検閲のない中国語で現代史を書く 女性記者たちのコミュニティー

記者名:

言論統制が進む中国で、記録することを手放さない女性記者たちに会ったよ

中国で自らのセクハラ被害を告発し、#MeToo運動に積極的に関わってきた女性記者、黄雪琴さんが6月14日、広州市の裁判所から懲役5年の実刑判決を言い渡された、と朝日新聞で報じられた。2019年以降、オンラインで政府批判をしたり、海外組織の集会に参加したりしたことが、国家政権転覆扇動の罪に問われたという。スマートフォンで記事を追いながら、背筋に冷たいものが走った。

5月から6月にかけて、東京都内で立て続けに中国の女性記者たちと会う機会があった。どこでとも、誰と会ったとも明かせない。そのぐらい緊迫した状況下で彼女たちは言葉を紡いでいる。

情報公開なくなり、消えた民主メディア

3年前まで6年半、香港で記者をしていたという女性は、主に難民や少数民族をテーマに記事を書いていた。インドネシアやパキスタンから香港に来たケアワーカーが不当に拘禁され、難民収容所で100日間のハンガーストライキをしたことも取材した。収容所の入り口では手荷物検査を受けて私物を没収され、支給されたペンと紙で取材をするように言われた。毎回「何を取材したのか?」を確認されたが、断った。記録が取れないので、細部まで頭に叩きこみ、収容所を出てからメモを起こしたという。当局から事実誤認と揚げ足を取られないように取材源を必ず2つ以上取るように心がけた。

だが、そんな取材も2020年以降はできなくなった。

2014年の民主化運動「雨傘革命」の後、中国政府は2020年6月に香港国家安全維持法を制定、施行した。「国家分裂」「政府転覆」「テロ活動」「外国勢力との結託」を国家安全に危害を加える犯罪と規定したこの法律で、メディア関係者や民主化運動家が逮捕、起訴された。

「弾圧もさることながら、2019年以降、政府のデータが公開されなくなったことが、香港から民主的媒体がなくなった原因ではないか」と女性はみている。調査報道にはリソースが必要だからだ。「2018年ごろまでは当局への書面取材ができたけれど、今はそれもほとんどできません」

言論自由、公共生活、#MeToo

別の場所で会った女性記者は北京を離れ、東南アジアで人権問題について取材しているという。台湾やシンガポール、タイ、マレーシアなどに住む中国系の女性記者たちでつくるWEBサイトを教えてくれた。

「WOMEN 我们」(https://women4china.substack.com/

サイトの紹介文にはこうある。

「検閲のない中国語で現代史の初稿を書く想像上のコミュニティです。私たちを購読し、ファイアウオール内の友人がメールで購読するのを手伝ってください。私たちの記事を寄付して共有することも歓迎です。ストーリーに関するヒントを提供したり、ライターとして参加したりするには*******までご連絡ください。私たちはあなたの情報を安全に保つために懸命に取り組んでいます」

特集記事のカテゴリーには「被補者」(逮捕された人々)、「記疫」(新型コロナの記録)、「白紙革命」、「言論自由」「公共生活」などと並んで「#MeToo」もあった。冒頭の黄雪琴さんの記事が中国語と英語で読める。

翻訳ソフトを使って少しずつ読み進めている。新型コロナ流行期に大学生活を送った女子学生の手記や、35年前の6・4天安門事件の手記の募集、東京大学で中国社会の研究をしている阿古智子教授のインタビューもあった。

どんな状況にあっても「記録すること」を手放さない女性たちがいる。中国の外から、中国の現状を伝え続ける女性たちの営みを側面から応援し、連帯したい。

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