私が私でいられる社会を望む 参政党代表の第一声を聞いて

記者名:
コモンズのアイコンである黄色い鳥は、危機を知らせる「炭鉱のカナリア」です

私が私のままでいられなくなる政策には、いつだってNOを言いたい。

【お断り】この記事には、女性やセクシュアル・マイノリティ、海外にルーツのある人などの尊厳と人権を傷つける表現が多数含まれます。つらい気持ちになった際はすぐに読むのを中断し、ご自身をケアしてください。どうか、ご無理のない範囲で読み進めてください。

 私は以前、地方の新聞社で働いていました。「男性型」の職場でうまく生き抜くことができず、2021年秋に休職しました。

 逃げるように休職した当時の感覚は、一言でいうと「自分が自分ではなくなった」というものでした。「お前はお前のままではだめだ」という圧を職場や社会から日々受け取り、私自身も「自分が変わらなければだめなのだ」と思いこみ、必死で「私」を改造しようとしました。最後には「私はいったい誰なんだろう」という感覚になっていました。

 あの時のトラウマが、よみがえるような演説でした。7月3日、参政党の神谷宗幣代表による参議院議員選挙の第一声です。一部を抜粋します。

① 私たちのキャッチコピーは、日本人ファーストです(略)。外国人の方が来られています。観光で来られるのは別に構わないけれども、安い労働力だと言って、どんどんどんどんの野放図に外国の方を入れていったら、結局、日本人の賃金が上がらない。いい仕事に就けなかった外国人の方はね、資格を取ってきても、どっか逃げちゃうわけですね。そういった方が、集団をつくって、万引きとかをやって、大きな犯罪が生まれています。まだ、万引きぐらいだったら、というと、語弊があるかもしれないけれども、そういった人たちがね、違法な薬物とかね、売り出したら、日本の治安が悪くなるでしょう。窃盗やね、強盗が始まったら、安心して暮らせないでしょう。そういった治安の悪化を、我々は防ぎたい。だから、ここにしっかりと焦点を当て、警察の皆さんや行政の皆さんにね、人員を配置することによって、治安維持を図る。これも、われわれがやっていきたいことです

② 参政党は、少子化にも、ものすごく力を入れていきますね。今まで間違えたんですよ、男女共同参画とか。もちろん、女性の社会進出はいいことです。どんどん働いてもらえば、結構。けれども、子どもを産めるのも若い女性しかいないわけですよ。ね! これ言うと、差別だという人がいますけど、違います。現実です。いいですか?男性や申し訳ないけど、高齢の女性は子供が産めない。だから、日本の人口を維持していこうと思ったら、若い女性にね、子供を産みたいなとか、子供を産んだ方が安心して暮らせるなという社会状況を作らないといけないのに、働け、働けってやりすぎちゃったわけですよ。やりすぎ。だから、少しバランスをとって、いや、大学や高校出たら働いてもいい、働く方がいてもいいし。で、家庭に入って子供育てるのもいいですよと。その代わり、子育てだけだったら、収入がなくなるから月10万円、子供1人当たり月10万円の教育給付金を参政党は渡したいというふうに考えています。子供1人だから、0歳から15歳1人1800万円、2人いたら3600万円ね。これぐらいあれば、パートに出るよりもね、事務でアルバイトするよりもいいじゃないですか。だって、子供を産み育てるって、ものすごい労力がかかるし、国の未来をつくる仕事なんですよ。そういった女性や子育てをする方々、これは男性も含めて応援しないと国が滅ぶ。経済合理性や、個人の自由だけを求めていたら、社会が持ちません。だから、そこをしっかりとバランスを取って、日本人の暮らしを守る日本人ファーストです

③ 選択的夫婦別姓とか、LGBTとか、そういうイデオロギーの絡んだ共産党や立憲民主党の政策にもノーです

 端的に①は分断をあおる人種差別、排斥です。

 ②も人権侵害です。「若い女性」は、子どもを産み育てるためにいるのではありませんし、もう二度と「お国」のために子どもを産んだりしません。「私の体は私のもの」であり、あなたのものでも、国のものでもありません。

 ③選択的夫婦別姓を求める人もLGBT(同性婚のことを言いたいのでしょうか)の当事者も、イデオロギーではなく存在しています。ただ日々が暮らしやすくなるよう法制化を訴えているだけのことです。

 神谷代表の演説は、女性やマイノリティ、さまざまな人が長い時をかけて積み上げてきた権利を破壊する乱暴な考え方に満ちています。こうして抜粋すること自体、迷いがあります。これらの言葉の一つ一つが当事者を傷つけるからです。

 この国には、たくさんの「私」がいます。その一人一人に、誰にも侵すことのできない人権があります。それを「この国のため」「国民のため」と言って、堂々とはばかることなく、踏みにじっている。私の目に神谷代表の演説はそう映りました。

 実は今日、小学生の息子が体調を崩して学校を休んでいます。布団に寝ている彼の横で、私はYouTubeに上がっていた神谷代表の演説を音量を上げて聴きながら、この原稿を書いています。

 演説が耳に入ったらしい息子が、私に話しかけてきました。「何なの今の、気持ち悪い。若い女の人は結婚して子どもを産んでくださいって、女の人に働け働け言い過ぎたとかって、めっちゃ変。小学生の俺から見ても変」 

 「中立公正」な選挙報道とは何か。選挙期間に入ったら批判的な言説は控えなければいけないのか。ずっと自問してきた一人の記者として、思いました。「私は何を怖がっていたんだろう?」

 ここまで参政党の神谷代表の第一声について書きましたが、人権の視点に立ったとき、厳しいまなざしを向けるべき政党の公約は、これだけではありません。排外主義を堂々と公約に掲げている政党は他にもあります。

 ささいなことだと軽視していると、私たちの社会はあっという間に「いつか来た道」へ戻っていきます。

 私が私のままでいられなくなる――というざわつきを覚える政策には、選挙期間中であってもノーを言い続けたいと思っています。

【参考資料】
ANNnewsCH【参院選2025】参政党・神谷宗幣代表 第一声【詳細版】(2025年7月3日)https://www.youtube.com/watch?v=Dn5oj3OYXrE

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