トマホーク配備の撤回を 横須賀、舞鶴、呉、佐世保の旧軍港4市が共同声明

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横須賀、舞鶴、呉、長崎……戦時中に軍港だった4市がトマホークの配備に反対する共同声明を出したよ

自衛隊イージス艦に2026年に搭載が予定されている長距離誘導巡航ミサイル「トマホーク」について、イージス艦が所属する港がある神奈川県横須賀市、京都府舞鶴市、広島県呉市、長崎県佐世保市の4市が2月19日、配備撤回を求める「共同声明」を発出しました。4市にはかつて旧海軍の軍港があり、1950年6月に憲法95条による住民投票によって国の特別の援助を求める「旧軍港市転換法(通称:軍転法)」が成立、施行されています。共同声明はこの軍転法の精神を生かし、配備撤回を求めています。

平和産業港湾都市への転換うたう

旧軍港がある自治体は、戦後復興に際し大きな困難を抱えていました。戦時中、軍施設に課税はできず、他の産業の育成もままならなかったためです。人口の多くは兵士や軍関係者で、敗戦と同時に激減しました。このため、広大な旧軍用地を平和産業のために活用できるとする特別法が議員立法でつくられ、4市で住民投票にかけられました。各市において住民投票の投票率は69〜88%、賛成率は84〜97%と圧倒的な支持を得て、軍転法が施行されました。

旧軍港市転換法
第1条 この法律は旧軍港市(横須賀市、呉市、佐世保市、舞鶴市)を平和産業港湾都市に転換することにより、平和日本実現の理想達成に寄与することを目的とする
第8条 旧軍港市の市長は、その市の住民の協力及び関係諸機関の援助により、平和産業港湾都市を完成することについて、不断の活動をしなくてはならない。
2 旧軍港市の市民は、前項の市長の活動に協力しなければならない。

4市16団体が賛同署名

軍転法の公布3日前に朝鮮戦争が始まり、各港には米軍が駐留、自衛隊発足後は自衛隊基地が置かれています。

共同声明は「それでも、戦後のまちづくりに軍転法が果たした役割は大きく、非軍港化の歩みも間違いなくあった。『平和実現』の理想はいまだ達成されてはいないが、今もなお軍転法が指し示す『平和産業港湾都市』が、4市の目標であり続けていることは、誰も否定することはできない」とします。

その上で「決して遅くはない。旧軍港4市が生まれ変わることによって、『平和日本実現の理想達成に寄与する』ための歩みを、ここから開始しよう。自衛隊トマホークの配備撤回を求めよう」と結びました。

2026年2月現在、4市の16団体が賛同署名しています。

トマホークは現役の危険な兵器

声明発出に伴い19日に東京都内で、共同会見が開かれました。各地から、トマホーク配備に関する現状報告がありました。

新倉裕史さん=東京都内

「非核平和市民宣言運動・ヨコスカ」の新倉裕史さんは「日本でよく聞く『トマホークは古くて使えない兵器』という説明は、事実とは異なる」と話しました。横須賀を母港とする11隻の米イージス艦もトマホークを搭載しており、現役の兵器です。米国は湾岸戦争以降の35年間に22回の軍事行動で、2,200発以上のトマホークを使用。2025年だけでも、対イエメン、イラン、ナイジェリアと3回の使用が認められました。米国のトランプ大統領は昨年10月、ウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談で、米国がウクライナへのトマホークの供与に慎重な理由を「非常に危険な兵器で、戦争の大幅な拡大(エスカレーション)に繋がってしまうかもしれないからだ」と述べています。

トマホーク400発を4港所属の8隻に配備

米国は日本への供与にも慎重でしたが、東アジア有事に備えて方針を転換。2022年に岸田文雄内閣が安保三文書を改定し、新しい国家安全保障戦略の柱に「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を持つスタンド・オフ・ミサイルの導入を据えました。これを受け、国産長射程ミサイルの製造に先立って、米国からトマホーク400発を購入しました。契約は2025〜27年度で契約額は約2540億円。2026年に4港の護衛隊群に所属する自衛隊イージス艦8隻に搭載される見通しです。

自衛隊横須賀基地では2024年3月から米軍の指導によるトマホークの運用訓練が始まっています。2025年9月には呉護衛隊群所属、佐世保基地配備のイージス艦「ちょうかい」が米国に派遣される前に、横須賀に寄港し、トマホーク模擬弾の搭載訓練を米海軍の支援の下で行いました。今年9月には佐世保基地に戻り、トマホークの実戦配備が開始される見込みです。

