【転載】The 19th News「トランプ大統領の資金凍結で、DV被害者支援の非営利団体に衝撃」

記者名:
(c) Adobe Stock Photo

この記事はThe 19th Newsが最初に公開したものです。

ジェンダーに基づく暴力被害者を支援している団体は、人命にかかわるサービスの提供に不可欠な連邦政府の助成金を失うことを恐れ、対外向けページを自主的に修正し始めている。

Jasmine Mithani Mel Leonor BarclayThe 19th  2025年2月6日)

The 19th Newsは、女性ジャーナリストたちが、2020年、アメリカのテキサス州・オースティンを拠点に立ち上げた非営利の独立系ニュースサイトです。(生活ニュースコモンズでの関連記事はこちら)女性やLGBTQ+の人たちに向け、日々、ジェンダー視点からニュースを伝えています。
生活ニュースコモンズでは、トランプ政権下で女性やLGBTQ+の人たちの権利がどのような状況に置かれているのかを知るため、The 19th Newsから、記事を随時翻訳して掲載する許可を得ました。The 19th News編集部に心より感謝いたします。

トランプ政権は連邦政府の支出を大統領の政策に合わせようとしている。先週(1月27日 ※生活ニュースコモンズ注記)は、非営利団体の広範囲にわたる助成金や融資の凍結という衝撃的な措置を講じた。ジェンダーに基づく暴力や家庭内暴力(DV)の被害者にサービスを提供する組織のネットワークに衝撃を与えている。

The 19thの取材に応じた 12近くの非営利団体のリーダーたちは、ダイバーシティとインクルージョンを支持し、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々の存在を認め、不法移民を支援する団体への連邦資金の支出を阻止しようとするドナルド・トランプ大統領のたくらみに巻き込まれることを懸念していると述べた。連邦政府による支出凍結により、支援を必要としている人々に不可欠なサービスを提供しようとしていた一部の団体は窮地に追い込まれ、政権はいつでも突然活動支援を打ち切れることが浮き彫りとなった。

ワシントンDCの連邦判事は2月3日、連邦政府の支出差し止めを凍結する命令を出した。一方、多くの団体は自分たちの活動に資金を提供している連邦政府のプログラムへの影響に備えている。その一部は政権による見直しの対象となっている。また、多くの団体がウェブサイトや一般向け資料の積極的な修正を始めていて、ある全国団体は資金確保のため、LGBTQ+のDV被害者向けのリソースのページを削除した。DV被害者を支援する非営利団体の州連合に属するウェブサイトの3分の1が、先週オフラインになった。ある団体の責任者はThe 19thの取材に対し、資金凍結を受け、組織がウエブ上の表現を見直すためにオフラインにしたと語った。

「リストに挙げられた連邦政府から資金提供を受けているすべての組織は、資金援助が危機にさらされるという警告を受けたと感じたに違いない」と、DC家庭内暴力防止連合の事務局長ドーン・ダルトン氏は語った。 

連邦政府の資金凍結を受けて、ホワイトハウス当局者は、「過激で無駄な政府のDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを追求する)プログラム」と「ジェンダーイデオロギーの過激主義」を終わらせることを求める大統領令に反する活動をしている組織について、連邦政府の支出見直しを継続していることを明らかにした。DEI政策、そしてLGBTQ+のアイデンティティに対する保守派の全国的な攻撃は、依然として定義があいまいなまま国内に緊張を招いている。どのような言葉や活動が大統領令に反する可能性があるのか​​を特定するのは難しい。女性や特定の文化グループに焦点を当てるだけで、DEIと見なされるのだろうか? 

