税理士の会が「インボイス廃止法案」の提出を求め、国会議員に署名提出

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成長産業だと持ち上げるならば、消費税を払えといって若いクリエーターを潰すのはやめろ!

インボイス制度の廃止を求める税理士の会(菊池純代表、655人)が12月3日、国会議員でつくる「インボイス問題検討・超党派議員連盟」(会長・末松義規衆院議員)に対し、インボイス廃止法案の提出を求めて1万5711筆の署名を提出しました。

税理士の会は7月の参院選に際し、各政党に公開質問状を送付。立憲民主党、国民民主党、日本共産党、参政党、社民党、れいわ新選組から「インボイスは廃止すべき」という回答を得ました。署名は、さらに一歩進めたインボイス制度廃止法案の提出を野党となった公明党を含む各党に働きかけるのがねらいです。

インボイス制度廃止法案の骨子として次の3点を求めています。

①この法律は、現下の物価の高騰による国民生活及び国民経済への悪影響を緩和するとともに、税負担の公平の確保、経済格差の是正、経済の活性化等を図る観点から、消費税の税制の見直しについて定めるものとする。
②消費税の仕入れ税額控除に関する適格請求書等保存方式に係る制度(インボイス)は廃止するものとし、政府は、このために必要な法政上の措置を速やかに講ずるものとする。
③本廃止法案成立後、速やかに消費税法等の関連条文の整理・見直しを行い、2026年4月1日から施行すること。

2割特例、8割控除は来年9月末まで

現在、インボイス導入の激変緩和措置として、小規模事業者の納税額を売上税額の2割に軽減する「2割特例」と、80%の仕入れ税額控除「8割控除」が実施されています。いずれも2026年9月30日に廃止が予定されており(8割控除は5割控除に移行し2029年9月30日に全廃)、その後は消費税負担が一層重くなることから、小規模事業者の倒産や廃業が急増することが懸念されています。

集会では建設、運輸、漫画家、作家、税理士、医療、農業、声優など、さまざまな業態の事業者から、消費税やインボイスが仕事に与えている影響について発言がありました。

その一部を紹介します。

「消費税、憲法変えれば戦争税」

消費税をなくす全国の会 事務局長・上敷領(かみしきりょう)千恵子さん

円安に続く物価高が4年以上、続いている。毎年食料品の値上がりが続いていて、「買い物のたびに取られる消費税の負担が重い」「なんとか消費税減税を」という声が広がっている。その声を受けて、いま国会では消費税減税・廃止を求める議員が多数を占める状況になった。消費税をなくす会は一貫して消費税をなくすために、手を取り合って粘り強い運動を続けて来た成果がこのような状況を作り出した。消費税減税を実現させる絶好のチャンスと捉えている。

いま消費税減税を掲げる政党は8政党あるが、内容はさまざま。食料品非課税は時限的か恒久的か、5%減税にしても時限的か恒久的か。とにかく野党はまとまって、減税法案を作成し、国会に提出しろと運動することを強めることにした。今夏、参議院議員選挙では国会議員127人に要請書とアンケートを送った。6会派16人から賛同が来た。

軍拡路線との闘いも強めなければいけない。なくす会は「消費税、憲法変えれば戦争税」というスローガンを掲げている。1990年6月に結成され、150万人が活動に携わってきた。高市政権はあやうい動きをみせている。消費税が導入される前の軍事費は3兆円だった。いまや11兆円です。軍事費はGDP比2%を前倒しし、トランプ氏が要求する3.5%も否定していない。もしその要求を飲めば年間21兆円の財源が必要になる。その財源に必ず消費税増税がねらわれてくると思う。

毎月24日に全国で街頭署名を行っている。参院選後は地域に入って署名を訴え、対話することの大切さを実感している。西陣の地域ではなかなか署名が集まらなかったが、対話したところで、断られることはなかった。大田区でも団地で署名用紙に名前を記入してくれていた。ニューヨーク市で民主社会主義を掲げるマムダニ氏が当選した。その原動力は草の根の力。10万人のボランティアが300万戸の訪問を重ねた。私たちはこの闘いに学び、1万人対話運動を進めていきたい。

クリエーターの体力をマイナスまで削る

マンガ家・大須賀こすもさん

マンガ家の目線でインボイス制度についてお伝えしたい。

日本のマンガ・アニメなどのクリエイティブ産業の海外での売り上げは2023年時点でも5.8兆円と半導体を超えて第2位の大規模な市場となっている。しかし、私たち実際に手を動かしてそれを作り出しているクリエーターにはその巨大な数字はほとんど関係がない。ジャンプ、マガジン、サンデーなどの超有名少年誌で連載されている先生方は自身のスタジオを企業化しますが、大多数のマンガ家もそのアシスタントもほとんどがフリーランスです。大作家も連載が終わればアシスタントを解雇せざるを得ない状況が生まれる。どなたでも知っているような作家さんのアシスタントが解雇されて、無名の私の下に来られたこともありました。契約社員という働き方もあるが、ほぼほぼフリーランスと下請けでマンガ界は構成されている。

