沖縄の米軍による性暴力事件、隠蔽するな! 女性たちが外務省前で怒りのスタンディング

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沖縄の少女への性暴力 政府による隠蔽は許せない

沖縄に駐在する米空軍兵長による少女への性暴力事件が半年以上も公表されなかったことを受け、性暴力被害当事者や支援者ら350人が7月2日、東京・外務省前で抗議のスタンディングを行いました。

呼びかけたのはアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、アジア女性資料センター(AJWRC)、ふぇみん婦人民主クラブ。3日間で全国から120団体が賛同しました。

事件は昨年12月に起きました。米兵は、沖縄県内の公園で少女を誘って車で自宅に連れ去り、16歳未満と知りながら性的暴行をしたとして、3月11日に沖縄県警により書類送検され、同月27日に那覇地検がわいせつ目的誘拐と不同意性交等の罪で起訴しました。起訴後、外務省はエマニュエル駐日米大使に抗議しましたが、沖縄県には6月25日まで情報を共有しませんでした。
ほかにも今年1月から5月末までに少なくとも3人が不同意性交容疑で摘発されたという報道があります。

1945年以降の在沖米軍による性被害の一覧表を掲げる人たち=東京都千代田区

外務省、いつ事件を知ったか「言えない」

集会で福島みずほ参議院議員は2日午前に外務省と防衛省に抗議文を提出した、と話しました。

「3月の起訴時には外務省は知っていた。でも沖縄県議選(6月16日)や慰霊の日(6月23日)が終わるまでは県と情報を共有しなかった。事件は12月です。外務省も防衛省も隠蔽していたんじゃないですか?まだ第1回公判も行われていないんですよ。あまりに遅い。あまりにおかしい。(事件を)いつ知ったんですか?と外務省に聞いても、言えない、という。国民不在、女性不在、沖縄無視。こんなことはおかしい。事件があったらちゃんと知らせてください」

性被害を恥ずかしいと国が決めるのか

基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代さんが沖縄から電話で参加しました。

「起訴後、加害者は保釈されています。この加害者はいまどこにいるのか。自宅は基地の外にありますが、基地の中にいます、というんですね」

1993年の性暴力事件時には、沖縄県警が基地内に通って容疑を固めている間に、加害者の米兵が米国に逃げ帰ってしまいました。国際手配になり、米国で交通事故を起こしたことをきっかけに居場所が判明し、4ヶ月後に沖縄に連れ戻されましたが、被害女性が事件を取り下げていたので、職務放棄による軽い罰を受けたにとどまったといいます。

「日本の刑法が2017年に改正されるまで、強姦罪は親告罪でした。事件を取り下げると米兵の罪は軽くなる。日本の刑法と日米地位協定のはざまにあって、沖縄で被害に遭う女性たちは人権が守られていないです」

女性への暴力をなくそう!基地をなくそう!と声が響いた=東京都千代田区

女性の人権侵害を理由に沖縄を排除する“二重差別”

岸田首相は、6月23日の慰霊の日のスピーチで「沖縄の皆様には、米軍基地の集中等による大きな負担を担っていただいています。政府として、このことを重く受け止め、負担の軽減に全力を尽くしてまいります」と話しました。

「首相の言う負担軽減の中に人権が入っていないのか?人権侵害、しかも女性のことですよね。

公表しなかったのは『女性のプライバシーを守るため』というんです。

性的暴力を受けたら恥ずかしい、だから秘密にすると公の機関が決めるんですか?

