「人生設計を一気に狂わせる」 永住資格の厳格化にノー 当事者も参加し、緊急院内集会に265人

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永住資格を厳格化しようとする政府のガイドライン案。当事者の切実な訴えを聞いて!

出入国在留管理庁(入管)が公示した日本に暮らす外国人の永住資格を厳格化する二つのガイドライン案の撤回を求める集会が8月28日、参議院議員会館(東京都千代田区)で開かれました。主催はNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)。会場とオンラインを合わせ265人が参加しました。永住者や永住者の配偶者らも参加。「人生設計を一気に狂わせる」「日本に、選ばれない国になってほしくない」など悲痛な訴えが続きました。

永住資格の厳格化 入管は8月4日、①永住許可に関するガイドライン改定案、②永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案を公示した。
①は1月に閣議決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえたもの。永住許可の要件のうち「独立生計要件」では、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準の額に継続して達している」「将来の年金受給見込額が、30年間厚生年金に加入していたのと同等の額に達している」ことを求めた。また「国益要件」では「積極的かつ具体的に日本国に利益をもたらす」とし、日本語の習得も義務づけた。また、「我が国の制度の理解」「子の就学」など消極評価(減点)項目を新設した。
②は2024年の入管法改正に伴うもの。改正で「永住者」の取消事由に「故意に公租公課(税金、健康保険、年金など)の支払いをしないこと」「入管法上の義務違反(在留カードの不携帯など)」「特定の刑罰法令違反」が明記された。ガイドラインは取消になる具体的なケースを列挙。国または自治体による通報についても定めた。

移住連は①の撤回を求める声明を8月7日に出しました。8月27日15時時点で447団体が賛同しています。

入管庁は9月4日午前0時まで二つのガイドライン案に関するパブリックコメントを募集しています。移住連は28日、②に関する意見を発表しました。集会の参加者や賛同団体にもパブリックコメントに意見を送付するよう呼びかけています。

大幅な不利益変更は「秩序」を乱す

集会では移住連共同代表理事で国士舘大学教員の鈴木江理子さんが①「永住に関するガイドライン改定案」の問題点について解説しました。

「『永住者』とするかは法務大臣の極めて広範な裁量権に基づく。日本人の平均所得は国民生活基礎調査によると575万2千円。間接雇用率が高く、小規模事業所で、低賃金で働くことが多い外国人が、この額を達成するのは極めて難しい」

「積極的かつ具体的に日本国に利益をもたらす。この定義にあてはまる日本人がどれほどいるのだろうか。私だってあやしい」

「80年近くにわたり継承されてきた永住制度を、十分な議論もなく、当事者の声に耳を傾けることなく、大幅な不利益変更を強行しようとすることは、まさに『秩序』を乱す行為であり、官製排外主義である」

移住連共同代表理事の鈴木江理子さん=東京都千代田区

一度永住者でなくなったら戻るのは困難

移住連運営委員で弁護士の丸山由紀さんは②「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」について解説しました。

2024年の入管法改正には「事前の議論なしで突然提出」「立法事実がない」「外国籍住民の立場を不安定にする」「外国籍住民に対する差別や偏見を助長する」などの問題点が指摘されています。

「永住資格を取り消した後は『定住者』などに変更するという。近年の排外主義的な政策の進行により、「経営・管理」ビザの取得要件が厳しくなり、ビザの更新手数料も大幅に引き上げられた。一度永住者でなくなった場合、再度永住者に戻るのは更に困難になるだろう」

丸山由紀弁護士=東京都千代田区

日本生まれの人たちに法的安定性を与えないのは恥ずかしい

在日コリアン弁護士協会の金哲敏・弁護士は「国際人権規約に批准している以上、条約に適合するように法律を制定しなければいけない義務が日本政府にはある。それを全くやっていないというのが最大の問題点だ」と指摘しました。

また、在日コリアンら永住者の法的安定性について、「私は3世だが、私には日本国籍がなく、子どもにもない。在日コリアンはすでに6世の世代に入っている。正面から論じないといけない。日本生まれの人たちに法的安定性を与えることを考えないのは、恥ずかしいことだ」と話しました。

金哲敏弁護士=東京都千代田区

会場では3人の外国籍当事者が発言しました。

「経営・管理」ビザの厳格化で帰国迫られる

◆ネパール出身のアニーさん(永住希望者)

