女性支援新法から中高年女性を排除しないで——。住居確保や経済的困窮など中高年シングル女性の社会的課題に取り組む団体「わくわくシニアシングルズ」が11月12日、厚生労働省に22,835人の署名を添えて要望書を提出しました。
女性支援新法は今年4月に施行。厚生労働省は女性相談支援員を対象とした養成研修の実施を計画しています。そのシラバス(授業計画)に「若年女性」「高齢女性」があるものの、「中年女性」が入っていないことが9月に発覚。さまざまな困難を抱える「中高年女性」を排除しないでほしいと、同団体がインターネット署名に取り組みました。
氷河期世代や元母子世帯 単身女性の高い貧困率
要望書では中年女性について、次のように指摘しています。
「中年女性、なかでも単身女性には、初職から不安定な非正規労働を続けざるを得ず心身の健康を害している氷河期世代や、子どもの独立に従って高い貧困率のまま母子世帯を卒業した女性も含まれています。その意味では女性支援新法の支援対象者に該当する困難を抱えた女性が多くいる世代であります。若年・高齢女性同様、支援の対象にすべき世代です」
その上で、同法の基本方針が「支援に当たっては、多様な困難な問題を抱えた若年世代から子育て世代、中年・高齢世代と、幅広い年齢層の女性それぞれのライフステージに合わせて、各関係機関や民間団体等とも連携し、支援対象者の立場に寄り添った支援を行うことが必要である」と記していることを挙げ、中年女性の排除は基本方針から逸脱している、と指摘しました。
また、高齢女性の研修内容が「男性より高い貧困率」「単身女性の貧困」に触れておらず、介護や認知症問題に限定されていることも問題としています。
こうした背景を記した上で、2点を要望しました。
・女性支援新法の基本方針に沿い、「中年女性」を研修のテーマに入れてください。
・高齢女性の研修を、貧困率が高く、多くの困難に直面する単身高齢女性に目を向けた内容に修正してください。
概論の備考欄に「中年女性の現状」加える
要望書提出後の懇談は1時間に及びました。(取材は冒頭の写真撮影のみ許可)
同席したライターの和田靜香さんによると、厚労省側は「中高年女性に困難・課題がある」ことは認識しつつも、「すでに検討委員会を経てできあがっているシラバスを変更することはできない」「一度、このシラバスでやらせていただきたい」「今から中年女性を加えると混乱する」と繰り返したそうです。交渉の末、シラバスの「女性支援新法概論」の備考欄に「中年女性の置かれている現状」を書き加えるという対応策が示されました。
懇談を終え、わくわくシニアシングルズの大矢さよ子代表は「厚労省は中年女性からの相談はとても多いと言っていた。それならば自ら相談内容を分析し、課題を抽出すべきだと思う」と話しました。今後は、厚生労働委員会に所属する国会議員らに、中年女性が抱える困難について実情を訴えていく方針です。