今こそ選択議定書の批准を! 女性差別撤廃条約めぐり、国会前でアピール

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女性の人権を世界基準に押し上げる「選択議定書」 日本も批准を

女性差別撤廃条約に日本が批准して40年。節目の年に、日本政府に対し条約の実効性を高める選択議定書を批准するよう求め、「女性差別撤廃条約実現アクション」が4月17日、国会議事堂前でアピール行動を行いました。

 選択議定書は、差別を受け、国内で救済されなかった個人または集団が女性差別撤廃委員会に直接救済を申し立てることができる「個人通報制度」と、信頼できる情報に基づき、同委員会が国内状況を調査し、勧告できる「調査制度」を定めています。条約が効果を発揮し、女性への差別を解消するには議定書の批准が欠かせませんが、日本は選択議定書については批准していません。

全地方議会の2割で意見書が可決

実現アクションは地方議会に対し、選択議定書の批准を求める意見書の採択を働きかけてきました。2025年3月議会で可決されたものを含め、現在、都道府県と市区町村を合わせた1788議会の2割にあたる368議会で意見書が採択されました。

国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は昨年10月、日本政府に対し「省庁間研究会を23回開催したにもかかわらず、締約国が批准の検討に時間をかけすぎていることを遺憾に思う」と懸念を表明し、「批准に対するいかなる障害も速やかに対処し取り除く」よう勧告しています。

地方議会に働きかけた女性たちによる全国各地からのリレー報告がありました。

男女で月24万の賃金格差 「個人通報制度が必要」

大阪のワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)の石田絹子さんは、「大阪では全議会で採択されました!」と報告し、拍手が上がりました。

WWNの石田絹子さん(左)ら=東京都内

WWNは住友グループのメーカー3社の男女賃金差別を訴え、30年前に結成されました。「同期同学年の男性と1カ月に約24万円の賃金差別があったんです」

2000年の大阪地裁では全面敗訴。2003年のCEDAWの日本審議で、男女の賃金差別を訴えたところ、日本政府に対する厳しい勧告が出され、大阪高裁での勝利的和解につながりました。

「条約にのっとって日本の司法が判断すれば、差別はなくせることが確信になった。選択議定書の個人通報制度は必要だと実感しました」

採択された日は議場で記念撮影も

WWNは2020年から地方議会への働きかけをはじめ、定員80のうち半数を維新が占める大阪府議会での可決を目指しました。自民党が提案し、公明、維新が賛成し、全会一致で採択されました。その後、自民党大阪府連が、各市町村議会で意見書を採択するよう働きかけ、全市町村での採択につながりました。名刺と採択された議会の一覧表を持って、採択された日は議場で記念撮影。マップを議員に見せると、「なんですぐ隣まで来ているのにうちには今ごろ来るんや」「もっと早う来んかいや」と言われたこともありました。

今は京都で採択運動を展開。京都市議会には1年間に11回、議員回りを重ね、全会一致での採択につながりました。京都府南部の17自治体はすべて採択。京都府議会も6回訪問し、全会派と対話を重ねた結果、全会一致での採択につながりました。

女性議員4割の力

東京都武蔵野市の竹内寿恵子さん、二子石薫さんは、昨年3月の武蔵野市議会での採択について話しました。

武蔵野市議会での採択を振り返る竹内寿恵子さん(左から2人目)、二子石薫さん(左から3人目)

「女性差別撤廃条約が批准されたにもかかわらず、武蔵野市には、男女平等推進条例がなかった。まずはそれを作ろうと原案を作り、議員懇談会で働きかけた。条例は2017年に成立。議員と顔の見える関係が作れていたことが大きかった」(竹内さん)

「各会派とスムーズに連絡が取れ、話を進めることができた。市民からの陳情の形で議会に提出した。女性議員が応援してくれ、議会で賛成討論をたくさんいただいた。議員定数の4割以上が女性議員ということも大きかった」(二子石さん)

「私の物語」したためて、議員回り

東京都目黒区の広橋泰子さんは「23区は採択が遅れている。そんな中で、目黒区は女性政策では先進区。選択議定書の意見書は2022年6月に全会一致で採択されました。目黒ジェンダー平等の会が働きかけをしたんですが、ちょっと変わったやり方をしたんですね」と話しました。

