ひめゆり平和祈念資料館の絵本が新たに刊行 体験者の証言と資料館を訪れる人たちの想像力をつなぐ絵本

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絵本『ひめゆりの塔  生徒たちが見た沖縄戦』より。汐文社提供

ひめゆり平和祈念資料館の絵本が新たに出版!体験者の経験を来館者の目線で見ることができるよ。

「学生さん、上の奴が、ぼくにおしっこをかけやがった」
「今すぐ水をくんでこい」
「ウジを取ってくれ」

これらは絵本『ひめゆりの塔  生徒たちが見た沖縄戦』の一場面に書かれた言葉です。病院壕の負傷兵たちが口々に生徒たちに投げかけた言葉です。

7月14日、絵本『ひめゆりの塔  生徒たちが見た沖縄戦』が刊行されました。
ひめゆり平和祈念資料館学芸員の古賀徳子(こが・のりこ、55歳)さんにお話を伺いました。

絵本『ひめゆりの塔  生徒たちが見た沖縄戦』
文:ひめゆり平和祈念資料館 絵:カイズケン 汐文社 2026年7月14日刊 AB判・36頁 1,900円+税
*巻末には資料館によるわかりやすい解説、ひめゆり学徒隊に関する地図や年表も収録。
ひめゆり平和祈念資料館学芸員の古賀徳子さん

Q:この絵本を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

古賀:コロナ禍で来館者も減って大変だった頃、ひめゆり平和祈念資料館についてもっと知ってもらいたいと思っていました。そんな時、ちょうど出版社から声をかけてもらい、書籍化すれば図書館や書店を通して多くの人に伝えられるのではと考えました。

Q:絵本というスタイルで、まるで資料館を歩いているようなガイドになっていますね。いろいろ工夫されたと思いますが、特に読者に見てもらいたい場面はありますか?

古賀:はい。この絵本では、資料館を訪れた現代の生徒たちが、展示室を歩き、ひめゆり学徒の証言や資料を見ているうちに、沖縄戦を目にしたような感覚になります。実際に資料館を訪れて、こうした感覚を味わった方は少なくないと思います。ひめゆりの体験を具体的に知るなかで、驚きや気づきがあり、いつのまにか戦争の実態に迫っているのです。そこで、絵本では、沖縄戦当時のひめゆりの生徒の視点と、それをみつめる現代の生徒の視点を表現しました。

絵を担当したカイズケンさんは、資料館のアニメや展示の絵を制作した作家のひとりです。それらの作品は、ひめゆり学徒隊の体験者に何度も確認を重ねて完成させたもので、その経験がこの絵本に生かされています。

印象的な場面を二つだけ紹介します。壕の中に作られた病院のジオラマを制服姿の中高生たちが覗き込んでいる場面(8〜9頁)。当時、壕の外には砲弾がボンボンと音を立てながら飛んでいました。

壕の中に作られた2段ベッドには大怪我を負った兵士たちが溢れ、「看護婦さん、女学生さん」「もれそうだ、尿器をくれ」「みずー、水をくれ!」「痛いよー、痛いよー」「お母さん、お母さん」と口々に叫んでいます。絵本にはこのように登場する人々の言葉が散りばめられていますが、これらはすべてひめゆり学徒隊の体験者の証言に出てくる言葉たちです。

壕の中に作られた病院のジオラマを制服姿の中高生たちが覗き込んでいる見開き場面(本書8〜9頁)

もう一つは、沖縄戦の後半、ひめゆり学徒が海岸へと追い詰められていく場面(20〜21頁)です。目の前には海が迫っていて、そこには無数の米軍の船があり、スピーカーからは投降の呼びかけが聞こえてきます。「戦争ハ終ワリマシタ」「食事モ飲ミ水モ準備シテアリマス」「命ハ助ケマス」……。

ひめゆりの生徒たちは岩のすき間やアダン1の木の茂みに逃げ込みます。

「声を立てるな」「助けるなんて嘘だ 捕まったら殺される」……。
逃げ場のない戦場の様子がこの見開きの場面から伝わるのではないでしょうか。沖縄戦でひめゆりの生徒や沖縄の人々がどのように追い詰められていたのかがわかる、絵本ならではの表現だと思います。

沖縄戦の後半、ひめゆり学徒が海岸へと追い詰められていく見開き場面(20〜21頁)

「ひめゆり」とは、 「ひめゆり平和祈念資料館」とは

「ひめゆり」とは、沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の共通の愛称です。1945年3月、この2校から女子生徒222人、教師18人が日本軍の病院に動員され、日本兵の看護の手伝いをさせられました。
しかし米軍の攻撃に日本軍は本島南部へ撤退。その後、壊滅状態となった日本軍は戦場の真っただ中で、生徒たちに解散命令を下したのです。小さなグループに分かれた生徒たちは逃げまどい、次々と命を落としていきました。
 
ひめゆり平和祈念資料館は、1989年6月23日、沖縄戦の体験と平和の尊さを伝えるため、ひめゆり学徒隊の体験者を含む「ひめゆり同窓会」によって設立されました。公的な助成は受けておらず、入館料や寄付などで運営されています。現在、来館者は年間約40万人。修学旅行の中高生たちと家族連れや旅行者など一般来館者がおおよそ半々くらいです。
今年7〜11月には台湾の高雄市、台北市で特別展が開催されています。台湾でひめゆり学徒隊の沖縄戦体験を本格的に紹介するのは初めてです。
 
沖縄取材で筆者は、2026年3月、辺野古沖の転覆事故が起きてから、平和教育への不当なバッシングが起きているとあちこちで耳にしました。そんな中でひめゆり平和祈念資料館が平和教育を続けることはさらなる困難があるかと思います。

古賀さんは語ります。

「沖縄戦を伝えることは、ひめゆり学徒隊の体験者にとっても簡単なことではなく、当初からさまざまな工夫をしてきました。私たち戦争を体験していない職員も、伝えるための工夫を重ねています。ぜひ絵本を手に取って、いつか資料館に来てほしい」

  1. 沖縄の海岸沿いでよく見かける植物で、葉や幹にトゲがある。 ↩︎

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