呉:海上自衛隊140隻のうち48隻が集中

広島県呉市からは呉地区平和委員会の森芳郎さんが軍拡の状況を報告しました。

森芳郎さん=東京都内

海上自衛隊呉基地には2025年3月、新部隊「海上輸送群」が発足。南西諸島への弾薬や戦車などを輸送する任務にあたる部隊で、25年度末時点の規模は阪神基地(神戸市)と合わせ約160人、輸送艦は4隻で、さらに増強の見込みです。

呉基地には海上自衛隊の艦船140隻のうち全国最多の48隻が配備されています。うち潜水艦は12隻。2026年度には、ヘリコプター護衛艦船『かが』の甲板を改修し、ステルス戦闘機F35Bを搭載できるように空母化する計画もあります。

森さんは「空母化により、自衛隊の建前である『専守防衛』を逸脱して他国を攻撃することになる」と述べました。

さらに、呉市は、2023年9月に閉鎖された日本製鉄呉工場の跡地(約130ha)を防衛省が一括購入することに合意。昨年4月に住民説明会で示された防衛省案では、無人機製造整備場、火薬庫、燃料タンク、輸送艦が着岸する岸壁などを整備する計画です。

舞鶴:ミサイル整備場、弾薬庫の新増設

舞鶴平和委員会の名取哲夫さんからは海上自衛隊舞鶴地方総監部庁舎の地下化工事が始まったと報告がありました。

名取哲夫さん=東京都内

「核攻撃被害を想定し、住民が犠牲になっても自衛隊は生き残って戦うための地下化です」(名取さん)

舞鶴基地配備のイージス艦「みょうこう」「あたご」はトマホーク配備に向け改修費12億円が計上され、自衛艦の係留所は大型艦船が接岸できるように30億円以上をかけて浚渫工事が進められようとしています。

舞鶴基地にある白浜弾薬庫内のミサイル整備場は米軍以外立ち入り禁止のエリアもあり、攻撃用トマホークの装備に伴い、新増設が予定されています。弾薬庫は3棟新設され、さらに1棟新設の予定。京都府内では祝園駐屯地(精華町)に弾薬庫14棟が作られ、全18棟となります。

名取さんは「弾薬庫やミサイル整備場について地域住民への説明がないまま、工事が始まっている。2月28日に市民向け学習会を開くほか、5月31日にはみなと公園でピースアクションin舞鶴を開き、1万人を目標に人を集めたい」と話しました。

佐世保:水陸両用船、機雷船の運用も

佐世保の状況については、ながさき平和委員会の富塚明さんが報告しました。

オンラインで報告した富塚明さん=東京都内

「核兵器廃絶を目指す国際NGO『平和市長会議』に、佐世保市は国内で唯一参加していない。核兵器廃絶の署名も県内で唯一していない。そんな中で昨年11月に、商工会議所や経済関係者ら19人で米国のサンディエゴ、ホノルルを訪問し、軍港の艦船修理を視察、佐世保市の『基地経済ビジョン』に反映する予定だ。軍転法に真っ向から反するようなことをしている」

トマホークを搭載する自衛艦4隻が佐世保に配備されています。このうち「ちょうかい」は横須賀を経由し、アメリカで搭載訓練を行ったのち、今年9月に佐世保に帰港する見込み。富塚さんは、佐世保配備の「はぐろ」、横須賀配備の「まや」に、米軍との共同交戦能力が備わっていることに注目しています。

「たとえば自衛隊が、敵のミサイルを発見し、その位置情報を米軍と共用できる。米軍はそれをトマホークで攻撃できる。共同して攻撃をする能力だ。米軍が発見したミサイルを自衛隊がトマホークで攻撃することも可能だ。これは憲法違反だ」

長崎港ではイージスシステム搭載艦、長射程ミサイルを搭載する「もがみ」型護衛艦能力向上型の建造が始まっています。

また、今年3月に自衛隊の4つの護衛隊群、5つの直轄護衛隊が改変され、「護衛隊」という名称がなくなります。再編後の「水上戦」群の司令部は横須賀、呉、舞鶴に置かれ、佐世保は水陸両用船や機雷船の司令部となり、出撃拠点となる総延長1.4kmの岸壁が整備される見込みです。