暴力が行われている時に、加害者を糾弾しないで、被害者を守ると称して加害者を守っているんです。

女性の人権侵害を理由にして、沖縄を排除する。二重の差別ではないでしょうか?許せませんよ」

高里鈴代さんの声をマイクとメガホンで中継する女性たち=東京都千代田区

米軍、日本政府に強く抗議します

集会の最後に「在沖米軍による性暴力および情報隠蔽に抗議する緊急声明」が読み上げられました。

私たちは米兵による性暴力が何度も繰り返される状況を許してきた、米軍、日本政府に強く抗議します。
隠蔽の口実として、被害者のプライバシーが利用されることに強く抗議します。被害者のプライバシーに配慮しつつ、情報を市民と共有することは可能であるばかりでなく、あらゆる性暴力、ジェンダーに基づく暴力を根絶するために不可欠です。
米軍基地がもたらすさまざまな人権侵害の中でも、性暴力は被害者に対するスティグマや性暴力を軽視する司法制度のために、不可視化される傾向が続いてきました。埋もれていた被害を掘り起こしてきた沖縄のフェミニスト団体の努力、またあらゆる性暴力被害者の権利が守られる司法制度を目指してきた多くの人々の努力にもかかわらず、政府が被害者のプライバシーをたてに必要な情報を隠蔽することは許されません。
なぜ、沖縄県への情報伝達が遅れたのか、警察が事件を公表しなくなっている背景に何があるのか、沖縄県にとどまらず基地があるすべての地域を対象に調査し、明らかにするよう求めます。
日本政府特に外務省は、国連安保理決議に基づき、女性平和安全保障の積極的推進を掲げています。女性の平等な安全保障への参加には、民主的で透明な意思決定プロセスが不可欠です。
私たちはこれまでの軍事的国家安全保障が、ジェンダーに基づく差別・暴力と植民地主義の上に成り立ってきたことを認識し、市民とりわけ直接影響を受ける人々の声が平和安全保障の意思決定に反映されるよう求めます。私たちは国家安全保障を優先して、軍人による性暴力、ジェンダー暴力を不可視化し、過小評価してきた日米両政府に強く抗議します。あらゆる性暴力を許さず、基地押しつけと闘う沖縄の人たちと連帯します。

参加者のリレートークでは、連帯の表明が続きました。

エトセトラブックスの松尾亜紀子さん

2017年と2023年に刑法が改正された。同意のない性交は不同意性交罪となり、性的な同意のできる年齢が13歳から16歳に引き上げられた。私も以前フラワーデモを呼びかけたひとりとして、この改正を心から願ってきました。

しかし、沖縄では子どもが性暴力にあっても、その事実自体が隠されてしまう。なんのためにこの数年間、北海道から沖縄までの性暴力被害者たちが声を上げてきたのか。悔しいです。

フラワーデモをしている沖縄の友人たちは沖縄から性暴力がなくならない限り街頭での抗議を続けると言っていました。先日、嘉手納基地の前でフラワーデモをやっている風景をみて、居ても立ってもいられなかったんですが、私たちもこうやって東京で一緒に集まって、抗うことができて本当によかったです。

国が押しつけた基地のせいで起こった性暴力を国が隠すな!性暴力をなかったことにするな!

私たちにもできることがあると思います。一緒に声を上げましょう。

沖縄一坪反戦地主会関東ブロックの青木初子さん

性暴力許さん、日本は卑劣、基地は沖縄から出て行け、沖縄の軍事植民地化をやめろ、というポスターを今朝、作ってきました。日本の米軍基地の70%以上が沖縄にあります。米兵はフェンスを越えて沖縄を歩き回ります。沖縄の基地はもともと沖縄の土地です。なのに、なぜフェンスで囲んで沖縄の人間が入れなくして、自分たちは沖縄中を歩くのか。女性を物色して性暴力をはたらく。これは何度も何度も繰り返されてきた。

米軍基地がある限り性暴力はなくなりません。日本政府は米軍を支持して、沖縄県民を弾圧する側に回っています。隠蔽するのは外務省だけではないです。日本政府が沖縄を弾圧しているというこの状況を声を上げてなくしていきましょう!

本と喫茶サッフォーの山田亜紀子さん

12年ほど前の話をします。2012年10月、沖縄で2人の米兵による女性への性暴力事件が起こりました。その月の31日、当時衆議院議員だった照屋寛徳さんは女性への性暴力、犯罪に対する認識についての質問主意書で、1972年の沖縄の本土復帰以降、2012年までに沖縄で発生した、米国人軍属とその家族を加害者とし、子どもを含む沖縄女性を被害者とする、沖縄県警が性暴力事件として認知した犯罪件数について明らかにするように政府に求めました。

