関東大震災から101年となる9月1日、震災後のデマにより官憲や日本人自警団により虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典が東京都墨田区の横網町公園で開かれました。台風の影響により関係者とメディアのみに参加を絞り、約40分間の短縮版で行いました。
都知事、8年連続で追悼文送らず
東京都の小池百合子都知事は知事2年目から8年連続で追悼文を送りませんでした。
生活ニュースコモンズが7月4日の東京都知事選に際して行ったアンケートに小池都知事はこう回答しています。
これまで、東京都知事として、慰霊大法要において、先の関東大震災及び大戦で犠牲になられた全ての方々へ哀悼の意を表してきました。震災による極度の混乱下での事情で犠牲となった方も含め、全ての方々に対し慰霊する気持ちを改めて表すものであり、今後も、犠牲になられた全ての方々に思いを寄せ、行動してまいりたいと考えております。
式典では都知事の姿勢に対し、追悼式典実行委員長で日朝協会東京都連合会会長の宮川泰彦さんから、厳しい指弾がありました。
1960年代以降、関東大震災時に各地で朝鮮人が虐殺されたことが市民の調査で明らかになってきました。
震災50周年の1973年、朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会が結成され、委員11人の中には都議会の会派の幹事長もいました。当時の幅広い市民と都議会の全会派、そして都知事の賛同の下に碑は建立されました。
「知事は過去の歴史から逃げ回るな」
「碑は市民団体が建立したが、東京都に寄贈した。東京都が所有している。それだけじゃなく、碑文にも東京都は主体的にかかわっている」と宮川さん。
碑の由来について、実行委員会は当初「為政者の誤れる策動、また官憲によって流された流言蜚語のため6000人余にのぼる朝鮮人が尊い命を落とした」としていました。東京都は「為政者」と「官憲」という文言を除いてほしいと主張し、碑文から削られたといいます。
「東京都はここに書いてある文言にも責任がある。追悼式典が好きだとか嫌いだとか、あるいは歴史認識上どうかと思うことが仮にあったとしても、都知事が参列するか、追悼の辞を送るのは当然のことなのだ。知事は過去の歴史から逃げ回るのでなくて、きちんと見つめてほしい。同じ過ちを繰り返させない、このような悲しい歴史があったことを語り継いでいくことが、今を生きる私達の責務です」
式典では韓国伝統舞踊家の金順子さんによる鎮魂の舞や、実行委員会による追悼碑への献花がありました。
式典後、宮川さんは「関東大震災という自然災害の犠牲者の慰霊は必要。一方で、震災を生き延びた人の手による流言蜚語、それを信じた人の手によって朝鮮人だからという理由で虐殺された犠牲者の追悼の仕方というのは違うだろう。都知事の対応が歴史的な事実を消し去ることを心配しています。さびしいです」と話しました。
埼玉県の大野元裕知事は8月27日の記者会見で、9月4日にさいたま市内で市民団体が開く朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を出すことを「前向きに検討している」と話し、東京都の温度差が出ています。
「ヘイト、差別、排外主義が命や人格を奪うようなことがあってはならない。知事が追悼文を出さないということが、現在のそういったことに対する警戒心を欠く態度にもつながっていくのではないか」と宮川さん。
「そよ風」も会場を遮蔽して集会
同じ横網町公園内で、朝鮮人虐殺を否定する市民団体「日本女性の会 そよ風」が会場を遮蔽して集会を開きました。警察官によって立ち入りが禁止され、集会の様子をうかがい知ることはできませんが、風にのって「追悼碑の撤去、破壊を」「群馬の次は横網町だ」などの発言も聞こえてきました。
過去のそよ風の9月1日集会での発言をめぐり、都は2019年、2023年の2回にわたり、「ヘイトスピーチがあった」と認定しています。これを受け、大学教員や弁護士ら117人が8月25日、都に対し、再びヘイトスピーチが行われる蓋然性が高い団体に、公園の占用を許可しないよう求める声明を出しましたが、都は許可の方針を変えませんでした。