60歳の誕生日に雇用打ち切りは「合理性のない不利益変更で無効」女性教諭3人が勝訴

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女性教員3人が、60歳の「誕生日」に年度途中で雇い止め。そんなこと許されるの?

東京都町田市の私立フェリシア高校(旧鶴川高校)の女性教諭3人が、年度途中の60歳の誕生日をもって雇用を打ち切られたのは不当として、定年後の再雇用を求めていた裁判で、東京地裁は3月27日、原告の女性たちの労働契約上の権利を認め、高校を経営する学校法人明泉学園に月例賃金と慰謝料を支払うよう命じる判決を出しました。

女子校は女性教員の割合が高く、この高校でも教員の7割が女性、非正規の教員が8割を占めます。原告代理人の志田なや子弁護士は「この労働争議の背景には女性差別がある。女子校の女性教員の多くが非常勤で、不当に安く雇用されている現状にも目を向けてほしい」と話しました。

勝訴のバナーを掲げる三木ひろ子さん=東京地裁(三木さんのyoutubeから)

誕生日の翌日には職員室から机を撤去

訴えていたのは国語教諭の三木ひろ子さん、社会科教諭の松山恵美さん、理科教諭の村田智美さん。いずれも36〜37年間、この高校で専任教諭として働いてきました。多くの学校では、定年は満60歳(または65歳)に達する年度末、と就業規則に定めています。しかし旧鶴川高校は2012年に就業規則を変更し、定年を満60歳の誕生日と定めました。これを受け、2020年6月に松山さん、9月に村田さん、10月に三木さんがいずれも誕生日に定年を迎えたとして、年度途中で雇用を打ち切られました。

2020年11月、提訴時の記者会見で、三木さんは「誕生日の翌日には職員室から私の机が撤去されました。今年は職員室から3つの机が次々と撤去され、大きな穴が開きました。生徒たちは『年度の途中に先生がいなくなるのはつらい』『おかしい』と口々に言いました」と当日の様子を伝えました。

村田さんは「コロナ禍でもあり、生徒は大きな不安を抱えていた。生徒のどんな小さな一歩でも一緒に喜び、大きな自信につなげていくという教育実践が、誕生日定年でいきなり打ち切られてしまった」。

松山さんは「学校を、(誕生日定年を許すような)無法状態にせず、生徒に自分たちの生活について考えてもらう一助となれば」と提訴の理由を語りました。

原告の三木ひろ子さん(右から4人目)、代理人の志田なや子弁護士(左から3人目)=東京地裁

誕生日定年も再雇用拒否も「合理的理由なし」

判決は、誕生日定年について「合理性のない不利益変更であり、無効である」としました。

学園側が原告らの再雇用を拒否した理由について、「客観的合理的な理由があるとは認められない」としました。

また、学園側が2019年に就業規則を改定し、「定年後の再雇用は原則として非常勤」としたこと、賃金をフルタイムで月額17万円と不当に低額にしたことには、合理性がないとして、常勤としての契約を求めました。

定年後の継続雇用教員に精勤手当を支給しないという待遇の差別については、パート有期法8条に定める「不合理と認められる相違」として、損害賠償を認めました。

2022年11月には中央労働委員会で、別の常勤講師の雇い止めを巡り、同校の教職員組合と明泉学園が和解しており、学園側が「不当労働行為を繰り返さない」ことを誓約しています。

三木さんは「全面勝訴はうれしい」と顔をほころばせました。3人は学校側に早期の再雇用を求めていく方針です。

三木さんは定年時、2年生3クラスの古典を担当していました。「あなたたちの卒業までに学校に戻ってくる」という約束は果たせませんでした。

「間に合わなかったけど、おかしいことに声を上げれば認められるよ、筋を通すことは大事だよ、と私たちの姿から伝えることができたと思う。これからも生徒たちにそう伝えていきたい」

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