ディープフェイク性暴力 韓国で抵抗の声相次ぐ  “不安と恐怖ではなく、日常を勝ちとろう!”

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知人・友人の顔を使った偽画像が知らぬ間に流れてる?ディープフェイク性暴力問題は韓国だけじゃない

1200人が集会とデモ「不安と恐怖ではなく、日常を勝ち取ろう!」

9月6日、韓国ソウルで、テレグラム・ディープフェイク性暴力対応緊急集会「不安と恐怖ではなく、日常を勝ち取ろう!」が開催されました。1200人余りが参加し、集会後、光化門までデモ行進をしました。共同主催したのは、韓国の女性・人権・市民社会団体など144団体です。

韓国では、AIで作られた違法偽画像による性犯罪の実態が次々と報道され、社会問題となっています。この集会だけでなく、国会での政策討論会、大学生を中心とした大規模デモ(約6000人)などが相次いで開かれ、ディープフェイク性暴力に対する根本的な解決を求めています。

ディープフェイクとは、詐欺を目的に現実の映像や音声、画像の一部を加工して作られた違法な合成画像のことです。「ディープラーニング」(深層学習、AIに関連する先端技術)と「フェイク」(偽物)を組み合わせた造語で、近年これを用いた犯罪が問題になっています。とりわけ、ディープフェイク性犯罪の被害は世界中に広がっており、事態は深刻です。

たとえば、スマートフォン向けの通信アプリ「テレグラム」では、22万人以上が参加するディープフェイクチャンネルまであるとされ、簡単にアクセスができるだけでなく、違法合成画像を有料で生成できる「収益構造」まで備えています。

オンライン空間は、なぜ男性中心で、女性嫌悪的なのか

はじめに、司会を務める韓国サイバー性暴力対応センター事務局長のイ・ヒョリンさんが開催の意図を参加者に呼びかけました。

「ディープフェイク性暴力は決して新しい問題ではありません。なぜ同じような性暴力事件が繰り返されるのでしょうか? 社会や国家は知らないふりをしているようです。女性がたくさんインスタグラムを利用したから?〔会場:違う!〕 技術があまりにも発展したから?〔会場:違う!〕 そう、違いますよね。女性の体を猥褻と考え、撮って加工して所有して流通させて、快楽を得る、まさに”男性文化”のせいです」

「暴露すべきは、被害者の学校や職業ではなく、オンライン空間がなぜ男性中心で、女性嫌悪的なのか、その実態です。オンライン空間と現実の世界は決して分断されているわけではありません。オンライン空間の男性文化に警告し、国家の責任を問おうと思います」

「オンライン空間をただ暴力と危険な空間として女性に注意するように呼びかけるような対応に抵抗します。また、性暴力を容認するオンラインプラットフォームの事業者にも責任を問わなければなりません」

「オンライン空間が自由で解放的なものになるよう私たちがひっくり返しましょう」

9月6日、韓国ソウルで、テレグラムディープフェイク性暴力対応緊急集会「不安と恐怖ではなく、日常を勝ち取ろう!」が開催され、1200人余りが参加した。=韓国・ソウル

◆自由発言

さまざまな立場の9人が舞台で語りました。

構造的な性差別こそ問題の核心

発言1:キム・ヨジンさん
(韓国サイバー性暴力対応センター代表)

オンライン環境が日常化される前から、性暴力映像は「わいせつ動画」として販売・流通していました。2010年代半ばからオンライン空間でのデジタル性暴力1は絶え間なく続いてきました。

国家は「盗撮」を違法撮影と命名し政府対策を発表し、女性家族部を中心に自治体などの被害支援を制度化しました。警察と防審委は専任担当チームを新設。 国会は、いわゆる「n番部屋防止法」(文末の表参照)を通過させ、撮って流布することだけでなく、見ること、合成すること、脅迫することまで2020年以降はすべて性暴力犯罪となりました。(文末の表参照)

それなのに、なぜ、同じようなことが続くのでしょうか?
私たちはなぜ既視感を感じるのでしょうか?

それは、この問題がジェンダー権力によって発生すること、女性憎悪に基づくこと、構造的な性差別によるものであるという核心が抜け落ちているからです。

この暴力を「デジタル性犯罪」と名づけるのが正しいのか疑問です。犯罪だから問題なのでしょうか? 違法撮影だから問題なのでしょうか? 違法という基準は何に基づいているのでしょうか?

結局、性暴力の判断基準は「わいせつ」になり、わいせつでなければ違法になりません。わいせつでない、乳首や性器が登場しない撮影物は、性暴力の被害にならず、削除のための支援を受けることができません。これは理にかなっていますか?

