デマを基に市議が一般質問 秋田県にかほ市 議員の「勉強会」で得た情報 「トランス女性を差別する意図はなかった」

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地方議会での差別的な発言を、見過ごしてはいけないと思う。

 秋田県にかほ市の市議会議員が6月8日の市議会で、SNS上に流布した虚偽情報(デマ)を基に一般質問をしていたことが判明した。 デマは、埼玉県が設置の検討を進めている「オールジェンダートイレ」に関するもので、LGBT理解増進法の法制化について議論が進んだ4月から5月にかけてSNS上で拡散。その内容は、トランスジェンダーの女性への誹謗中傷や差別につながりかねないものだった。埼玉県知事は5月、会見で二度にわたりデマであると訴え、報道もされていたが、にかほ市議は知らなかったという。市長もそのまま答弁に応じており、議会の場で人権侵害につながるデマが事実としてやりとりされた。市議は取材に対し、情報が誤りであることを認めたものの「トランスジェンダーの女性を差別する意図はなかった」と説明した。

埼玉県が全否定したデマを引用

  一般質問を行ったのは、にかほ市の髙橋利枝議員=無会派。市議会本会議の一般質問での再質問で次のように述べていた。(以下、議事録を引用)

 「これは埼玉県ですが、介護施設で職員の更衣室がもうオールジェンダーの更衣室になったということで、ここの介護職員が辞めました、女性職員が。やっぱり男性職員と同じではちょっと困るというクレームを言ったらしいんですけれども、結局改善には至らなくって、女性職員が辞めるというようなことになったようです(略)。皆さんT(トランスジェンダー=出生時に割り当てられた性別と、ジェンダーアイデンティティが異なる人)に関しての差別の意識はないんです。ないんですけれども、やっぱりトイレとか更衣室に見た目が男性の人がいるというのは、やっぱりちょっと、理解してる、してないの問題ではなくて、やはりまだちょっと抵抗があるのかなと思います」

  髙橋議員が引用したデマは、国会でLGBT理解増進法が議論されていた4月下旬から5月にかけてSNS上で急速に広がった。まず匿名の人物が「埼玉県内の介護施設がジェンダーレストイレ、ジェンダーレス更衣室になり、職員たちは批判したが施設長は『県知事からお褒めのお電話をいただいている』と言っている」などと虚偽の情報をSNSに書き込み、その後「(更衣室などがジェンダーレスになったことで)職員が辞めた」というデマも拡散した。

 これを受けて埼玉県知事は、5月2日、18日と2度にわたる会見で、一連の情報について「フェイクニュースである」「全く事実ではない」と否定した。(5月2日、18日の埼玉県知事会見動画リンク 2日の会見は26分40秒ごろ)

  また埼玉県も公式ホームページ(5月2日掲載)で「ネット上において誤った情報が流布していますが事実ではありません」と注意を呼び掛けていた。

  デマを流された当該の介護施設も5月26日、ホームページ上に虚偽情報であると掲載。埼玉県に報告したほか、警察に相談したというお知らせを出していた。

 知事会見の後、SNSの匿名人物は投稿を削除。「職員が辞めた」という情報を流した人も虚偽の情報だったことを謝罪し投稿を削除した。このことは5月中に地元紙や全国紙など複数のメディアがウエブ上で報じていた。

  髙橋議員は6月8日の一般質問で、このデマを事例として挙げたのち「各地で問題がある中で、にかほ市の私たちの、女性や子供や孫の安全が守られるのかなというところが一番不安なんだと思うんですよね、皆さん。そのことについて市長のご見解を伺いたい」と質問。

 市川雄次市長は「私たちにしろ、男性にしろ、女性にしろ、トランスジェンダーにしろ、そういう性自認の問題であるとすれば、性自認に対してはやはり自己抑制というのも必要だと思うんです」と事実確認をしないままデマを発言通り受け止め、答弁した。

「全国の地方議員の勉強の場で得た情報」

 この件について10月3日、髙橋議員に取材したところ「(埼玉県の情報がデマだったということは)この取材を受けるまで知らなかった」と話した。埼玉県の情報については、全国の地方議員グループがオンラインで学ぶ場で、他県の議員が参加者たちに紹介した事例だと語った。

  SNS上では近年「トランスジェンダーの女性の権利を認めると、トランス女性だと偽った男性が『自分は女だ』と言って女子トイレや女湯に入ってくる」といった言説が広がり、トランスジェンダー女性への誹謗中傷や人権侵害が起こっている。

 今回の一般質問はそのような誹謗中傷に結びつきかねない発言ではないか、との指摘に対して髙橋議員は「『自分はトランスジェンダー女性だ』と言って悪用する人たちがいるという情報を聞き、問題だと感じた。にかほ市で問題が起きることを心配したのであって、トランスジェンダー女性を差別する意図は全くなかった」と説明した。

  また市川市長にも取材したところ、埼玉県の情報がデマだったとは認識せずに答弁したと説明。「今は新たな価値観とこれまでの価値観がぶつかっている過渡期。髙橋議員は決して悪意があったわけではないと考えている」と議員の発言を擁護した。

 一般質問は、にかほ市議会ホームページに全文が掲載されている(39ページ以降)。※当事者のかたを傷つける内容が含まれています。https://www.nikahoshigikai.akita.jp/pdf/35/%E4%BB%A4%E5%92%8C5%E5%B9%B4%E7%AC%AC5%E5%9B%9E%E5%AE%9A%E4%BE%8B%E4%BC%9A2%E6%97%A5%E7%9B%AE%EF%BC%886%E6%9C%888%E6%97%A5%EF%BC%89.pdf

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