群馬県桐生市の生活保護について市民、支援者の情報提供を求める 第三者委員会がオンラインで

記者名:
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群馬県桐生市の生活保護違法運用事件 全容解明のために情報提供を求めているよ

群馬県桐生市の生活保護受給者が過去10年で半減し、1日1000円しか支給されないなど違法な対応が続いていた問題を調査するため設置された第三者委員会(委員長=吉野晶弁護士)が市民や支援者に対し、同市の生活保護の申請にどのような対応や問題点があったかの情報提供を求めています。https://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=YPZui2oJLUqXvnFg0w9clc7uisq3rUZBrHaleE2gJz9URFhKQzY5N0sxRFBITkxGWVAyS0hYUVlXSy4u&route=shorturl

調査期間は1月6日〜23日。情報提供フォームは第三者委員会が直接管理し、市は閲覧できない仕組みになっているそうです。異例の対応の背景には、市職員への聞き取りからだけでは問題が十分に解明されないまま、年度末に向けて報告書をまとめることへの懸念があるようです。

群馬県桐生市生活保護違法・不適切運用問題 
2023年11月、群馬県桐生市が、生活保護を申請した50代男性に、1日1000円、月合計でも決定額の半分しか支給していなかったことが群馬司法書士会の要請書で明るみに出た。男性は持病があって就労が困難だったため、7月26日に市保護課に生活保護を申請。8月18日に決定通知を受け取った。市は毎日ハローワークで求職することを指導し、求職活動をした証拠としてハローワークで「求職活動状況・収入申告書」に認印をもらってから市役所に来るよう求めた。その上で、窓口で1日1000円を手渡していた。「フルタイムの仕事に就かなければ、生活保護を打ち切る」ともし、家計簿をつけることも指導。男性が8月に受け取った総額は3万3000円、9月が3万8000円と、決定額(月7万1460万円)の半分程度だった。市は分割支給の記録を残しておらず、未支給分の保護費は保護課の手持ち金庫で管理していたという。会計処理上は全額支給したと虚偽計上していた。市は記者会見で、生活保護の届け出や受領に関し、1948本の認印を預かっていると明らかにした。市社会福祉協議会やNPO法人が生活保護受給者の金銭管理を行っていたことも判明した。
市は2024年3月27日、第1回目の第三者委員会を開催。
4月3日、生活保護の分割支給を受けた男性2人が、市を相手取り、損害賠償請求訴訟を前橋地裁桐生支部に起こした。

市は違法性を認めたが、裁判では争う姿勢

桐生市の生活保護受給者数は2011年の1163人をピークに、2022年には547人と10年で半減しています。微増微減を繰り返しながらほぼ横ばいの全国の傾向とは対照的で、申請を認めなかったり、申請を取り下げ・辞退させたりするなど、窓口での厳しい「水際作戦」があったことが推察されます。

群馬県は2023年6月、桐生市に対する特別監察を行い、申請権の侵害や親族への仕送り強要が疑われる事例が多数あったとし、分割支給、満額不支給については生活保護法違反であると認定しました。

23年9月の桐生市議会で市の保健福祉部長が、「当時は違法性の認識はなかった」とした上で、一部不支給についての違法性を初めて認めました。しかし、分割支給の対象となった男性らが市を訴えた国家賠償請求訴訟では、市は「分割支給について本人の同意があった」と主張し、争っています。

水際作戦「明確な指示」はなかった?

第三者委員会はこれまで6回開催されました。24年8月の第4回会議に、市の内部調査チームが生活保護行政に携わった職員と退職者、計43人に行った聞き取りを要約した報告書が提出されました。

報告書で、職員らは分割支給について「生活指導のために行っていた」と説明。

生活保護受給者が10年で半減した理由を、「生活保護の適正化を図ろうということで、受給者の自立に向けた就労支援や、本来なら年金を受給できる受給者への手続きなどを強化するとともに、これまでも行ってきた他法他施策の活用も徹底した」結果だとしました。「高齢者の死亡」を理由に挙げる職員も多くいました。

また、報告書は、水際作戦について、「明確な指示があったという職員はいなかった」としています。

4〜10月の保護開始、前年同期比80世帯増

12月18日の市議会では渡辺ひとし市議(共産)が、24年4月〜10月に生活保護が開始となった世帯数が、前年同期比で80世帯増えたことを指摘。「なぜ増えたのか」という質問に、市の保健福祉部長は「申請しやすいように窓口対応を改善した」と答えました。

一方、「今まで水際作戦が実態として行われていたことを認めるのか」という質問には、「第三者委員会で議論がされており、現時点では判断するのが難しい」と回答を避けました。

群馬県桐生市議会中継(開始24分ごろから)

これでは、桐生市の生活保護行政の違法性が十分に解明されないまま、第三者委員会が終わってしまう。

危機感を抱いた弁護士や支援者らでつくる桐生市生活保護違法事件調査団は昨年12月19日、桐生市と第三者委員会に要望書を出し、「生活保護利用者や一般市民へのアンケート、関係機関へのヒアリングを実施」するよう求めました。

今回の情報提供フォームの設置はこの要望書を受けたものと見られます。

調査団の一員でつくろい東京ファンドの稲葉剛さんは、「調査団にも、利用者や医療、福祉関係者から、『相談に行って追い返された』『保護を打ち切られた』『窓口で職員に威嚇された』などの情報提供がある。でも狭い社会なので告発の報復を恐れる人が多い。実態解明のため、多くの声が寄せられることを期待します」と話しています。