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は女性家族部廃止を公約とし、さらには“構造的な性差別はない”と発言しました。性暴力防止と被害者支援の予算を削減してきました。相談所の人員を減らし、性人権教育事業を廃止、職場内の女性暴力防止事業も廃止しました。性売買被害者支援や雇用平等相談室の予算も削減しました。尹政権は、同意のない性行為を犯罪とみなす、いわゆる「不同意姦淫罪」の導入を拒否し、女性・市民団体から糾弾されました。今年2月、キム·ヒョンスク女性家族部長官が辞任した後、長官はいまだに空席です。

韓国政府は、“構造的な性差別はない”としたまま、厳罰と技術的な対応だけで解決しようとしています。その一方、ディープフェイクの多くの加害者は違法にならずに女性を凌辱しています。

絶望を怒りに、不安を勇気に変えて、この退行の時代を一緒に乗り切りましょう。

“私の問題”と感じたのは、若い女性だけではない

発言2:カン・ナヨンさん
(ソウル女性会フェミニスト大学生連合サークル運営委員)

数ある女性暴力の中でも、今回のディープフェイク性犯罪が大きな注目を浴びた理由は、加害者の75%が未成年者であることのようです。

しかし、私たちが見逃してはならないのは、大学や軍隊など社会生活を送っている成人集団でもディープフェイク性犯罪が広範囲に発生していることです。

さらに懸念するのは、大学社会と一部の反応でした。「ディープフェイクされる心配もない女性たちが、なぜ声を上げるのか」という批判です。女性たちが声を上げるのは、他人が受けた苦しみでも自分が受けたことのように感じるからです。

私たちの社会が信頼を回復し、尊敬できる共同体を作るためには、歪んだ男性文化と男性権力を直視し、それに対する徹底的な反省から始めなければなりません。

私にも大切な男性の仲間がいます。ディープフェイクの性犯罪事件を伝えると、表情を歪めて頭を下げてため息をついていた男性同僚たちです。共同行動に参加する男性連帯者たちです。

私は、2016年のソウル江南駅殺人事件と#Me Too以降も繰り返される女性に対する性暴力の報道に8年間耐えてきたので、心の奥底に無気力感が生まれたのかもしれません。しかし、「友だちがディープフェイクのせいで怒って不安で眠れない」という一言で目が覚めました。

8年前と少し違うのは、“私の問題”と感じたのは、若い女性だけではないということです。 教師、記者など職業を問わず、労働者、親まで、抗議の声を上げています。

私たちが自由に歩き回ることができる空間を保障するよう要求しましょう。

性差別的な文化を見過ごしていた自分を後悔

発言3:チェ・ジスさん(30代市民)

大学新入生の時、サークル部屋では、男性の先輩たちが下品な言葉で同期の女性の容姿を評価していました。こんなことはあまりにも頻繁にあったので、私はただ見逃していました。

時間が経ち、フェミニズムを知り、n番部屋事件、ディープフェイク性犯罪を知りました。女性の容姿と性を男性が自由に評価し、嫌がらせや遊び道具として扱ってもいいという性差別的な文化は、一朝一夕にできたものではありません。だから、知っていてもその瞬間を見過ごしていた自分をとても後悔しています。

ソウル江南駅殺人事件の後、私はフェミニストとして目覚めた他の多くの女性たちと一緒に行動しはじめました。しかし、バックラッシュが起きました。フェミニストとして生きることに恐怖を感じたりもします。

しかし、この性差別的な社会が女性に対する性的搾取を可能にしていることを知った以上、あきらめることも、後戻ることもできません。

被害者との共同行動、一緒にいることで強くなる

発言4.:2018年漢陽大学’知人性欲’事件被害経験者
(代読:イ・ドギョンさん 韓国性暴力相談所活動家)

私は2018年、漢陽大学で起きたディープフェイク事件の被害者約20人のうちの一人です。加害者は、学科の親友、部活の先輩・後輩、高校の同級生、同じ塾に通っていた人までいました。女性たちの写真を収集し、ツイッターで知人凌辱の写真を合成してくれるアカウントに依頼し、被害者の身元情報まで伝えました。被害者はほとんどが20代になったばかりの若い女性でした。

被害者たちはフェイスブックを通じて社会に問題提起し、学校側に対策を求めました。最終的に、加害者は学内規定に基づく手続きを経て除籍されました。被害者たちの積極的な共同行動が最初に成就したのです。