ニューヨーク・タイムズ紙が報じた、 行政管理予算局の約2,600のプログラムに関するメモによると、政権が現在行っている見直しには、DVやジェンダーに基づく暴力に取り組む団体を支援するいくつかの助成金プログラムが含まれている。

リストにあるのは、司法省の女性に対する暴力対策局からの助成金の対象で、LGBTQ+や障害者など十分な支援を受けていない人々に焦点を当てた助成金プログラム1件、特定の文化グループにサービスを提供する非営利団体に焦点を当てたプログラム2件、女性に対する暴力と闘うアメリカ先住民の各部族政府向けの助成金プログラム1件などである。このレビューには、保健福祉省(HHS)のDV防止部門のプログラムもいくつか含まれている。 

この調査では、助成金が「強制退去の対象または不法滞在の外国人や移民」を支援するために使用されているかどうか、また、すべての「違法な」ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、アクセシビリティのプログラム、「ジェンダーの思想を促進する」プログラム、および「何らかの形で中絶を促進または支援する」プログラムを終わらせるという大統領令に助成金が「関与」しているかどうかなど、各助成金プログラムに関する一連の質問に答えることが政府機関に求められている。 

審査中の司法省の補助金は4億8000万ドル、保健福祉省のプログラムは2億6100万ドルにのぼる。DV被害者支援・DV防止団体は住宅都市開発省など他の資金源から資金を受け取ることができるが、これも審査中の可能性がある。司法省も保健福祉省も取材に対しノーコメントだった。

「私たちの団体の目的は、被害者が暴力から逃れるのを助けることです。これは人権の問題です。私たちのコミュニティや社会が支援しているのに、政府が支援を拒否するというのは本当に悲痛なことです」と、南アジア系コミュニティのDVと闘う非営利団体「アワズ・サンアントニオ」のジニー・スー事務局長は語った。「正義を誇り、犯罪行為に対しては罰を追求する政府にとって、結果的に暴力が続く状況をうかつにも作り出す可能性があるというのは、本当に許しがたいことです。」

凍結措置は、ジェンダーに基づく暴力に取り組む非営利団体に深刻な影響を及ぼした。こうした団体は連邦政府の資金に大きく依存していることが多い。全国の職員は、大統領令の文言が、自分たちの活動、特に特定の文化を持つ集団におけるDV被害者支援対策の一環として団体に支給される助成金を、直接、標的にしていると感じていた。

いくつかの非営利団体は、連邦政府のポータルサイトに補助金申請を提出したり、資金を引き出したりすることが 丸1日できなかった。一時的な凍結以来、多くの団体は支出した資金に対する補助が受けられないのではないかと心配している。また、承認された資金が最近の大統領令に抵触する可能性があると判断された場合、予算通りに執行できるかどうかも不明だ。

「自分たちが行っていたプロジェクトや活動を継続できるかどうかわからなかった。請求書を発行できるのか?」

女性器切除(FGM/C)撲滅に取り組む全国的非営利団体「サヒヨ」の共同設立者で事務局長のマリヤ・タヘル氏は語る。サヒヨの活動の多くは連邦政府の資金援助を受けている。同団体は、秋に期限を迎えるアジア系アメリカ人、ハワイ先住民、太平洋諸島系住民のジェンダーに基づく暴力サバイバーを支援するための保健福祉省助成金から1320万ドルを受けている。昨年、サヒヨと関連団体は、人権侵害とみなされるFGM/Cの慣行に関する研修のため、米政府の女性に対する暴力対策局から30万ドルの助成金を受けた。

タヘル氏は、これらの資金がなければ、FGM/Cに関する医療従事者の教育からサバイバー支援グループの開催まで、さまざまなプログラムが危険にさらされる可能性があると述べた。女性に対する暴力対策局の担当者は、サヒヨの助成金がどのような影響を受けるかについては何も知らなかった。

「アワズ・サンアントニオ」の事務局長スー氏の仕事は、保健福祉省の助成金のおかげで成り立っている。彼女は 同団体で最初の有給従業員だ。助成金は 9 月に期限切れとなるため、行政側が少しでも遅れると、残りの助成金が受けられなくなるのではないかと心配している。

「私がやろうとしているのは、助成金のルールに従うと同時に、助成金をできるだけ多く獲得することです」とスー氏。「どれだけ時間があるのか​​分かりませんが、私たちが定めた予算のガイドラインを守り、ルールに従い、すべてを文書化しつつ、できるだけ迅速に行動するよう努めています」