武力に頼らない平和でなければ人権も尊厳も守れない

横須賀市のトマホークアクション2025の岸牧子さんが、実物大のトマホークを描いた長さ6.5m、幅60cmの横断幕を示し、思いを語りました。

岸牧子さん=東京都内

トマホークは先制攻撃用のミサイルで平和憲法のある国の形を大きく変えます。こんなミサイルが配備されるということは全く想像していませんでした。
横須賀は米軍基地のある町なので、そこに住んでいる私たちは、米軍がここを他国への攻撃拠点とすることについて非常に苦しい気持ちで毎日を過ごしてきた。そうしたら今度は、自分たちの国がトマホークミサイルを持つことになった。
私たちと同じように日々を暮らす人々を攻撃するということに耐えられない気持ちでいます。万が一横須賀が攻撃を受けたら、それは原子力空母を母港にしている場所への攻撃になる。原子力空母から半径5kmには、横須賀市の人口の半分にあたる18万人が住んでいて、子どもたちが通う保育園から大学、病院も集中しています。東京までは50km。原子炉のある基地が攻撃に巻き込まれたときの被害の甚大さについて考えた時に、本当に戦争を止めようと思って、横須賀の中で基地と平和を課題にしている8つの市民団体が集まり『トマホークアクション2025』を立ち上げました。
地方自治体への働きかけが大事だと考え、議会への請願、首長への要望書を出そうと、署名を集めました。北海道から沖縄まで全国の方々、300以上の団体と個人が協力してくれた。3万を目標とし、今日までに32,132筆が集まりました。
請願は横須賀市議会、神奈川県議会とも不採択だった。でも、横須賀は小泉進次郎防衛相の地元でもある。そこで3万2000人を超す「ノー」の声を示せた意義は大きいと思います。

昨年11月、熊本で長射程ミサイルの配備に反対する集会がありました。衝撃的だったのは、1200人を超える参加者に、自治会長やPTA会長がいたことです。一緒に暮らす人たちが立ち上がっていく。ことの重要さからいったら、それが当たり前だと思いました。
しかし、横須賀は厳しかった。駅頭で署名を集めたのですが、市民のほとんどはトマホークの配備を知りませんでした。トマホークがどんな兵器かを説明すると「そんなに優秀な兵器なら配備した方がいい」という方もいた。本当に抑止力論との闘いでした。
久里浜駅の近くに自衛隊の官舎があります。自衛隊に関係している人がとても多いんです。2023年の基地市民アンケートに答えた小学校3年生の男の子の言葉を紹介します。
「お父さんは自衛官だから、自衛隊がなくなるのは困る。でも、基地が攻撃されたり、お父さんが戦争に行ったりするのは嫌だ」
これが今の自衛官の家族の気持ちを表しているのではないかなと思います。
一方で街頭では「国防なめるな、馬鹿者」という言葉も浴びました。自衛官の気持ちも揺れているのだろうな、と思います。
振り返りの会で一緒に活動する新倉さんが「今までの横須賀の基地運動は原子力空母のことなど米軍に対するものだった。でも、トマホーク配備をめぐり、横須賀で初めて自衛隊を社会問題にしたので、本当に困難さが伴う」と言われました。安保三文書が通ってから運動の質が大きく変わったんだなと、この日、実感しました。
先の衆議院議員選挙で自民党が圧勝し、高市早苗首相は自衛隊を憲法に明記する改憲を急いでいる。でも、自民党に投票した人も含めて戦争を望む人はいません。憲法9条が自衛官の命を守ってきたように、戦争をさせないことが自衛官や将来の世代も守ることになると思っています。
私たちは平和憲法を持つ国で生まれ育ちました。他の国に暮らす人たちへの攻撃も、私たちが戦争に巻き込まれるのも嫌です。抑止力と言われても、武器や弾薬があることで脅えながら暮らさなければいけないということはおかしい。平和憲法にうたわれている武力に頼らない平和でなければ、人間の尊厳も主権も守れないと思います。
いま、全国にミサイル配備や弾薬庫が建設され、戦争準備が進められる中、各地が立ち上がっています。
軍転法がありながら、トマホークが配備される4市が共同宣言を出しました。戦争を止めようと全国で立ち上がっている方々や、戦争を望まない圧倒的多数の国民とつながって、大きな世論を作り、トマホークの配備を止めると同時に、戦争することにさせない決意をもってこの集会に臨んでいます。

「戦争を止める」の一点でつながる

集会の締めくくりに「トマホークアクション2025」の高橋清佳さん=横須賀市=は「トマホークは戦争を始めてしまう武器。この問題は日本が戦争をするかしないかということだと思う。市民の多くが反対すれば、政府は戦争を始められない。どんな思想を持っていても、戦争を止めるという一点でつながって、広げていけたらいいと思います」と話しました。