「選ぶとキケン!共同親権」 民法改正を前にひとり親当事者、支援者らが街頭アピール

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(C)ちょっと待って共同親権プロジェクト

「親に左右されず自分の人生を生きたい」そんな子どもの願いが守られる制度に

改正民法が4月1日から施行され、離婚後、子の父母双方が親権を持つ「共同親権」が導入されました。「共同親権」は原則ではなく、「単独親権」のままでいることも可能です。一方で、父母の意見が対立した場合は、家庭裁判所が「共同親権」にするかどうかを判断するという新たな運用も始まります。施行を前に3月29日、東京・新宿で、「ちょっと待って共同親権ネットワーク」の街頭集会「選ぶとキケン!共同親権〜ちゃんと知って子どもを守ろう〜」が開かれました。約100人が参加しました。

当事者や支援者、弁護士、学者らのスピーチを抜粋して採録します。

子どもを進学先や転居を縛る制度

◆熊上崇さん(和光大学教授)

共同親権とは何でしょうか。離婚後も元パートナーと対等な話し合いができる場合はともかく、話し合いができないのに、子どもの進学先の決定や転居について合意を得なければいけない。裏返せば、合意が得られなければ、合意してくださいとずっとお願いしなければいけないということになる。まさに子どもを縛る制度。子どもに人生をあきらめさせざるを得ない制度です。

DV被害者の方たちと映画「五月の雨」を作りました。この映画の中で、海外の日本人女性が元夫と共同親権のため、子どものパスポートが作れず、帰国できずに殺害されたという事件が紹介されています。そのぐらい危険なものです。共同親権で子どもを殺すな、縛るなと言っていきたいです。

熊上崇さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

裁判所にDVや虐待を見抜いてもらえるのか

◆岡村晴美さん(弁護士)

協議離婚か、裁判所離婚かを問わず、父母の双方か一方を親権者と定めることができるという制度です。この法改正には当初からDVや虐待の被害者をはじめ、被害者の支援に関わる人たちから、強い反対の声が上がっていました。出来上がった法の条文では、共同親権は原則とされておらず、DVや虐待がある場合は必ず単独親権にしなければならないという二重の網が課されています。

しかし、加害者に押し切られる形で共同親権を選んでしまうのではないか。裁判所離婚では裁判所にDVや虐待を見抜いてもらえるのか。調停でDVや虐待を証明できなければ、共同親権を説得されてしまうのではないか。詳細な養育計画を立てることが強要され、離婚後の生活が縛られるのではないか。そうした不安や懸念は払拭されることのないまま、今後の運用次第だねとなんとも無責任な言い方で制度の導入を迎えます。

立法過程の中で、裁判所の調停で父母の感情の対立が収まり、葛藤が下がることが期待できると言われていました。しかし、調停という制度は、裁判所はどちらの意見にも耳を傾けることを最優先にしていて、中立であることを盾にして、DV加害者にそれを指摘することもなければ、言動を改めるように促すこともありません。裁判所で父母の葛藤が下がるとしたら、DV被害者が抗うのを止めて黙ることを意味します。話し合いが困難だから救済を求めた裁判所で、救済されなければならない人ほど尊厳を傷つけられ、子どもを守るための決断が無力化されてしまう、そんなことを絶対に起こしてはなりません。

DVとは親密な相手からの執拗なコントロールを意味します。日々の暮らしの中で、侮辱や人格否定を繰り返し、自尊感情を損なわせ罪悪感を抱かせ、貶めておいて「お前のためだ」と善人のようにふるまう。被害者を劣った存在とし、子どものために家族は一つになるべきだと束縛する。その構造自体がDVだということ。子どもに対する精神的な影響も含め、人間関係全体をよく観察する必要があります。

家族法改正に意義を見いだすとしたら、司法関係者はもとより私たち社会全体でDVに関する共通理解を深めることに尽きるのであって、例えば10年後、あの時共同親権が導入されたけどDVの正しい理解への契機になったね、と笑って集まれたらいいですね。そうなるようにがんばりたいと思います。

岡村晴美さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

搾取と支配とコントロールはいらない

◆大塚恵美子さん(反貧困ネットワーク理事)

貧困ジャーナリズム賞の特別賞を映画「五月の雨」に受け取ってもらいました。選考委員の7人中、女性は2人。けれども説得力をもって、「五月の雨」を通させてもらいました。映画のあの表現。必要だったと思います。まさに「見えない暴力」じゃないですか? 日常の暮らしの中で、この髪の毛どうしたんだと説明を求められる。それが毎日毎日続いて、妻と子どもの心身を圧迫していく。深刻な影響を与えていく。