スー氏は、アワズのエグゼクティブ・ディレクターに就任後、女性に対する暴力対策局からの特定の文化背景を持つコミュニティへの支援を対象とした40 万ドルの助成金に応募し、採択された。特定のコミュニティに根ざした団体は、暴力に関する社会規範に介入したり、多言語でサービスを提供したり、宗教や文化の慣習に沿った食料や避難所などの具体的なリソースを提供したりするのに、より適した体制が整っていることが多い。採択は、地元のニュースでも取り上げられた。メディアの注目により、アワズへの電話相談が増えた。 

しかし、助成金の最終予算は承認されておらず、スー氏は資金をまったく受け取れないのではないかと心配している。「コミュニティとサバイバーへの支援額は、文字通りうなぎのぼりでした」とスーさんは言う。「そのため、今回の資金凍結と助成金の将来に関する不確実性は、私たちの活動に大きな影を落としています」

一部の非営利団体は、すでに支出した資金の払い戻しを受けることについても懸念している。 

全国で多言語ヘルプラインを運営するジェンダー平等の非営利団体「サキ・フォー・サウス・アジアン・サバイバーズ」の事務局長カビタ・メーラ氏はメールでこうコメントした。 

「今年度の残り期間で、連邦政府からの補助金194万ドルを使う予定だった。この資金がなければ被害者のシェルター、カウンセリング、サバイバー支援を提供する私たちの活動は大きなリスクにさらされる」

多くの団体はトランプ大統領就任後に予算削減を予想していたが、現時点では連邦政府の資金凍結を補うには支援が不十分だ。

メーラ氏は声明で、「民間慈善団体は慢性的に女性や少女に資金を提供していない」と述べた。1994年に女性に対する暴力防止法が可決され、DV被害者支援組織に資金が提供されるようになった。いまも多くの活動が連邦政府からの資金だのみだ。エクイタブル・ギビング・ラボの調査では、米国の慈善寄付のうち、対象が女性や少女に向けられているのは2%未満であることがわかっている。メーラ氏はまた、ジェンダーに基づく暴力に焦点を当てた非営利団体が資金調達面において直面する偏見、例えば長期的には影響が限られているという見方についても指摘している。

連邦政府の資金へのアクセスが制限されるのではないかという懸念から、一部の団体は、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンに関する取り組み、そしてLGBTQ+の人々に関する政権の見解に沿うよう、自らのホームページの綱領を先回りして改訂し始めた。

DV被害者のための全国ホットラインは最近、「LGBTQ+コミュニティにおける虐待」というタイトルのウェブページを削除した。ウェブページには以前、LGBTQ+の人々が異性愛者の人々と同じ割合で同様の方法で虐待を受けている一方で、性表現やセクシュアリティに対する偏見に基づく特定の虐待があり、支援を受ける際の障壁に直面する可能性があると書かれていた。さらに、虐待の具体的な形態についても説明されていた。若者間のデートDVに焦点を当てたホットラインのプロジェクト「Love is Respect」のLGBTQ+の人々のためのリソースは、サイトから削除された。 

ホットライン自体は現在も機能しており、電話、テキスト、オンラインチャットを通じて米国内のあらゆる人にサービスを提供し続けている。

ホットラインの最高責任者クリスタル・ジャスティス氏は、同組織は「HHSからの指導に備えて」ウェブサイトのコンテンツを見直していると述べた。 

「私たちは、どのような指示が出されるかを予測し、ウェブサイトのコンテンツを吟味している」とジャスティス氏は述べた。「場合によっては、チームがコンテンツ自体に、あるいはサイト上のコンテンツ設置場所に何らかの変更を加えている可能性がある」 

また、先週、DV防止と支援に取り組む約 24 の団体の Web サイトが、基本的なホットライン情報のみに削除されたり、完全に停止されたりした。いくつかのサイトには、「定期メンテナンスのため停止中」という注意書きがあった。各団体がこのような措置を取った理由は不明だが、インターネット アーカイブの記録によると、これらの変更は連邦政府の資金凍結後に行われたものだった。 