「私の物語」について話す広橋泰子さん(中央)=東京都内

選択議定書の批准を自分ごととしてとらえるために、それぞれの思いを「私の物語」としてしたため、それを持って区議との面談に臨みました。

87歳の広橋さんの「物語」は1956年の就職時のこと。大卒女子の採用はなく、高卒女子も縁故採用。面接試験で「この会社に何年勤めたいか」と聞かれ、「5年」と答えるのが正解だったといいます。「25歳になるまでに結婚して退職するのが当たり前だった。女性は結婚しなければ生きていけない時代だった」

こうした市民の「物語」が女性議員の共感を集め、議員提案により一発で意見書が採択されました。

「女性差別なんかない」からのスタート

アクション山梨の日向治子さんは、山梨県内27のうち21市町村での採択を報告しました。「1年半前はゼロでした。どこに行っても議員から『女性差別なんかないよ』『うちの母ちゃん強いよ』と言われた。『選択議定書、何それ?』からのスタートでした」

山梨県内の状況について話す日向治子さん(左)=東京都内

県内で勉強会や講演会を重ね、女性議員が複数いる議会には党派を超えた共闘を呼びかけました。今後、残る6市町村と県議会に働きかける予定です。

日向さんは40年前、男女平等の条件を掲げていた大手電機メーカーに技術職として就職しました。「過渡期だからがんばらないと」と思っていました。ところが、2年前に山梨県の民間企業の女性幹部候補の座談会で、「過渡期だからがんばらないと」と同じ言葉を聞き、愕然としたといいます。

「40年先の女性たちが同じことを言わないですむように、地方からも選択議定書の批准に向け、動いていきたい」(日向さん)

日ごろの運動がすべっていた、と実感

弁護士を共同代表にして、選択議定書実現アクションを立ち上げた神奈川県。2023年以降の取り組みで県内の自治体の60.6%で採択されました。

神奈川県での意見書採択運動を振り返る沢田幸子さん(右)=東京都内

沢田幸子さんは「議員の顔を知らないなど壁が大きかった。意見陳述や説明の機会を求め、自分物語で議員に話をした。男性議員は『うちは男女平等で、母ちゃんより家事をしている』『うちの町には男女差別はないよ』と平気でいう。『選択議定書で、うちの議会に得することがあるのか』とも。議員の水準にとてもがっかりして、私たちの日ごろの運動がすべっていたんだ、足元が全然整っていなかった、と実感した」と話しました。

長野「山を動かそう、信州」で採択運動

長野県では1町を除くすべての自治体で、意見書が採択されました。2024年4月、選択議定書についての公開講座を開催し、参加した議員らが、10月のCEDAW日本審査までには地方議会で採択しようと意思統一をしてきました。6月定例議会で県と21市町村議会が採択、今年3月までに77分の76市町村で採択されました。次の6月議会で、全市町村採択を目指しています。採択を目指す連絡会「山を動かそう、信州」は現在119人の大所帯になりました。

女性たちは意見書採択状況のマップやプラカードを掲げて訴えた=東京都内

コース別賃金は違法だが、職能給の差額は賠償せず

富山県で運動を進める本間啓子さんはコース別男女賃金差別訴訟の元原告。金沢地裁、高裁の判決は、「男性を総合職、女性を一般職として賃金に差を設けるのは労働基準法4条違反」と認めたものの、職能給の差額については賠償を認めず、2016年に最高裁で上告が棄却され、判決が確定しました。

「日本は女性差別撤廃条約に批准しているものの、裁判には全く生かされなかった。選択議定書の個人通報制度が不可欠だと実感しました」(本間さん)

2020年に富山県議会での意見書採択をめざし、女性県議4人による連続講演会を開催。女性の生きづらさの解決のために、選択議定書が必要だという意識を共有しました。2020年12月に、富山県議会で請願と意見書が全会一致で採択。現在、15分の14の市町村で採択されました。

女性の権利を世界基準に!

女性たちは最後に国会に向けてシュプレヒコールを上げました。

「女性の権利、世界基準に!」

「選択議定書、今すぐ批准!」