横須賀港内で米原子力空母から放射性廃棄物を搬出 2009年から年1回 市民団体、内容や空間放射線量の公開求める

記者名:
(C)市川平さん

横須賀港に停泊中の原子力空母から放射性廃棄物を搬出。コンテナの中身は……。

横須賀港内に停泊している米海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンから4月15日、コンテナ入りの放射性廃棄物が、同港内の輸送船アライド・ブルックリンに搬出されました。空母の原子炉2基を含む動力装置の定期修理で発生したもので、毎年この時期に搬出が行われています。市民団体がこの日、搬出作業を海と陸から監視。横須賀市に対し、コンテナの内容を米軍・外務省に照会し、さらに周辺の空間放射線量を測定し、市民に結果を公開するよう求めました。

日米合意を書き換えて、横須賀で修理可能に

市民団体は「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」(呉東正彦・共同代表)。原子力空母の修理とそれに伴う放射性物質の搬出は2009年に始まり、今回が15回目。呉東さんらは、この修理・搬出が1964年の米国政府の外交文書「エード・メモワール覚書」に反するとして、当初から抗議を続けて来ました。エード・メモワール覚書は、日本に初めて原子力艦船が寄稿する際に日米両国間で交わされた文書。米国は被爆国日本の国民感情に配慮し、「原子力艦船の動力装置の修理は日本国及び領海内では行わない」「放射性廃棄物は艦外に出さない」と約束しました。

ところが、米国政府は2006年に「動力装置」を「原子炉」に限定する書き換えを行い、横須賀港内での修理を可能としました。外務省もこれを追認しました。さらに港内で放射性廃棄物が入ったコンテナをクレーンで吊り上げ、輸送船に積み込む作業は「海上で行い、陸揚げしていないので、覚書に違反しない」と説明しています。

コンテナの中身は「低レベル放射性廃棄物」だけ?

空母の原子炉を継続的に運転するには、放射能汚染された一時冷却水を交換し、冷却水が循環する配管の痛んだ部分を交換する作業が不可欠です。米政府は2010年、外務省に対し、コンテナの中身は「雑巾や作業用手袋などの低レベル放射性廃棄物」と説明しました。その翌年に東京電力福島第一原発事故が発生。その後も米軍は何ら対応や説明を変えていません。呉東さんらは「本当に汚染水や配管部品が含まれていないのか、情報が公開されていないので、市民にはわからない」と疑問視しています。

動力機関の修理には米海軍が従事しますが、放射性廃棄物の搬出作業は日本人従業員が行っています。住民投票を成功させる会は15日、コメントを発出し、「明らかに日米間の合意であるエード・メモワール違反であり、放射能に対する市民の不安を無視し、人口密集する横須賀基地周辺の市民と基地従業員を放射能汚染にさらす危険を常態化させるものだ」と強く抗議しました。

その上で、横須賀市に対し、「コンテナのすぐ外での放射能のモニタリング調査を実施する」「放射性廃棄物の内容、量、搬出時期を米海軍や外務省に照会する」ことなどを求め、結果を市民に公表するよう要請しました。

原子力空母の修理で発生した放射性廃棄物が黄色いコンテナで搬出された=横須賀港(ヨコスカ平和船団の市川平さん提供)

横須賀市「米国側の説明文書にある通り」

横須賀市市長室の担当者は生活ニュースコモンズの取材に対し、「搬出作業は通常行われている空母のメンテナンス作業の一環で、何も問題はない」と話しました。

その上で2010年4月の米国側の説明文書にある通り、コンテナの内容は「非常に低レベルの放射能を帯びた雑巾、プラスチック・シート、作業手袋等の少量の固形廃棄物」、コンテナ周辺の放射線量は「一般に低いものであって、岩石や土壌のような線源からの自然界のバックグラウンド放射能のレベルよりも大きなものではない」として、独自の調査や米軍へのさらなる照会を行うことはしない、としています。

原子力艦船からの放射能漏れ30年間に24件

しかしながら、原子力艦船の放射能漏れ事故はかなりの頻度で起きています。「住民投票を成功させる会」が報道などからまとめたところ、1995年以降の30年間で、事故は少なくとも24件にのぼり、2006年6月から2008年7月には、原子力潜水艦ヒューストンが放射能漏れに気づかないまま、横須賀、佐世保、沖縄への寄港を繰り返していたことが判明しています。

市民らはこの日、海上ではボートから、陸上では輸送船が停泊している岸壁まで直線距離で約1kmの公園から、搬出作業を監視しました。公園内には保育園児の集団が散歩に訪れ、走り回っていました。

監視活動に参加した藤園明希・横須賀市議は「放射性物質の搬出は原子力空母の危険性の一部にすぎない。すぐそこで原子炉が稼働していることが一番心配です。しかも原発と違い、稼働の安全性のチェックすら日本はできない。原子力空母が横須賀にあることで市民の命がないがしろにされる危険性が高い」と話しました。

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