月々の稿料が発行される作家でもインボイス登録ができるほどの年収は望めない。経費が掛かりすぎてアシスタントを頼めない人もいるんじゃないかと思う。こうしたフリーランスへの負担が大きすぎて、廃業を余儀なくされるのがインボイス制度。

インボイス未登録者であることによるサイレント取引排除。マンガ作成発注の打ち切り、仕事量のカット、稿料からの税金が差し引かれているケースも多くあります。

発注者側は下請け法や独占禁止法に抵触しないように、取引中止の理由を明確にしません。そのため、自分の実力を疑ってしまい、マンガ家の下積み自体をあきらめてしまいかねません。そうして描き手の層が薄くなってしまったマンガ界に発展の余地はないのではないか? 中長期的に見ればかえって大きな損失になると思う。

マンガ家はアシスタントとともに、体力に応じた税金を毎年納めている。インボイス制度によって体力がないものに対してほど、苛烈な消費税を課して、ギリギリ保っていたクリエーターの体力をマイナスまで削ってしまい、マンガ界を土台から切り崩し始めているのが現状。8割控除2割特例などでやっと延命できている状態だと思う。

エンタメとして成立する企画立案、マンガの形に変換する、ペンで線を引く。それぞれが磨かれた技能なんです。アニメ、マンガ、ゲームは一大芸術産業として成立していると言っていいと思う。

そのような文化の多様性、生き方の多様性、技術の継承を自ら失いかねない制度は、完全撤廃を求めたい。ただでさえ限界に来ている庶民の善性に甘えた税制は見直していただきたい。

米価の乱高下 納税にも振り回される農家

農民運動全国連合会・会長 長谷川敏郎さん

いまコメの問題は令和の米騒動から続いて、毎週のように米価が発表され、5kg4000円だ、銘柄米は5000円だ、こんな高いコメは買えないということで、大きな悲鳴が上がっています。政府の方は「農協がもうけている」「農家がもうけている」と、生産者と消費者の分断を煽る。そうした政治が続いています。事実、農家は数十年にわたって、生産がつぐなえない米価を押しつけられてきました。やっと一息付けるとなったとたんに、たとえばお米を3町歩〜4町歩作っている農家は、急に今年1000万円を超える収入になった。税金はどうなるのか。売り上げ1000万円を超えると2割特例は適用除外。これはどうなるのか。そういう形で農家は消費税の問題に振り回されています。

国産米が高いので、一部は備蓄米を買う。関税を払ってでも外国産米を入れるスーパーもある。それを買わざるを得ない人も出てきている。そうした中で新米の売れ行きが止まり、米が動かなくなっている。京都の農協では9月に60kg、3万円で買っていたお米を、12月から2万7000円に引き下げるというかつてない状況が出てきている。農家は田植えするときには今年はお米が上がるかなと言っていた。7月8月には石破政権が増産だと言った。しかし、高市政権は減産だという。作れ、作るなに振り回される。売り上げも高くなったり、地獄のように落ちたり。これにさらに輪をかけているのが消費税。消費税は、コメ作りが続けられなくなっていく税金だと考えている。みなさんが、国産米が食べられなくなるという税制だ。

愛媛県に百姓百品という高齢の人が小さな農業をがんばる産直運動がある。300人が出荷し、仕入れ特例の8割を使ってなんとか産直組合がお年寄りの生産を支えている。これが来年5割になれば、産直組合といえども経営がなりたたなくなる。高齢の生産者に消費税を払って、課税事業者になってと求めることになる。農業をするな、ということになる。

日本のコメづくりの85%は2町歩から3町歩。圧倒的に小規模事業者が多い。売り上げがない新規就農者にも消費税や所得税を課すのは大変だ。しっかりと新規就農を支えなければ、日本からコメ作りの農家はなくなってしまう。食料と農業を守るために消費税減税をがんばっていこう。

新作「インボイス残酷物語(仮)」描きます

マンガ家 池沢理美さん

インボイスを導入した人、推し進めようとしている政府や官僚の方々は人の心をお持ちでしょうか?

