「罪は非常に軽いと感じた」 米兵運転の車による重傷事故に禁固10月、執行猶予3年の判決 横浜地裁横須賀支部

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米兵運転の車による重大事故でまた執行猶予判決。損害賠償が困難になるおそれも

昨年2月、横須賀市深田台で横断歩道を渡っていた当時87歳の男性が、米軍関係者の運転する乗用車にはねられた事故で、横浜地裁横須賀支部(片多康裁判長)は1月12日、乗用車を運転していた米海軍横須賀基地所属のチャーリー・シソン・フリオ被告(45)に禁固10月、執行猶予3年(求刑禁固10月)の判決を言い渡しました。米軍は軍関係者に日本の裁判で執行猶予判決が出ると間もなく、損害賠償などをしないまま本国に帰国させる、または他国に転属させる方針をとっています。本件でも被害者や弁護士は執行猶予をつけないよう求めていましたが、かないませんでした。

事故は昨年2月11日午前11時10分ごろに発生。被告が運転する普通乗用車は交差点で右折する際、一時停止もせず漫然と時速10kmで車を進行させ、右折先の横断歩道を通行中の男性に気づかず、車の前部に衝突して相手を転倒させ、くも膜下出血、左恥骨、左腓骨骨折などで入院加療106日、全治7カ月の大けがを負わせました。

判決では「被告が被害者に負わせた障害の程度は重い」「交差点角のブロック塀や日光で見通しが良好ではなかったが、被告は一時停止などの措置を取り、注意を払うことはできた。しかしそうはしなかった」とし、「禁固刑を科すべき事案であることは間違いない」としました。その一方で、被告が「反省の意を示している」ことなどを考慮し、執行猶予をつけました。

人をはねた後、さらに35m走行

判決の言い渡しの後、被害者の男性と代理人を務める呉東正彦弁護士が、同市内で記者会見を開きました。

呉東弁護士は「過失も結果も重大で、本人が反省しているかわからない。まだ示談も成立していないとして、重大な判決を求めて来たが、執行猶予が付いてしまったことは残念だ」と話しました。

損害賠償についても通院日と交通費の一部しか弁済されておらず、本格的な補償交渉はこれからだといいます。

裁判では

1)車が男性に衝突してから、さらに35mも動いて止まっている。

2)一時停止したかどうかについてなど、供述が警察と検察で変遷している。

3)事故の後も被告に行動制限が課されず、運転許可証も取り上げられなかった。基地の中はもちろん、基地の外でも運転を続けていた。

などの事実も明らかになりました。

被害者の男性は「米軍関係者の罪は非常に軽いとこの裁判を通じて感じた。日本人対日本人であればこんなに軽い処罰にはならなかった。私は事故を受けた時の記憶がなくなり細かいことはわからないが、はねられてから35mも行ってから止まったというのは、時速10kmより速かったのではないかと思う。判決の中でもその点は軽く流されていた気がする」と語りました。

記者会見に出席した被害者の男性=横須賀市内

また、けがについては「頭も強く打っている。このままでは将来認知症になる可能性も高いと言われた。頭の中は後遺症が出るかどうか短期ではわからず不安がある」。週3回妻が付き添って通院しているといい、「妻も年を取っているので、つらかったと思う」と話しました。

米兵による重大交通事故 警察が逮捕せず

横須賀市内では2024年9月から2025年4月にかけ、米兵による重大交通事故が3件相次ぎました。いずれも右折事故で、背景には日本の交通法規や道路事情について十分に教育を受けないまま、米軍が発行する運転許可証のみで公道を走っているという事情があります。また日米地位協定により米軍関係者には日本の行政処分が科されないため、事故を起こしても免許停止や免許取消の扱いにはなりません。

日米地位協定では現行犯や日本の警察が先に現場に到着した時は、逮捕ができるとしています。しかし、このケースでは横須賀署が先に現着したにもかかわらず、被告の「(米軍の)憲兵隊を呼んでほしい」という要請に応じて憲兵隊を呼び、逮捕せずに身柄を米軍側に引き渡しています。

呉東弁護士は「事故は3件ともすべて逮捕していない。日本の警察と米軍の間になれ合いがあるのではないかと思う」と話しました。

被害者の男性は「日本国内でのことですから、事故の扱いがベース(基地)オンリーになってしまうということは非常に遺憾です。ベースの中は米国の法律でも、基地の外では厳格に日本の法律を守ってほしいし、それに合わせた量刑であってほしい。米兵が謝罪をすれば執行猶予がつくというのではよくないと思います。損害賠償についても米兵が最後まで責任を持ってほしい。執行猶予がついた被告は他の国に配転になる可能性が強い。そうなった場合、賠償がかなり難しくなるのではないか」と懸念を示しました。

執行猶予がつき帰国すると、損害賠償が困難に

2024年9月に同市小川町で発生した米兵運転の自動車による死亡事故は執行猶予が付き、米兵は帰国。損害賠償を求める民事訴訟は居所不明で訴状の送達ができない事態に陥っています。

このため、2025年4月に同市平成町で起きた米兵運転の車による死亡事故では、呉東弁護士らは刑事訴訟の起訴に先だって民事訴訟を提起しました。遺族ら7人が米兵を被告として12月1日に計1億2000万円の損害賠償請求訴訟を提起。第1回口頭弁論は2月13日横浜地裁横須賀支部で開かれる予定です。米兵は12月24日に過失運転致死罪で横須賀地検に起訴されました。

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