それに対し、当時の野田(佳彦)内閣は次のように答弁しています。

1989年3件、1990年3件、1991年2件、1992年2件、1993年4件、1994年4件、1995年3件、1996年1件、1997年1件、1998年1件、1999年3件、2000年3件、2001年3件、2002年2件、2003年4件、2004年1件、2005年1件、2006年0件、2007年2件、2008年4件、2009年0件、2010年1件、2011年0件。

ゼロ件だったのはたったの3年だけ。そして、現在も後を絶たない状態が続いています。

改めて読み上げてみると異常ですよね。米軍の犯罪の裁判権がアメリカ側にあるとする日米地位協定があること、基地の70%を沖縄に押しつけている日本の植民地主義が原因だと思います。この協定はうちなーんちゅの尊厳を踏みにじるものではないでしょうか?

市民の自由や人権を奪って支配するのがファシズムや植民地主義です。日本は政治や教育で当たり前のように女性の身体を支配してきました。照屋さんの質問主意書には『立て続けに起こる米兵の性暴力に県民のわじわじーは頂点に達している』とあります。わじわじーはうちなーぐちで怒りを表します。性暴力のない社会を作るために私たちは沖縄のわじわじーを絶対にわすれずに、うちなーんちゅの人権を踏みにじるファシズムや植民地主義にこれからも抵抗し、沖縄の人とともに怒っていきましょう。

性暴力の被害者は女性が圧倒的に多いです。しかし、あらゆるジェンダーの人が被害に遭っているということも忘れないでいましょうと、付け加えておきます。

全国フェミニスト議員連盟の陣内やすこさん(元・東京都八王子市議)

1995年大きな性暴力の事件が沖縄でありました。2006年、女性が殺害される事件もありました。そのときに八王子市議会から抗議の意見書を出しました。全国の自治体から同様の意見書が相次ぎました。日米地位協定の見直しを要するという声が上がったわけです。

今回、それをさせないためにこの隠蔽があったとしか考えられません。私たちはしっかりと、女性を性暴力の対象にする米兵、沖縄に在日米軍の7割がいる、その状況を沖縄と連帯して変えていかなければなりません。

沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志の川名真理さん

ニュース女子問題、沖縄の基地建設反対運動をする人たちを誹謗中傷する番組に対して抗議をしてきました。安倍政権の時でした。そのときに沖縄への誹謗中傷と辺野古基地建設というのが両輪で回っているんだとわかりました。今回はそれに加えて隠蔽という、あたかも何もしていないかのような、分からない形で、本当に酷い残酷なことをしたと思います。東京に住む私たちは何が起きているかを報道でしか知ることができません。沖縄で公表された時に、琉球新報も沖縄タイムスも、1面でたくさんの人たちが怒りの声を上げていることを伝えました。でも、その日、NHKはニュースで一切流していなかった。私たちと沖縄との分断が報道をめぐって行われているんだと思います。次の日はNHKはちゃんと報道していました。私たちができることの一つは、報道各社で伝えたいと思っている人の背中を押すために、意見を伝えることだと思います。

Praise the braveの八幡真弓さん

私は約15年前に性暴力被害に遭った当事者です。いまは当事者に優しい社会を目指して、トラウマ・インフォームドケアの普及活動をしています。性暴力はどのように行われても許されません。私は性暴力の後、家庭も、仕事も、健康も、周囲との信頼関係もすべて失いました。私は一時、確実に人生を失いかけていました。性暴力は重篤な後遺症を残します。今もまだ万全ではなく、PTSD治療を続けています。

今回の性暴力は被害者のプライバシー保護を理由に隠蔽されたと聞きました。私は沖縄で引き続き危険にさらされる人たちはもちろんながら、その理由を聞くことになる全国の性暴力被害当事者がどんな気持ちになるかと思うと、とても辛い気持ちになりました。統計では少なくとも14人に1人、無理矢理に性交された当事者がこの日本にはいます。その人達が、政府や自治体の事情で性暴力被害者が適切に対応されなかったと聞いてどう思うでしょうか?その対応に、私たちのプライバシー保護という大義名分を利用されたと聞いて、どういう風に思うでしょうか。

