放送局の女性役員を3割に 民放労連などが2万5000人の署名携え、要望

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放送局はオールドボーイズクラブから脱却を!

 元タレントの中居正広氏からフジテレビで働いていた女性への性加害疑惑と、それを受けた同局の記者会見で明らかになったのは、放送局の意思決定層が高齢男性ばかりという同質性の高さでした。放送局のみならずメディア全体がジェンダー不平等の状況にあります。この状況を改善しようと日本民間放送労働組合連合会(民放労連)と日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が3月6日〜17日にかけ、フジテレビをはじめ、在京キー局5局と民放連を訪れ、「女性役員を3割に!」と求める要望書と2万5000人分の署名を手渡しました。

女性役員の割合 未だ10.1%

 署名は「今しかない!メディアは“オールドボーイズクラブ”からの脱却を!はじめの一歩として女性役員を3割にすることを求めます」のタイトルで、オンラインで2月中に募りました。民放労連は2020年12月に、メディアの意思決定層の女性割合を30%以上とするよう民放連や新聞協会に要請しました。しかし、2023年の民放労連の調査では、民放キー局の女性役員割合は平均10.1%。全国のテレビ局の63.8%、ラジオ局の72.4%で女性役員がゼロの状態が続いています。

肉体的心理的に安心して働ける状況に

 フジテレビは11日に訪問。吉田優子総務部長が対応しました。会談は冒頭のみ公開。会談後、同社で記者の取材に応じた民放労連中央執行委員長の岸田花子さんは「(要望は)概ね肯定的に受け止めてくれた。女性3割を目指すにはどうしたらいいかということについて具体的に議論をさせていただいた。フジテレビが変わるという決意を持っていることが伺えた」と話しました。

 性加害疑惑を受けて、フジテレビにどのように変わってほしいか、と聞かれ、岸田さんは「社員をはじめ、出演者、関連会社が安心して働けるようにしてほしい。肉体的心理的に安心して働ける状況にあるかを見直して、正すべきところを正していかないといいコンテンツが出せない、とお伝えした」と話しました。

画一的な意思決定層 コンテンツにも影響

 また、役員3割に向けての具体的な方策としては「アファーマティブ・アクション」を挙げました。

「優秀ではない女性が管理職に就くことになるという議論もあるでしょうが、今意思決定層にいる男性は全員優秀かということを同じように問いたい。女性が優秀じゃないと、女性はだめだという結論に持って行かれがちだが、それは正しくはないんじゃないか」(岸田さん)

岸田花子さん=東京都内

 フジテレビ側からの応答について、民放労連放送スタッフユニオン書記長の岩崎貞明さんは「フジテレビ側は様々な人との対話を通じて変革につなげたい、と考えているようだ。キー局と系列局の関係、放送局と制作会社の関係など、ビジネスと人権の観点から安心して働ける環境を整備するのが放送局の役割だということで意見交換した」と話しました。

 また、高齢男性という同質性の高い意思決定層の問題点として、岸田さんは「意思決定層が画一的であると、弱者やマイノリティーの立場のニュースが取り上げられにくい傾向が生まれる。ドラマ、バラエティの分野でもステレオタイプや差別的な表現につながりやすい」と指摘しました。

民放連「数値目標の設定になじまない」

 同じ日に、民放連にも要望書を提出しました。 岩崎さんによると、民放連からは「私たちは各社の代表者の集まりなので、各社の女性比率が高くならないと女性役員比率が上がらない。(女性3割の)数値目標の設定になじまない」との回答があったそうです。