〈旧統一教会被害は終わっていない〉⑥旧統一教会 組織による人権侵害を問う宗教2世訴訟 初の口頭弁論開かれる

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記者会見を開いた原告(左)と弁護団。右から、久保内浩嗣弁護士、村越進団長、阿部克臣弁護士=東京、2026年1月28日、撮影:岡本有佳

旧統一教会2世たちがどんな気持ちで統一教会を訴えたのか? とにかく一度聞いてみてください

1月28日、旧統一教会信者である親を介して教団から虐待を受け、人権を侵害され続けてきたとして、「宗教2世」の原告8人が、教団を相手どり、計約3億2300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁(神野泰一裁判長)で開かれました。

原告になったきっかけは山上氏の安倍元首相銃撃事件

原告の一人、野浪行彦さん。真の意味での2世問題は長年にわたって平然と許されてきたことだと語った=東京、2026年1月28日、撮影:岡本有佳

原告側は原告一人、代理人は全国統一教会被害対策弁護団(363人)。この日出廷した弁護士は16人、一方、被告(旧統一教会)側は誰も出席しませんでした。

原告の一人、野浪行彦さん(30代)が意見陳述をしました。自らを「祝福二世」という「統一教会による集団生殖によって組織的に生みだされた存在」であり、語弊を恐れずに言えば「化け物」だという言葉から始まった意見陳述は、二世たちが抱える問題の深さを伝えるものでした。

野浪さんが原告になったきっかけが山上徹也氏による安倍晋三元首相銃撃事件でした。

「言語に絶するショックを受けました。それから、何事もなかったかのように自分という存在から目をそむけて生きることができなくなってしまいました」と語りました。

野浪さんは、真の意味での二世問題は、単に子どもたちの命の尊厳が冒涜されてきただけではなく、それが長年にわたって平然と許されてきたということだと指摘しました。

「いま司法の責任も問われています」という野浪さんの最後の言葉は本当に重いものでした。

この訴訟が10年前に提起されていれば

原告代理人の久保内浩嗣弁護士も意見陳述をしました。久保内弁護士は、冒頭で「この訴訟は遅くても10年前に提起されていなければなりませんでした」とし、提起されていれば、安倍元首相銃撃事件は起きていなかったと述べました。2012年に開かれた集会で、ある祝福二世の女性が「統一教会を許せません。文鮮明に至ってはいつ暗殺してやろうかと冗談半分で考えています」と言ったことを自分たち弁護団の多くが聞いていましたが、「二世問題はカウンセリング問題であって法律問題ではない、訴訟は難しい、そう決めつけてしまいました」。久保内弁護士はこれは大きな誤りだったと認め、二世問題は、組織による人権侵害という明確な法律問題だと語りました。

また、「被害期間が数十年に及び、人格形成そのものを破壊し、現在もなお回復していないという、長期・累積・人生基盤破壊型の極めて特異な被害」であり、統一教会による人格破壊の評価として一人当たり3000万円という慰謝料額は低額すぎることはあっても高額すぎるということはないと陳述しました。

申立て続く 今後も拡大する二世訴訟

裁判の後、司法記者クラブで会見が開かれました。

弁護団事務局次長を務める阿部克臣弁護士は、二世訴訟の意義として、①旧統一教会の信者を親に持つ二世が旧統一教会を訴えた点、②旧統一教会の故意による不法行為(人権侵害、虐待)を主張している点などを挙げました。

二世被害については、昨年12月18日にさらに9人が提訴しており、第一次の8人と審理が併合される予定です。
被害対策弁護団には現在1029件の相談が寄せられています。そのうち二世から被害の申立ても続いており、今後、第3次二世訴訟を提起する見通しだということです。

ここでは野浪行彦さんの意見陳述をご本人の許可を得て全文紹介します。(仮名遣い、句読点など、一部を修正しています)

意見陳述書
2026年1月28日
原告:野浪行彦

私はいわゆる統一教会の二世です。二世といってもいくつかの類型に分かれますが、私の場合は「祝福二世」と呼ばれる立場の者です。

祝福二世とは何でしょうか。語弊を恐れずにいえば「化け物」です。教会では神の子とも呼ばれてきましたが、それはつまり、普通の人間の子どもではないということ、普通の人間として生きることを許された存在ではない、ということです。実際、祝福二世は、あまりにも非人道的な形、命を愚弄するような形で、生を受けています。

祝福二世は、統一教会による集団生殖によって組織的に生みだされた存在です。私にも戸籍上の父と母がいますが、二人は埼玉県の山奥にある工場で家畜をつがわせるように結婚させられました。そして、教会に命じられるまま、数祖の写真を飾った祭壇の前で所定の体位のセックスをさせられました。これはすでにそれ自体でも基本的人権の侵害にあたります。さらにその結果、一種の二次被害として生まれついてしまったのが祝福二世です。

祝福二世には、生まれつき剥奪されているものがあります。それは、ひとりの人間としての尊厳です。あるいは、人格といってもいいかもしれません。それは、人間が人間として人間らしく生きるための最低条件です。

たとえば、私が生まれたとき、出生届がすぐに提出されることはありませんでした。私にはまだ名前がなかったからです。産みの親には子どもに名前をつけるという発想がありませんでした。統一教会が私の名付け親になることになっていたからです。私の名前は教会の家庭局というところがつけました。

産みの親は、教会から私の名前を授かると「奉献式」というものを行いました。これは祝福二世を神の子として組織に捧げる生贄の儀式です。そこで二人は、自分たちは本当の親ではないということを神に誓わされました。そうして私は生まれて早々、「真(まこと)の御父様」と呼ばれる教祖の子ども、教会という大家族の子どもとしての人格を強いられることになりました。それはつまり、人間の親を持つこと、人間らしい親子関係を持つことが許されなかったということです。