妻が離婚を選択したとき、家庭裁判所の調停委員には、モラハラの見えない暴力がわかってもらえないんだよ。離婚後も共同親権を選んだ夫により、「お前たちだけは幸せにしてはならない」と、子どもを人質にした流れがずっと続いていく。私はやっぱり許しがたい。貧困というのは金銭のことだけではない。心身に及ぶこの世の中の流れを貧困というのだと私たちは思っている。わかりやすい表現をこの「五月の雨」はしてくれました。

搾取と支配とコントロールはいらない。私たちは負けない。

大塚恵美子さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

被害者の声を聞かない人が法律をつくった

◆戒能民江さん(お茶の水女子大学名誉教授)

毎年このぐらいの時期に警察庁がストーカー、DV、児童虐待事案についての報告書を出すんですね。それを見ますと、2025年の全国のDVの相談件数は9万8000件。2001年にDV防止法ができて以降、最多です。相談しやすくなったことがあるかもしれないけれど、日本の社会でDVが許されないという認識がしっかり根付くにはまだ道遠しということだと思います。

世界を見ると次々と戦争が仕掛けられ、止むことがありません。これは軍事力による力の支配だと思います。これが横行しているということはDV国家が世界中にあるということです。DV国家が相手を力でねじ伏せて、言うことを聞かないと軍事力を行使する。そういう力の支配が横行していることが、日本の社会でもDVが依然として蔓延っていることの背景にある。

大変不名誉なことですが、私は法制審議会の家族法制部会で、DV研究者として委員を務めました。(答申まで)3年半もかかったんだから、きっと十分に慎重に議論が尽くされたと思われるかもしれませんが、そんなことはない。残念でなりません。結論が先にあるんです。委員21人のうち3人しか反対しなかった。その他の人たちは、女性の学者が多いんだけど、現実を見ていないんじゃないかと思った。十分DVのことを知ろうとしない、被害者の声を聞かない人が法律を作っている。

施行されてしまいますが、これからが勝負です。被害を受けた方がリーガルハラスメントや嫌がらせを受けないように。そして子どもたちが心を病んで、心の傷を背負って生きていくことのないように。監視をして、この民法改正はいらないんだと言っていく必要があると思います。

戒能民江さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

養育計画の通りに子どもは育たない

◆小森雅子さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)

離婚前、離婚された方からの相談を沢山お受けしています。まず、法改正が知られていない。国も自信を持って発信しているんだろうか? こっそり進行しようとしているんじゃないかと心配です。

法律がなくても離婚後も共同で子育てしているカップルもたくさんいます。平日に子どもの世話を分担しているんですね。けれど、日本はそういうことが一切できていないような報道をされています。でも人間関係って法律でしばるものでしょうか? 親子関係、離婚した夫婦の関係は法律でこういう風にしましょうと言えますか? 養育計画の通りに子どもは育ちますでしょうか? 離婚されたカップルでも、婚姻中のカップルでも、子どもってもっと自由に育つものじゃないでしょうか? 子どものためと言いながら、本当にこれが子どもたちの安全、安心、希望につながっていくのか、私たちはこれからも注意して見ていかなければならないと思います。

離婚前後のみなさんに届く情報が少ない。離婚前の人への情報が、日本は本当に手薄です。みんな自分個人の問題と思って内向きに考えて、自分を責めてしまいます。これは社会問題なんだということで一緒につながって、わからないことは支援機関や行政に聞くなど助けを求めてください。

小森雅子さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

不適格な親から解放される仕組みをなくすな

◆白井則邦さん(司法書士、酒々井町議員)

全国青年司法書士協議会は毎年全国一斉の養育費相談会をしております。今年は4月29日に行う予定です。昨年の相談会で、民法改正についてうかがいました。離婚後共同親権の導入について多くの方が不安を感じていらっしゃった。子育てをしている親を不安にさせる制度を作るなよ。安心して子育てできる環境を整えろ。

日本では子育てが軽視されていると思います。赤ちゃんを大人になるまで育て上げていく。これは社会の維持に絶対に必要なことなんですね。社会全体にとってお金を稼ぐよりもよほど大切なことです。子どもが健康に育つためには側で大人が見守る必要があります。しかし、それは離婚した別居親じゃなくてもいいんです。行政や福祉、地域の方、国や自治体が自分の責任として子育てに関わっていく。別居親に親権を与える前にやることがいっぱいある。格差や貧困が拡大する中ではまず、子育て世帯に対ししっかりとした経済的な給付をする。非正規・正規の区別をなくし、働いたら生活できるようにする。福祉を充実する。そうすることですべての子どもが困窮に陥らず、精神的にも経済的にも余裕があり、元気に育っていく。そういう社会に変えていく必要があります。

