました。Aさんと事業者は秋田市に対し、24時間の介護を認めてほしいと再三求めてきましたが「予算がない」「特別扱いはできない」といった理由から聞き入れられませんでした。さらに、地域での一人暮らしを望むAさんに対し、市は「施設が妥当」と伝えていました。
秋田市、24時間の介護支給を決定
Aさんと事業者、Aさんの代理人である虻川高範弁護士(秋田市)、長岡健太郎弁護士(兵庫県尼崎市)は7月31日、秋田市に対して「24時間の常時介護を前提とする支給決定」を求める意見書を提出しました。これを受けて市は9月5日に再度、専門家でつくる審査会(障害保健福祉の学識経験を有する委員で構成)でAさんの介護時間について検討。審査内容は非公開となっていますが、結論としてこれまでの「月539時間」を広げて、Aさんが願った「月775時間」(1日24時間)の常時介護を支給すると決定しました。
「安心して暮らしていける」
秋田市の決定について、Aさんは次のようにコメントを寄せました。
〈施設を退所して2年、やっとこの日が来た…とホッとしましたし、これからはもっと安心して暮らしていけるんだなと思っています。私1人だったら、ここまで話は進まなかったと思います。たくさんの方から協力していただけたから獲得できた時間数だと思っています。これからは24時間ヘルパーさんの支えを受けながら、私らしく生活していきたいと考えています〉
またAさんの代理人である虻川弁護士は〈ご本人の実態に目を向けて、真摯に検討を重ねて、本人の自立生活支援に寄り添った審査会及び秋田市の決定に敬意を表し、本人とともに、喜びたいと思います。今後とも、障がいの有無にかかわらず、本人の意思に沿った生活支援が実現できる施策を続けられるよう期待します〉とコメントしました。