もちろん私は全性暴力被害者を代表することはできませんが、少なくとも私の尊厳は、健康は、人生は、そのような事情より軽いんだなという風に感じました。これは甚大な二次被害です。二次加害は回復を遅らせ、症状を深刻化させることもあります。わずかな生命力を燃やして必死に生きている当事者に、今回の二次加害はどのように届くでしょうか。性暴力後の人生を必死で生きている被害当事者も、沖縄で起きた性暴力に政府が真剣に向き合ってくれることを願っています。

バスストップから基地ストップの会の京極紀子さん

神奈川県相模原市に住んでいます。キャンプ座間という米軍と自衛隊の基地があります。いま、キャンプ座間には米陸軍の司令部が置かれているんですが、2005年普天間基地を返すという名目で、辺野古に新基地を作るということを合意した「SACO合意」による米軍の再編強化の中で、キャンプ座間も今に至っています。

沖縄につながっている仲間達から、「座間も大変だねえ、自分たちのところでもがんばりなさい」といわれ、「バスストップから基地ストップの会」を立ち上げました。それから19年間、毎週水曜日の座り込みと月1回の申し入れ行動を行ってきました。メンバーは一人一人が沖縄につながって、軍隊、性暴力に反対する運動にかかわっています。

私も2016年に「NO BASE STOP 性暴力 黙ってられん」というグループで活動をしました。沖縄の恩納村で女性がレイプされ、殺害されるというひどい事件があり、それに怒って新宿で仲間達とスタンディングをしました。そのときは沖縄で死者を悼むという蝶々のバナーを作ったのですが、その痛みを形に残すためにZINEを作りました。そのZINEの一番最後のところには、高里鈴代さんたちがまとめた1945年からの沖縄での性暴力被害の一覧を帯にしてつけました。広げると2メートル近くあります。これは8年前なんです。この8年間の間にこれに続く被害が起きている。性暴力事件がたくさん起こっていることに非常に怒っているし、それに心が痛みます。今回、国家が国家のために軍隊による性暴力事件を隠したわけです。人権侵害が起きたことが明らかになりました。これ以上、こういうことを許してはいけない。この帯がこれ以上1㍉も長くならないために、私たちもみなさんと一緒に闘っていこうと思っています。

怒りー沖縄の米兵性暴力を許すな0712の奧誠之さん

私たちは7月12日に外務省前でアクションをするメンバーです。もともとは6月23日、沖縄慰霊の日に新宿で琉球解放というアクションをしていたんですが、そこで出会った人から声をかけていただいて企画しました。パレスチナ虐殺に反対する中で、日本が沖縄に対して行っている加害に目を向けなければ意味がないのではないかという思いで活動を始めました。琉球解放のスタンディングの数日後に今回の暴行事件が明らかになって、ずっと隠していたということもわかって、怒っています。とにかく多くの人に知ってもらって、怒ってもらって、聞く。それを12日にしたいと思っています。

ウォリアーズ・ジャパンのキャスリン・ジェーン・フィッシャーさん

40年前に日本に来ました。22年前に米兵からレイプの被害に遭いました。夫が沖縄人、子どもが沖縄人です。私が初めての被害者だと思っていた。こんなにたくさんの被害があるということはあり得ない。

シーツに1945年からの被害を書いてきました。たとえば一番最初、奥さんがレイプされているときに、だんなが「やめてください」って叫んだんですよ。たった6歳で誘拐されてレイプされた子もいるんですよ。

私もオーストラリアに帰ることができなかった。22年間、日米地位協定を見直すよう、沖縄でがんばっています。16条を変えてほしい。米兵も日本の法律を遵守しないといけないんですよ。日本の政府は被害者と加害者、どっちの側に立っているんですか。私たちと一緒の側に立っていません。

透明性が必要。正義が必要。私をレイプした加害者は裁判中に逃げてしまった。私はあきらめずに10年間、ひとりで探した。そしてアメリカで裁判を起こした。お金はいい、一度でいいから罪を認めて欲しかった。2012年に勝訴しました。

変化を促進しないといけない。地位協定と日本の政府の対応を待てません。議員さん、総理、ちゃんと地位協定見直してください。そのために給料をいただいているんですから。外国で、もし何もしなかったら、総理と議員はクビですよ。こんなにたくさんの人が殺されているの。裁判中の被害者もいます。みんなが一緒に闘っていきましょう。