対談形式で思いを話したアニーさん(後ろ姿)=東京都千代田区

 32年前、20代のころ日本に来ました。日本に来て6年ほどしてからネパール料理のお店を始め、現在まで続いています。お店を始めて26年になります。うちのお店の従業員はみんな家族です。妹夫婦とお姉さんが働いています。20年間お店で働いてくれた弟はアメリカの「永住」資格がもらえたので、2年前にアメリカに移民しました。20年間日本で働いてきたのに、「永住」がもらえなかったので、弟の家族は毎日とても不安でした。日本はあきらめて「永住」を認めてくれたアメリカに行くことにしました。私にとってはとても残念でした。アメリカに移民した弟の家族は、奥さんと日本で育った子どもたちで、5人家族です。中学生の一番上の子は日本に長いので連れていくのを悩んでいましたが、家族全員で一緒にアメリカに行きました。

 レストランに来るお客さんは学校の先生や、近くで働いている人など。家族連れで来てくれる方たちもいます。お店を始めた時から、「夏祭り」「ふるさと祭り」「豆まき」「子ども食堂」など地域のイベントには必ず参加しています。実行委員として、ネパール料理の販売で参加しています。

いま困っていることは、「経営・管理」ビザの要件が変わり、2028年までに資本金3000万円が必要となり、日本の方を雇わなくてはいけなくなったことです。とても経営が難しくなるので、不安です。あと2年か3年でお店ができなくなってしまう可能性があります。そうなったら、私も働いている家族も、みんなネパールに帰らなければなりません。「定住」が取れて、会社で働き出した甥は日本に残され、お母さんお父さんと離ればなれになってしまうでしょう。

 32年間、日本にいるのです。ネパールでの生活より、日本での生活の方が長いです。私にとって、日本はふるさとです。今までも「永住」を望んできました。ぜひ「永住」を取りたいです。「永住」が取れるようにしてほしいと思います。

日本を良くしたい人たちを追い払ってしまう

◆アメリカ出身のモウさん(永住者の配偶者)

永住者の配偶者ビザで日本で働くモウさん=東京都千代田区

アメリカの大学で物理と日本語を専攻し、現在、理系分野の翻訳と通訳を務めています。

日本で暮らしてそろそろ10年になります。婚姻歴2年半ですが、妻に惚れるずっと前から日本に惚れました。

日本に来た最初の頃は、日本語の勉強を進めながら、日本人向けの英語教育に携わっていました。自分自身が日本語の習得に挑戦する姿を生徒たちに見せることで、「努力すれば新しい言語を身につけることができる」ということを伝え、たくさんの生徒たちに言語を学ぶことへの自信を持ってもらうことができました。

それは、日本と海外をつなぐ人材を育てるという意味で、日本社会への貢献だったのではないでしょうか。

日本語能力検定で1級を取得した後は、「国際業務」の在留資格に変更し、理系の翻訳・通訳の仕事に移行しました。忠実に仕事をし、現在は日本の再生可能エネルギー分野の発展に携わっています。こうした経験も日本社会の発展への貢献に、そして日本の国益につながると思っています。

その途中でたまたま妻に出会い、結婚後、在留資格を「配偶者」に変更しました。それ以来、不安定な1年更新の配偶者ビザで、家族を一人で支えてきました。

日本は僕の母国、僕の家族の母国になると思っています。今までコツコツと永住資格を目指してきた僕は、漢字検定で常用漢字を習得するほど日本語を愛しています。家族を作りたいと思えるほど日本を愛しています。僕は日本を選んだのです。

妻のために、永住資格の取得をあきらめるつもりはありませんが、今の厳格化については不安しか感じません。もし僕が日本に来たとき、このような外国人の生活を何もかも難しくしようとする制度があったとしたら、僕は日本を選んだとは断言できません。

日本がいいなと思っている人は、厳格化につれ大幅に減っています。今回のような厳格化は、僕と同様に素直に日本を選んで、日本で生きていきたい、日本を良くしたい人たちを結局、追い払ってしまうでしょう。

日本に、選ばれない国になってほしくないです。僕がかつて惚れた日本のままでいてほしいです。

聞いてくださっている方々、議員の皆さま、どうかこのような永住資格の厳格化をしないよう、考え直してください。心からお願いします。

大きくないミスでも人生が終わってしまう

◆アメリカ国籍のノアさん(永住者)