ほとんどの団体は、ウェブサイトの変更に関するコメント要請に返答せず、公式発表も拒否した。アクセス障害が見られたサイトには、少なくとも 16 の州を拠点とする「家庭内暴力防止連合」のウェブページが含まれていた。これらの連合は、地元の非営利サービス提供者に研修や技術指導を提供している。オンラインは重要な教育ツールであり、それが失われると、虐待を受けている人々が支援を得ることがさらに困難になる可能性がある。

ワシントンDCで活動するDC家庭内暴力防止連合(DCCADV)の事務局長ダルトン氏は、連邦政府の資金凍結を受けて、同連合のサイトも見直しのために停止していることを認めた。

ダルトン氏は、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、帰属意識は社会福祉活動の柱であると付け加え、政権の反DEIの取り組みに従うことは、女性に対する暴力防止法の反差別要件に抵触する可能性があると述べた。また、グループはウェブサイトの文言を編集し、「サバイバーが名乗り出てサービスを受ける際に烙印を押されるようなことがないようにする」と同時に、「連邦政府の助成金担当者から下される新たな期待に沿う」形でそれを伝えると述べた。

ダルトン氏は、同団体のウェブサイトの見直しは、政府や、州ネットワークの全国統括団体である全米家庭内暴力撲滅ネットワークからの具体的な指示によるものではない、とした。同ネットワークのウェブサイトには「定期メンテナンス中」と書かれている。各州を拠点とするネットワークのリーダーたちは、状況の変化について連絡を取り合っているが、ダルトン氏は「どの団体も、どのような行動をとることが正しいことなのか、独自の判断を下している」と述べた。 

ダルトン氏は、ウェブサイトの見直しによる影響は、資金源が枯渇した場合に起こることと比べれば最小限にとどまるだろうと予想している。「今後、状況がどうなるのかを懸念するのは(非営利団体として)当然だと思います」とダルトン氏は語った。 

サイト閉鎖の間、ワシントンDC でDVに関する支援先を探している人には、DCCADV の ウェブサイトから地元のホットラインまたはグループの固定電話に転送されるという。

「今日ちょうどその話をしていたのですが、アナログシステムに切り替えるような感じです」とダルトン氏は言う。DCCADVは、主にコミュニティ内の紹介を通じて、人々を適切な支援に導いている。電話番号は、ほとんど何もない状態のウェブサイトのランディングページに掲載されている。「誰かがオフィスに電話をかけてきたら、ただ別の番号を案内するだけです」。

DVの被害者であるLGBTQ+、移民、あるいは特定の支援を受けられない可能性のある他のグループにとって、どのような影響があるかはまだ明確ではない。

ワシントンD.C. のユダヤ人コミュニティとの活動で連邦政府の資金援助を受けている、パートナーによる暴力被害者の支援団体 JCADA の事務局長アマンダ・カッツ氏は、「十分な支援のない人々」という名称の助成金プログラムの運命について、次の連邦政府の出方を待っているとした。同プログラムを終了すれば、「最も周縁化された人々に手を差し伸べる私たちの能力が失われる」とカッツ氏は述べた。 

JCADA のウェブサイトは、「性自認、ジェンダー表現、性的指向、移民ステータス」など、アイデンティティに関係なく被害者やサバイバーへの支援を提供すると約束しており、運営を続ける方針だ。連邦政府からの資金は、JCADA の年間予算 210 万ドルのうち 170 万ドルに上る。 

「今いる場所に踏みとどまる必要があると思います。私たちは真実を伝えているだけです」とカッツ氏は言う。そして、「この団体は、安心して身を寄せることのできる場所だと人々に知らせているのです」と付け加えた。

「いまは、連邦政府の資金助成者からの直接の指示を待っている」

感想やご意見を書いてシェアしてください!

記事を紹介する
  • X
  • Facebook
  • Threads
  • Bluesky