お前は普通の人間ではない、お前は神の血を引いている、と何度となく吹きこまれたのを思い出すたび、いまも胸が張り裂けるような気持ちになります。神の子というと、一見優遇されているようにも聞こえますが、それは完全な誤解です。神の子とされたからこそ、つまり普通の人間ではないとされたからこそ、ありとあらゆる人権侵害が許されました。これは典型的な血統差別です。

差別は人間の命の尊厳を深く取りかえしのつかない形で傷つけるものであり、それ自体で決して見過ごされてはならないものです。しかし、さらにその上、この血統差別の具体的なあらわれとして様々な宗教虐待が行われてきました。

まずは、育児放棄です。教会ではつねに家事や育児よりも信者としての活動が優先されました。一世信者が活動に励めば励むほど、二世は天の加護を受けると考えられていました。その結果、私はだれからもまともに顧みられない子ども時代を過ごすことになりました。私はゴミ屋敷同然の家で毎日のようにカップ麺を食べて暮らしていました。40日に及ぶ教会の行事に学校を休んでまで連れていかれたこともありました。私は精神に不調をきたし、高校に通うこともできませんでした。今になって思えば、そのときにはすでに複雑性PTSDを患っていたのかもしれません。

また、私は神の子としての血統差別を受けるなかで、交際の自由や結婚の自由、信数の自由といった自由権も侵害されてきました。神の血を引いている以上、私の体は自分の好きにしていいものではなく、あくまで神の所有物だとされたのです。特に神の子としての純血だけは、なんとしてでも死守しなければならないと繰りかえし吹きこまれました。そもそも統一教会がなければお前は存在していない。だからこそ、神のために生きる人生を送らなければならない、とも聞かされました。

私は幼いころから、戸籍上の父母に対して「こいつらを殺したい」と天にも祈るような思いを抱きつづけてきました。この殺意だけはいまも折にふれて胸の底からこみあげてきます。「自分はいったい何者なのだろう」といまも自問せずにはいられません。集団生殖をとおして組織的に生みだされ、命の尊厳を徹底的に愚弄されたということ。本当の親と呼べるような存在、人間のぬくもりを持った存在が自分の人生から、はじめから奪われていたということ。それが打ち消しがたい事実として私を苦しめつづけています。

私はこれまでの人生において一度もひとりの人間としてまともに胸を張って生きることができませんでした。つねに自分の身元に関して嘘をつきつづけているような負い目を背負って生きてきました。血統差別のことをだれに話しても助けてもらえないことはわかりきっていました。また、教会が政治的な庇護を受けながら組織的な違法行為を行っているということ、国が決して自分の味方になってくれないということも理解していました。

私は二十代のときに日本を出て、フランスで暮らしはじめました。それは私の人生のなかでは唯一幸運なことでした。フランスでは陰湿な血統差別からも解放され、自分の身元を隠しているという意識も希薄になりました。そこではじめて、それまでとは違う新しい自分の人格を生きることができたのだと思います。やがて結婚もして、ささやかな生活を送っていました。しかし、今になってふりかえると、私はただそうやって差別の深刻な被害の現実から目を背けていただけなのでしょう。それは非常に無責任で不誠実なことでした。

私自身が見て見ぬふりをしていただけで、日本には家や国から逃げることのできない二世がたくさんいました。そのうちのひとりが山上徹也さんでした。山上さんは必死で孤軍奮闘するようにして家を守ろうとしていました。しかし、やがて孤独と絶望を深め、自殺したお兄さんの仇をとるようにして、自力救済に打って出ました。それはちょうど、私の妻の妊娠がわかって間もないときでした。私は日本で起きた事件のことを知り、言語に絶するショックを受けました。それから、何事もなかったかのように自分という存在から目をそむけて生きることができなくなってしまいました。

山上徹也さんは、私と同じ統一教会の二世にあたります。だれにも助けてもらえない孤独のなかで、絶望を生き抜いてきました。その人がただひとり人生を代償にするような責任を取らされているということ、それ以外のどの関係者も二世問題への責任を取ろうとしないということ。それを黙って見過ごすことが私にはどうしてもできませんでした。統一教会の教義の結晶のような形で生みだされた存在として、自分自身にもとるべき責任があります。私はそのために日本に帰ってきました。

ここでの私の願いはただひとつです。統一教会をはじめとする二世問題の関係者が、みずからの責任を直視するということです。二世問題というのは、単に子どもたちの命の尊厳が冒涜されてきたというだけのことではありません。そうではなく、それが長年にわたって平然と許されてきたということが、真の意味での二世問題です。

だからこそ、いま司法の責任も問われています。巨悪あり、法これを裁けず、と山上徹也さんは書き残しています。山上事件は司法への絶望の果ての殺人でした。そのようなことが二度と繰り返されないためにも、本裁判をとおしてこの国が法治国家を名乗るにふさわしいだけの良心が示されることを切に願っています。

【電話相談】
全国統一教会被害対策弁護団
03-6261-6653
10時30分から~15時30分(月~金)
ホームページからメールでの相談もできる。

全国霊感商法対策弁護士連絡会
相談電話:火曜070-8975-3553
     木曜070-8993-6734
相談時間:11:00~16:00
reikan@mx7.mesh.ne.jp

宗教2世ホットライン
「今」助けを必要としている2世たちへ。悩んでいる2世を応援したい2世がボランティアで記事を投稿したり、当事者が気持ちや経験を伝える情報共有サイト。

連載は続きます。



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