「借り入れして納税」「消費税負担を価格に反映できず」深刻なインボイス制度の影響 フリーランス7000人の実態調査

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借金して消費税を払わなきゃいけないなんて、おかしくない?

新税制・インボイス制度の導入後、初の確定申告が終わりました。

今年の課税対象期間は、昨年10月の施行以降のわずか3ヶ月間。それでも、負担感は大きく、事業の先行きが見通せなくなり、死を考えている人もいるといった深刻な影響が出ています。

インボイス制度を考えるフリーランスの会が4月26日、東京都内でインボイス制度におけるフリーランス等の実態調査報告会を開き、明らかにしました。

インボイス制度とは適格請求書等保存方式。年間課税売上額が1000万円以下の免税事業者との取引にも消費税が課税され、その分を「免税事業者」「課税事業者」「消費者」の誰かが負わされることになります。すでにフリーランスや個人請負、自営業者らがインボイス登録をしていないとの理由で取引から排除されたり、あらかじめ消費税分をひかれて取引価格を下げられたりといった事態が生じています。

7000人の92%が見直し・中止を求める

調査は3月22日〜4月5日、WEBアンケートで行い、7018件の回答が寄せられました。

国税庁の発表では2023年12月時点で、インボイス制度開始により、免税事業者だった140万人・団体以上が課税事業者になり、消費税の申告をすることになりました。調査はこうした新規の課税事業者が消費税や事務費用の負担をカバーできたのかどうかを明らかにする目的で行われました。

回答者の属性はフリーランス・個人事業主が78・5%を占めました。年代は50代33.3%、40代27.4%、60代以上22.0%、30代14.4%、20代2.8%。事業規模でみると、年間売り上げ「200万円未満」18.9%、「200万円以上400万円未満」22.4%、「400万円以上600万円未満」16.7%で、600万円未満が全体の約6割でした。

インボイス登録の状況は、「登録していない免税事業者」51.1%、「免税事業者だったが登録した」25.9%、「課税事業者で登録した」13.5%、「登録していない課税事業者」5.3%でした。

インボイス制度について、91.9%が「デメリットが多いので制度の見直しや中止を望む」と回答。「事業のプラスになっている」はわずか0.2%でした。

6割が「事業の先行きが見通せない」

新たにインボイス登録した2871人に消費税の負担感を聞きました。「負担が大きく事業が成り立たなくなりそうだ」(27.4%)、「負担軽減措置のある間は対応できるが、その後の目処がたたない」(32.5%)と、6割が事業の先行きが見通せない状況。

                      インボイス制度を考えるフリーランスの会の調査より

「負担が大きく事業が成り立たなくなりそうだ」と回答した人を事業規模別にみると、「1000万円以上から5000万円未満」が2割を占め、「1億円以上」も1割と、規模が大きな会社にとっても事業継続を危うくする課題であることがわかりました。

業種別では「建設・土木・工業」が20.2%、「サービス業」19.2%、「クリエイター」13.1%。

インボイスは声優やアニメーター、漫画家だけの問題ではなく、一人親方や零細下請けを抱える建設業、小口配送などの運輸業にも関わる問題であることがわかります。

消費税を払うために借り入れをした

インボイス登録した事業者のうち、6割超が消費税や事務負担の費用を価格に転嫁できず、「身を削って補填した」、1割は「借り入れして消費税を納税した」と回答。価格に転嫁できた事業者も16%いましたが、そこではインボイスが物価上昇の圧力になっています。

経理・申告作業の受け止めは「非常に大変だった」「大変だった」の合計が73.1%に対し、「簡単だった」「思っていたより簡単だった」は10.1%。大変だった点として「2割特例や8割控除、簡易課税といった制度の理解」「請求書・領収書のインボイス登録番号の確認」「申告書の記入作業」「税理士やクラウド会計ソフトとの新たな契約や支払い・やりとりの増加」などが挙がりました。

インボイス未登録者4139人に、制度が開始された10月以降の取引の変化について聞きました。

45%に取引の減少や排除がみられました。内訳は「インボイス未登録を理由に値引きされた」20.4%、「取引先からの明言はないが、発注が減った・値引きされた」19.1%、「インボイス未登録を理由に取引排除にあった」5.4%。

                     インボイス制度を考えるフリーランスの会の調査より

今後の事業の見通しについては、全回答者の53.8%が「事業・仕事の見通しが悪く、不安」。「廃業・転職を視野に入れている」も15.6%に上りました。また、2割超が「負担軽減措置が終了した後のイメージが付いていない、負担軽減措置がわからない」と回答しています。