しかし、その後数年にわたる裁判の結果、加害者は無罪になりました。加害者が依頼して作成した「コンピューター・プログラム・ファイル」は、刑法で規定されている文書、図画、フィルムその他の「わいせつ物」に該当しないということでした。

発展する技術、旧態依然の処罰法、そして、行き詰まりつつある社会的認識。この3つの高度なバランスが適正な処罰には必要であることを、被害の過程で痛感しました。

単に一部の逸脱した男性だけの問題ではない

発言5:キム・チャンソさん
(アハ青少年性文化センター青少年運営委員)

ディープフェイク性暴力事件に関する報道を初めて目にした時、私が一番最初に感じたのは、慣れ親しさでした。加害者たちの行動は、男子高校に在学していた時に何度も目撃したこととあまりにも似ていたからでした。

私は今回のディープフェイク性暴力事件が単に一部の逸脱した男性だけの問題ではなく、多くの男性が女性を性的搾取してもいい「物」のように扱っているなど、暴力的なセクシュアリティを集団的に実践し、それを一種の遊び文化とみなして黙認してきた「男性文化」の問題でもあることを強調したいです。このことに批判的に介入しなければ、男性文化に基づいた集団的な性暴力が再び起こるでしょう。

”教室でセクシュアリティとジェンダーを学べるようにしてほしい”

発言6:イ・ミョンファさん
(韓国青少年性文化センター協議会常任代表)

私は青少年の性教育とカウンセリングで20年以上飯を食ってきました。国の税金から給料をもらい、“平等で安全な青少年の性文化を作る”というミッションのために生きてきた私には責任があります。

今回のディープフェイク事件は、被害・加害ともに10代が70%を超えています。現実の前で、最近の青少年がなぜそうなのかという質問に、青少年専門家として何も言えません。青少年性文化センターの活動家はせいぜい300人ほどです。性教育の講師まで合わせても1000人もいません。少ない人員で押し寄せる課題に対応するのが精一杯。劣悪な労働条件で2年もすれば辞めていく活動家の穴を埋めるのにエネルギーを使いすぎました。過去10年間、センターは増えるどころか減り、ここ2〜3年、私たちは疲れ果てていました。

政府に国会に要求します。私たちがきちんと働けるようにしてほしい。

n番部屋事件が起きた時、演説大会で声を上げた女学生の言葉が耳元を離れません。「教室でセクシュアリティとジェンダーを学べるようにしてほしい」。

萎縮した教師に消極的な教育をさせる社会

発言7:コン・ムヨンさん
(全国教職員労働組合京畿支部)

私は現職の教師であり、女性であり、労働組合員であり、市民です。
テレグラムの性搾取部屋の中に女性教師の部屋があるそうです。
こんな社会で性犯罪防止のために教育しろというのは矛盾しています。女性を対象とした犯罪について、その原因が女性憎悪だといえば、男女の対立を助長すると非難される。萎縮した教師に消極的な教育をさせる社会は、教育を利用して女性憎悪を隠蔽しているのと同じです。

暴力は、社会内で再生産されたヘイトの延長線上にあります。この巨大な女性憎悪の構造を反省せずにそのまま維持することは、人々に女性に暴力を与えてもいいというシグナルを与えているのと同じです。この構造を解体しなければ、女性に対する性犯罪と性搾取は、加害者の名前と顔だけを変えて再生産されるでしょう。市民の皆さん、女性憎悪が票になり、お金になるのを阻止してください。

SNSの写真を消したからって、ディープフェイクが消えますか?

発言8:チ・ヘボクさん
(A学校性暴力事案・教科運営の不条理を公益通報し、不当な転勤命令を受ける。撤回のため闘っている教師)

私は教育労働者で、A学校で起きた学内性暴力問題を解決するために努力していましたが、不当転勤させられました。性暴力の問題が解決されないまま、被害学生を残して去ることはできず、不当転勤先の学校への出勤を拒否し、再びA学校に戻るための闘いを始めて8カ月目です。

私は、ディープフェイク性暴力が一朝一夕に起きたことではなく、その責任は、長い間、性差別と性暴力を放置してきた韓国の家父長制的資本主義社会と教育当局にあると思います。

ある学校では、ディープフェイク性暴力事件が起きると、女子生徒を集め、「自分で写真を消して気をつけなければならない」と言ったそうです。しかし、SNSの写真を消したからといって、ディープフェイクが消えるでしょうか? A学校に戻り、性暴力事件が正しく解決されるよう、女性労働者として、教育労働者として堂々と最後まで闘います。

ディープフェイク被害と性売買は、決して別の問題ではない

発言9. ナナさん
(反性売買人権行動イルム活動家)