日本で生まれ育ち永住権を持つノアさん=東京都千代田区

私は永住者の当事者です。今は日本人の子どもたちの教育に関わっています。この仕事がとても好きで、天職だと思っています。

私の国籍はアメリカ合衆国ですが、日本で生まれ育ち、愛する家族や夫も日本に暮らしています。日々、日本に住んでいる皆さんと同じように生活しています。私にとって「帰る国」は日本だと思って生きてきました。

「永住資格取消制度」について報道で知ったとき、私は子どもを産むことを迷いました。私の周りの、海外にルーツを持つ友人や永住者の中でも、結婚したり子どもを持ったりすることに対して不安を感じる人が増えました。

「永住資格取消制度」の成立によって、永住者を含む国際カップルが、いわゆる「産み控え」をする事態が増えていると、この1年で私は周囲を見ていて感じています。

この制度は、私たちの「この国で生きたい」という思いや、「この国で家族を持ちたい」という人生設計を、非常に不安定にしてしまったと思います。

しかし私は、制度が変わったからといって人生設計を変えたくなくて、子どもを育てることを選択しました。我が子は、私たちの宝です。我が子も永住資格を取得し、永住者として日本に住んでいます。私と全く同じです。日本で生まれ、育ち、これからの日本の社会の一部となるでしょう。

しかし懸念は大いにあります。永住資格の制度の運用が厳しくなり、取り消しができるようになってしまったからです。子どもにはいつか、日本で暮らせなくなる可能性について話さなくてはなりません。日本で生まれ育ち、日本人と変わらない教育を受け、日本語を話し、日本で仕事をし、日本で家族を持ち、日本で生活しているにもかかわらず、持っている権利は簡単に取り上げられると。

どんな人間でも完璧ではありません。人生でミスをしてしまうことは普通のことです。長い人生の中で、決して大きくないはずのミスでも、私たち永住者にとっては人生が終わってしまう運用の仕方には、当事者として強い不信感があります。

間違えてもやり直せば大丈夫という当たり前のことを、私は子どもには教えてあげられません。在留カードの入った財布を忘れて出かけた、年金の支払いが遅れた、そうしたミスで生活の根本に関わる永住資格を取り上げられる恐れがあるからです。日本での生活しか知らないにもかかわらず、強く管理された人生を歩まなければなりません。

これはすでに永住者である私たちだけの話ではありません。私の友人や同僚には、永住資格獲得に向けて何年も真面目に一生懸命働いて頑張ってきた方たちがいます。

先日、その人たちの人生設計を一気に狂わせるほど、永住資格取得の要件が厳しくなりました。まず、永住申請の金額がとてつもない金額になりました。そして、年収が日本人世帯の平均より高くなくてはならないとされました。彼らはただ日本に失望しています。彼らは日本を完璧な国だと思っていたわけではありません。日本が好きだから、日本で生活しているからと、日本で真面目に永住を目指してきた人たちです。その中には、日本人と家庭を持っている人もいます。

彼らや私たちに排除の矛先を向けても、社会は何も良くなりません。むしろ、心から日本が好きで地域や社会に貢献したいという気持ちを持つ人たちの心を挫き、生活を破壊するだけだということを知ってほしいです。

悪質な一部のケースだけに注目して、それへの対応を外国人や外国にルーツを持つ人たち全体に広げるのではなく、当事者が置かれた状況への理解を深め、必要な人にしっかりと支援が行き届くように、これからも一緒にこの社会で生きていくための議論を進めていただきたいと願っています。

厳格化は弱い者いじめ いじめ社会でいいのか

集会の最後に移住連共同代表の鳥井一平さんはガイドラインの本質について次のように話しました。

「この厳格化はいじめです。外国籍の人たちには投票権がない。ノーという機会がない。そういう人たちに対する弱い者いじめなんですよ。私たちの社会は、いじめの社会でいいんでしょうか。誰一人取り残されることのない社会、声なき声をくみ取る社会を私たちは絶対にあきらめない。共に外国籍の人を迎え入れる社会を作っていこうではありませんか」

移住連共同代表の鳥井一平さん=東京都千代田区

永住資格の厳格化をめぐるガイドライン2案へのパブリックコメントは、こちらから送ることができます。締め切りは9月4日午前0時です。