国会議員の裏金問題に怒り、不信

自由記述には4500人が回答を寄せ、仕事や所得の先行き不安から「死」を意識している声も29件ありました。

「インボイス未登録を理由に取引排除にあったが、説明もなく受け入れられず、不安な生活を送っている。増税も相まって生活が苦しい。正直死ぬかもしれない」(大阪市、20代、フリーランス・個人事業主、クリエイター)

「軽減措置が終われば、間違いなく生活できなくなるため、生きていくことをあきらめようと考えている」(東京都、40代、フリーランス・個人事業主、建設・土木・工業)

確定申告期間と並行して、自民党の国会議員の裏金問題が連日報じられ、解決の道筋がまだ見えてきません。このことへの「怒り」「不信」などの声も目立ちました。

「継続する不景気に加え、コロナで追い打ち、さらにインボイスでとどめを刺された感じです。想像より状況はさらに悪く、仕事の依頼はほぼなくなりました。本業ではない別の仕事を契約し、何とかしのぎながら意地で継続している状態です。約40年続けてきた好きな仕事を今更やめたくはありませんので歯を食いしばって耐えています。この不平等で不完全な制度は、この国の職業の自由、個人の創造力・生産性を確実にスポイルします。抜本的な税制改革もせず、制度を作った張本人たちが脱税行為を行い反省もせず、懲罰もなし! 日本は民主主義・法治国家であるはずです。政府のやり方には甚だ疑問を感じています」(山口県、50代、フリーランス・個人事業主、クリエイター)

国が実態調査を

インボイス制度を考えるフリーランスの会の阿部伸さんは「わずか2週間に7000人。みな、怒りをふつふつと、不安をふつふつと抱えています。これだけの数が一気に集まるのがインボイス制度です。制度の中止や廃止を求めている人がこれだけいる」と強調しました。

とりわけ、インボイスが借金に結びついている点が気になるといいます。

「インボイス登録をした人は(消費税分を)身を削って補填している。借り入れをして消費税を納税した人も1割近くいた。中小零細企業や個人事業主が多く、銀行の融資を受けるというより、消費者金融やカードローンから借りて消費税を納めているんです。こんなのおかしいです。租税の中で最も滞納が多いのは消費税。そういう状況はインボイスで加速していくのではと思う」

阿部さんは「免税業者、小規模業者、フリーランスがインボイスでどのような不利益を被っているのか。まずは国に実態調査をしていただきたい」と求めました。

オブザーバーとして参加した税理士の佐伯和雅さんは「きついよね。先々まっくらな制度だと思う」と話しました。

相談に来る事業者には、まだインボイスについて「わからない」という声が目立つとし、「準備ができていないので、一回立ち止まらないといけないというのが、今回の確定申告の感想です」と話しました。

また、インボイス登録をしたが、消費税の申告をしていないケースがまだ顕在化していないとし、来年、再来年にかけて未申告や未納の指摘が増えるだろうと予測しました。

インボイス制度の見直し・中止を求める調査報告書を読み上げる阿部伸さん(右から2人目)=東京都千代田区

土木・建設業の労働組合「東京土建」の石川信一さんは「年収200万円ぐらいの高齢の大工さんにインボイス登録して課税業者になってくれとはいえない。一方、免税事業者を使うと事務が繁雑になるから、と手数料を取られることがある。仲間の現状で言うと、課税事業者になってから、ほとんどが消費税を納められていません」と訴えました。

住宅の修繕などにすでに支障が出ているといいます。

「1月に能登半島で地震があった。こういうとき、地域の土木や工務店が真っ先に駆けつけるんです。ところが、インボイスをめぐり、だれが課税業者になり消費税を負担するのかで、親方と職人に分断が起きている。建設業が発展できず、地域のインフラも支えられなくなってしまう。今からでも、すぐにでもインボイス制度を廃止していただきたい」

財務省、国税庁の職員らに調査報告書を手渡すインボイス制度を考えるフリーランスの会のみなさん=東京都千代田区

報告会には財務省、国税庁、中小企業庁、公正取引委員会の職員が出席し、報告書を受け取りました。

複数の国会議員から「国が実態調査を」と求められましたが、財務省の担当者は「やるやらないは、今ここで申し上げられない」と明言を避けました。

インボイス制度を考えるフリーランスの会は今後、調査結果のデータを基に、政府にインボイス制度廃止を求めていく考えです。

STOP!インボイスのオンライン署名は57万筆を超えています。(2024年4月30日現在)

同会は並行して紙の署名を集めており、6月の国会会期末に第1回目の提出を目指しています。