ディープフェイク被害と性売買は、決して別の問題ではありません。国家と男性が積極的に主導し共犯者となって、女性を性産業に追い込み、それにより収益を得た「風俗店」の歴史があります。その中ですでに女性の身体とセクシュアリティを遊びと考えるオフラインでの歪んだ男性文化は育っていました。デジタル空間は、現実の空間と同様、男性の「性欲」を肯定し、女性の身体を経由してお金を稼いでいるのです。

だからこそ、私たちは怒りと抵抗の幅をさらに広げなければなりません。「ディープフェイク」だけの問題、あるいは「一般」女性だけの問題ではありません。男性中心の経済体制で、女性のセクシュアリティを活用して「お金」を稼ぐ女性に対する非難を止めなければなりません。

私たちは、女性のセクシュアリティと身体がなぜお金になるのか、それを利用して利益を得るのは誰か、を問わなければなりません。

9月6日、ソウル・鍾路の普信閣で開かれた「テレグラムディープフェイク性暴力対応緊急集会」の参加者たちが「フェイクでも遊びでもない。 女性嫌悪のディープフェイク、私たちがひっくり返す」「ディープフェイク 性暴力を助長するプラットフォームを規制せよ」などと書かれたプラカードを持ち光化門までデモ行進した。=韓国・ソウル

韓国サイバー性暴力対応センターを訪ねて

集会の数日後、主催の一つ韓国サイバー性暴力対応センターの事務所に、当日司会をした事務局長のイ・ヒョリンさんを訪ねました。

「どれだけ集まるかとても心配だったが、1000人を超える参加者が集まったことはこうした集会が求められていたと言えます。デモが終わって再び戻った集会の現場はなかなか解散にならないほどとてもいい雰囲気でした。
今回のディープフェイクの報道が増えるほど、悩みや不安も募る。こうした性暴力事件は今に始まったことではなく、韓国社会で反復して起きているからです。だからこそなぜ反復するのかを掘り下げなければなりません」と集会後の感想を語ってくれました。


韓国サイバー性暴力対応センターのメンバーたち。左から2番目が事務局長のイ・ヒョリンさん


韓国サイバー性暴力対応センターは、サイバー空間内の性暴力問題を解決するために活動する非営利女性人権運動団体です。①政策、制度的改善、②被害支援、③教育、認識改善を行っています。
イ・ヒョリンさんも2016年に起きたソウル江南駅殺人事件を契機にフェミニストとなり、2017年にこのセンターを友人たちと立ち上げました。
本紙で出たばかりの記事「性暴力被害者のワンストップ支援センター存続の危機」のことを伝えると、「とても似た状況で、ぜひ今後交流していきたい」と話していました。