離婚というのはDVや支配から解放されるための制度なんです。不適格な親から解放される仕組みをなくしてしまう、これのどこが制度改正なんでしょうか。優先されるのは子どもの意思です。子どもの意見を尊重して、どうやって希望を実現するか。子どもの意思を無視して親が決めるのは、子どもの権利条約に反して児童虐待にもあたる行為です。

だからこそ、共同親権については子どもの意見をわかっている同居親の意見を尊重していく必要があります。子どもたちを守るために一緒に頑張りましょう。

白井則邦さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

「共同親権では子どもを守れない」と言い続けて

◆赤石千衣子さん(ひとり親家庭サポート団体全国協議会理事長)

法制審議会の委員をしておりました。最後まで共同親権が選択肢に増えることに反対しました。反対は3人だけでした。満場一致が通例の法制審議会では異例の反対だったわけです。その間、ネットですさまじく攻撃され、私自身がDV被害者の体験をしたかのような有様でした。

民法改正で、子どもが安心して、離婚後も両親と交流できる、一見素晴らしいと思いますよね。しかし交流だけではなくて、親同士が話し合って子どものことを決めていかなければならない。これができない方がたくさんいるんです。

4月から親権変更の申し立てをされるのではないか、これから調停で不安、そういった方がたくさんいらっしゃるんじゃないか。でも諦めないでほしい。支援者がたくさんいる。さまざまな相談先とつながって、最後まで諦めないで、「共同親権になれば子どもを守ることができません。共同親権は選べません」と裁判所で言い続けてください。私たちは応援します。

父親がDVじゃなくて、浮気しましたとか、帰ってこなくなりましたという人は、民法改正で養育費が払われるようになって嬉しいと思うかもしれません。それは大きな間違いです。選ぶと危険なんです。共同養育計画を決めてはいけません。どうしても決めなきゃいけなくなったら、1年間だけとかにしてください。選ぶと危険、共同親権、共同養育です。

赤石千衣子さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

あってはならない「家裁ガチャ」

◆田中志保さん(シングルペアレント101代表、静岡市議)

DVから逃れ子どもを育てているひとり親として、ひとり親支援団体代表として、共同親権に疑問を持つ地方議員としてお話します。

15年前離婚を決意し、DV被害を詳細に書いて、調停の申立書を家庭裁判所に提出しました。しかし調停初日、男性調停委員から「細かすぎて読んでいない」と言われました。DV被害を理解されず、軽く扱われたショックで突発性難聴になってしまいました。

支援現場では裁判所にDVを理解してもらえないという声が後を絶ちません。4月から導入される制度では、親同士で合意できないケースは裁判所が親権を判断します。DVや虐待があるケースでは単独親権とするとなっています。しかし、今の裁判所がDVや虐待を見抜けるとはとても思えず、強い不安があります。

昨年、家裁の調停委員に共同親権になってケースは増えるか、と聞きました。地域により答えはバラバラでした。このバラつきこそ、私が恐れる「家裁ガチャ」です。運任せで将来が決まるようなことは本来あってはならないことです。昨年9月、市議として、離婚後共同親権導入後の行政対応について質問しました。子どもや相談者、現場の職員が判断に迷ったり不利益を被ったりすることの内容、具体的な体制の整備を求めました。

最後に2年前、共同親権の導入が決まった時に、ひとり親家庭の高校2年生が話した言葉を紹介します。

「自分で進路を選べないなんておかしい。ひとり親家庭の子には人権がないのか。親に左右されず、自分の人生を生きたい」

田中志保さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

「選んだら危ない」相談の現場で徹底

◆北仲千里さん(全国女性シェルターネット)

DVの被害者の支援をしている全国の団体の連絡会です。選ぶとキケン共同親権。ちゃんとわかっている人は少ないです。全部が共同親権になるという誤解もあります。養育費が取れるようになると思っている自治体の相談員もいます。

これから離婚する人は、共同親権か、単独親権か選べるんです。共同親権を選んだらどんなに危ないかということを、相談の現場で徹底していきたいと思います。

そして、養育費は関係ないんです。養育費が取れるようになるとだました感じで共同親権の審議が入ってしまった。結果として、養育費をちゃんと取る、強制するということが実現しませんでした。選ぶと危険です。被害者の相談の時にきちんと伝えたいと思います。

北仲千里さん(C)ちょっと待って共同親権ネットワーク

◆当日の様子のアーカイブは、ちょっと待って共同親権プロジェクトのyoutubeから見ることができます。(画像はいずれもアーカイブより切り出しました)