Xの投稿。11月23日、林芳正総務相。

顧問のMANGA議連に出席され、あいさつされたそうです。

「日本が世界に誇るマンガ、アニメ、ゲーム産業は大きな成果が期待される重要な産業分野であり、潜在力ははかりしれない。我が国の将来の産業競争力を支える分野として、引き続きその振興に取り組んで参ります」と。めちゃくちゃこの業界に期待されていました。

私、この投稿に非常に腹が立ち、引用リポストしました。するとその投稿は4.1万いいね、1.5万リポストされ、268万人の目に触れることになりました。

「この産業を担っていく若いクリエーターたちの夢を砕くな。最悪な税制であるインボイスを廃止してくれ。夢を持ってこの世界に入ってきた、食うや食わずのたくさんの若いクリエーターの中に、唯一無二の才能が潜んでいる。その裾野全体を守り育てなければ、あなた方が目論んでいる世界で大もうけできるような作家も作品も生まれない。稼ぎが少なかろうが赤字だろうが、とにかく消費税を払えと言って若いクリエーターをつぶすのはやめてくれ。ベテラン作家として心からのお願いです」

11月28日、岸田元総理も映像産業戦略推進研究会の中で「アニメの、世界で稼ぐ力の強化のために官民連携しよう」的なことを投稿されました。世界で、この業界でもうける気満々です。林、岸田両氏の投稿にびっくりするほどたくさんのコメントが付きました。

どれも「だったらインボイス廃止しろ」「消費税を廃止しろ」という声がほとんどだった。

私はいま、やる気になっています。マンガを描こうと思っています。「インボイス残酷物語」。消費税によってとんでもない目にあったたくさんの人を取材し、ショートストーリーにしていき、一話ごとにSNSで発表していくつもりです。

たとえばある内装業者さんへの取材。おうちの修理などの発注を請け負って職人を集めて仕事をするわけですが、インボイス登録をしている職人さんもいれば、カツカツでまだ免税業者のままの人もいる。でも親方はそれを区別しない。免税業者の職人の消費税を肩代わりされたりしているそうです。いまはそうしていますが、来年9月に軽減措置が縮小されたらどうなるかわかりません。インボイス制度は雇っている者と雇われている者に消費税の押し付け合いをさせるんです。最悪です。

税金の話だけど、一人ひとりの人生の話なんです。この制度によって人が追い詰められ、町で小さく商売していた方々の灯りが消される。涙すら枯れてしまうような、そんな話を取材で聞くたびに消費税制度、インボイス制度の悪政ぶりを痛感しています。

一般の方達にも読んでいただき、そうだったのかと共有してほしい、寄り添ってほしいと考えています。インボイス制度がよくわからないというフリーランスの人、案外多い。私の周りにもいっぱいいます。本当に複雑な税制なんです。なので、専門家と連携しつつ、読者にわかりやすいように描いていきたいと思っています。来年9月30日に激変緩和措置が終了となる前に、なんとしてでも国民の声を大きくしていき、インボイス制度を廃止していこうではありませんか。

ドライバーを奴隷労働に誘導し、だまし討ちのインボイス導入

建交労軽貨物ユニオン 執行委員長・高橋英晴さん

私たちユニオンは首都圏で軽貨物ドライバーを組織し、それぞれが個人事業主として1人1台の軽貨物車を所有し、働いている。いまやアマゾンやウーバーイーツ、日本郵便、ネットスーパーなど、あらゆるところで軽貨物ドライバーは昼夜にわたって、荷物やフード、郵便物を配達している。軽貨物ドライバーが増えた背景には、荷主や運送会社が直接ドライバーを雇用するよりも、社会保険料負担がなく、消費税の転嫁など低コストに抑えられ、雇用していないので長時間労働をさせることができ、いつでも辞めさせることができるということがある。使い勝手のいい労働力として、荷主や運送会社から見て利用価値があるからだ。

昨日相談があった女性ドライバーは、口頭契約で365日休みも取れずに働いている。病気になってしまい、医師の指示で12月に4日間休んで診療を受けなければならないが、取引先は休むことを許さず、休むなら会社で用意した代車への1日分の経費をあなたが支払いなさいと言われたそうだ。

また別の方は、取引先に物価高騰分の単価の値上げを申し入れた。取引先は「仕事をもらっている以上荷主に要求はできない、あきらめろ」と言ったそうだ。一つの取引では食べていけないので、休みの日にアマゾンフレックスの仕事をしてダブルワークで働いているが、それでも貯金を崩して生活せざるを得ない。

国は自由な働き方という聞こえのいい文句で軽貨物ドライバーを奴隷のような労働に誘導しておきながら、さらに適切な納税と言って、だまし討ちのようにインボイス導入をした。インボイスの番号取得と、売り上げ1000万円以下の事業主への課税は、本来別のものではないか。

軽貨物ドライバーを対象にした、インボイスが本格導入された令和6年分の確定申告の実態調査では、平均売り上げは469万円。経費を引いた所得は約230万円。ここから8万5000円の消費税納税を求められた。燃料代の値上がりで今年はさらに厳しい。来年9月に2割特例が終わると消費税額は21万円超となり、所得の1カ月分以上を納めることになる。ドライバーを辞めていく仲間も出てくるだろう。インボイスを続けると、郵送物が届かなくなる。薬が薬局に届かなくなる。こうした状況を打開するにはインボイスの廃止、早期に消費税を廃止することが必要だ。