2010年以降の韓国デジタル性暴力事件をめぐる主な動き

2010年代デジタル性犯罪との闘い始まる。
2013年ランダムチャット(不特定利用者間のオンライン会話サービス)アプリが、児童・青少年性搾取通路として悪用される。
ブログ「AV-SNOOP(AVスヌープ)」運営開始。盗撮データのレビューなどを投稿。
2015年ダークウェブで児童性搾取映像サイト「ウェルカムトゥビデオ(W2V)」運営開始
ランダムチャットで性搾取後殺害
ソラネット告発プロジェクト#ソラネットハニー運動
歌手チョン・ジュンヨン、チャットルームに同意なく撮影した違法撮影物を上げ始める
2016年4月会員数100万人を超える韓国最大のアダルトサイト「ソラネット」17年ぶりについに閉鎖
5月江南(カンナム)駅女性殺人事件
ソウル・江南駅近くの飲食店が入店しているビルの男女共用トイレで、30代の男性容疑者が「社会生活で女性に無視された」という理由から見知らぬ女性をナイフで刺して殺害した。この事件は、「女性嫌悪」による殺人だとして数多くの女性たちが共鳴し、この事件を契機に、若い世代のフェミニズムへの関心が急激に高まった。
6月カレッジダントークバンセクハラ事件
10月文化系セクハラ暴露ハッシュタグ運動
2017年4月「AV-スヌープ」閉鎖。会員数121万人で、不法撮影物を46万件流布。3年間で17億ウォンを稼いだ。運営者アンモ氏は2017年5月逮捕。2018年5月、最高裁は懲役1年6カ月を宣告。
5月盗撮データの違法アップロードで収益を上げる人間たちが癒着した「ウェブハード・カルテル」との闘い
#デジタル_性犯罪_アウト 「デジタルは女性暴力の道具ではない」
2018年1月〜ソ・ジヒョン検事の#MeToo #MeTooの巨大な波の分岐点となる。
演劇系#MeToo、カレッジ#MeToo起こる。
2019年2月テレグラムに「n番部屋」の登場。児童・青少年を脅迫して製作した性的搾取動画が共有されていたチャンネル。ムン・ヒョンウクが運営。テレグラムで性搾取が広がり始める。
3月歌手チョン・ジュニョンが芸能人が集まるカカオトーク団体チャットルームで女性を性暴行し、違法撮影物を共有した事件。
テレグラムの「博士部屋」チョ・ジュビン検挙。
10月会員数128万人余り世界最大規模の児童性搾取不法撮影物サイトダークweb「ウェルカムツービデオ」事件。児童性搾取物3055個を販売し4億ウォン余りを稼いだ。
2020年3月テレグラム性搾取事件 
4月n番部屋チョ・ジュビン顔公開(「性暴力犯罪の処罰などに関する特例法」に基づく被疑者の身元公開初の事例)
韓国政府、「大韓民国政府関係省庁合同デジタル性犯罪根絶対策発表」
6月「児童・青少年の性保護に関する法律」の一部改正に伴い、「猥褻物」という用語が「性的搾取物」に変更される。
2020〜2021年いわゆる「n番部屋防止法」施行。これは特定の法ではなく、n番部屋性搾取物製作および流布事件の再発防止を理由に国会を通過した法を称する名前。これまで7法案であり、さらに増える可能性もある。「児童˙青少年性保護に関する法律」「性暴力処罰等に関する特例法」「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」「電気通信事業法」「刑法」などの一部改正。
2021年「博士」ことチョ・ジュビンと、n番部屋を開設した「ガッガッ」ことムン・ヒョンウクは、最高裁でそれぞれ懲役42年と34年の判決が確定した。
2024年8月にMBCが連続報道した「梨花女子大ディープフェイク性犯罪事件」がきっかけとなり、ディープフェイク性暴力が社会的な課題に。女性・市民団体の抗議行動が活発になった。
特に社会問題となった事件をゴシックにした。女性たちのデジタル性暴力との闘いをオレンジにした2

記者の一言:ディープフェイク性暴力は韓国だけの問題ではありません。世界に広がっており、日本にも存在していると指摘されています。抗議の声は、韓国・中国フェミニスト女性を中心にイギリスや日本、カナダ、米国などに広がっています。また韓国のディープフェイク性暴力の素材として、日本のAVが使われているものも散見されています。

日本ではデジタル性犯罪について、被写体が児童の場合、児童買春、児童ポルノに係る行為などに関する法律により処罰対象とされてきました。しかし、被写体が18歳以上である場合、同法の適用はありません。

ディープフェイク性暴力をなくすために、プラットフォームへの緊急的な対策や法整備、充実した被害者支援が急務であるとともに、根本問題と言える「男性文化」の問い直しが必要でしょう。今後もディープフェイク性暴力問題の取材を続けます3

追記:現行法では、性的な偽画像を作成し実際に流布、もしくは流布の目的が立証された場合にのみ処罰されることになっていました。しかし、被害者の人格を傷つけるディープフェイク性犯罪を法がきちんと裁けずにいるとへの批判を受け、遅まきながら9月26日、改正法案が国会で可決しました。ディープフェイクと知りつつ性的な偽画像を所持、購入、保存、視聴した場合、3年以下の懲役か、3000万ウォン(約327万円)以下の罰金が科せられます。

  1. 「デジタル性暴力」とは、PC、スマホなどデジタル機器を用いて性的搾取を行い、相手の性的自律権と人格権を侵害する全ての暴力行為を指す。「デジタル性犯罪」とは、デジタル性暴力のうち、現行法で「犯罪」と認定されているもののこと。ただし、現在の韓国でも実際は両者の混用がみれれる。 ↩︎
  2. 韓国・京郷新聞の女性叙事詩アーカイブ<FLAT(フラット)>チャンネルが制作した「デジタル性犯罪を巻き戻す」、追跡団火花著『n番部屋を燃やし尽くせーーデジタル性犯罪を追跡した「わたしたち」の記録』(光文社)などを参考にした。 ↩︎
  3. デジタル性暴力の被害については、日本では探査報道Tansaが継続取材をしている。韓国では各メディアが取り組んでいる『サイバー地獄:n番部屋 ネット犯罪を暴く』はn番部屋事件を取材し、加害者が逮捕されるまでを描いたドキュメンタリー。ネットフリックスで配信。 ↩︎