《2026衆院選》選挙の「公正さ」に疑問の声 自治体から悲鳴、有権者には情報が伝わり切らず

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解散の表明から投開票までわずか3週間。本当に「公正」な選挙なの?

2月8日投開票の衆院選まであと1週間。高市早苗首相が1月19日の記者会見で衆院冒頭での解散を表明したのち、自治体職員は3週間後の投開票に向けて選挙の体制を整えなければならなかった。その中には衆院選と選挙期間がかぶる、2月1日、8日、15日投開票の地方選挙が予定されていた自治体も多くある。


選挙ドットコムによると、2月1日投開票の首長選は埼玉県川口市長、岐阜県岐阜市長など11。議員選(補選含む)は9。

衆院選と同日の2月8日の首長選は大阪府知事選、山口県知事選、長崎県知事選など18。議員選(同)は7。

衆院選の翌週の2月15日の首長選は東京都町田市長など5。議員選(同)は7ある。

「ポスター掲示板が見あたらへん」

これらの自治体の多くで、ポスター掲示板がいつもの場所に設置できなくなっている。埼玉県川口市は市長、市議補選のポスター掲示板の横に衆院選の掲示板を追加したが、全長が6.5mと幹線道路の2車線分に達し、敷地の狭隘さなどから716カ所中328カ所に衆院選の掲示板を立てることができなかった。

「ポスター掲示板が見あたらへん。いつもんところにないねん」

筆者は大阪市に住む友人3人に府知事選、市長選、衆院選のトリプル掲示板の撮影を頼んだが、3日後にようやく1人から写真が送られてきたのみだった。それもそのはず、大阪市では資材と人手の不足から、通常2000カ所のポスター掲示板を3分の1の666カ所まで絞っているのだ。それでも告示日に設置が間に合わなかったという。

友人が2日間歩き回ってようやく見つけた大阪市内の三連ポスター掲示板。衆院選は4人とも掲示があったが、知事選は3人中2人、市長選は5人中2人しか掲示されていない=1月30日、大阪市生野区(画像の一部を加工しています)

選挙が重ならなくとも、雪国では通常の場所にポスター掲示板が置けない、置いても雪で埋もれてしまうという事例が相次いでいる。

地元の選挙区にどんな候補者が立っているのか、有権者は新聞やテレビで確認するしかないのだ。

投票箱、投開票所の人手も不足

投票箱、投開票の人手も不足している。

大阪市東住吉区は市議補選も重なり、各投票所に投票箱が六つ必要となった。16個不足し、業者の在庫を買い足した。投票所には各箱1人と統括の計7人が必要になる。区役所と市役所本庁の他部署の職員が応援に入り、対応するという。

長崎市は県知事選、県議補選が重なったが、投票所に五つの投票箱を置くスペースがないため、三つにしぼり、2種類の投票用紙を一つの投票箱に入れる形式をとった。投開票日には投票用紙の色で、職員の目視と機械により仕分けする。380人の人手が必要になり、200人を会計年度任用職員として急募した。

多くの人が「投票券」と認識している投票所入場券の発送も遅れている。筆者が住む横浜市は有権者数313万8000人。通常は入場券を世帯ごとに一つの封筒にまとめて送っているが、このたびの衆院選では時間的に間に合わず、個人あてにはがきで送ることにしたという。同居の父には28日にとどいたが、私は30日と2日ものタイムラグがあり驚いた。地域別にではなく、年齢が高い順に送っているのだろうか。家族の中で一人だけ入場券が届いたことに気づかないケースもありそうだ。最も遅い地域は2月4日の配達になるという。本人確認書類とともに住所、氏名、生年月日を書いた宣誓書を提出すれば入場券がなくとも投票はできるが、第三者によるなりすましなど、不正が起きないとも限らない。

そして期日前投票は、衆院選は1月28日からだが、最高裁判所裁判官国民審査は2月1日から。1月中に期日前投票に行った大阪市の知人からは、「最高裁は(投票)できんかった。そやけど、期日前投票所にもう一度入れるんやろか」と疑問の声も上がっている。

これほどかように今回の衆院選は異例づくしで、私たちの投票の権利=参政権が侵害されている。そもそも、点字の選挙公報や在外投票には間に合わないスケジュールなのだ。

行政運営や職員の働き方に深刻な影響

地方自治体の首長らは年明けから次々と解散総選挙への異議を表明。

1月19日には、東京、神奈川の5首長から「衆議院解散に伴う自治体首長の緊急声明」が出された。ローカル・イニシアチブ・ネットワークのホームページから見ることができる。https://drive.google.com/file/d/1yYQa_Eelki5t-6-V4A6tUJ89p6vTJ6E5/view

1月22日までにさらに10首長が賛同した。

呼びかけ人の一人、東京都杉並区長の岸本聡子さんは「掲示板を立てるのにも業者の奪い合いがあった。杉並区は人口58万人、職員は1300人だが、選挙事務には4000人が関わることになり、人手も時間もとられる」と指摘する。

緊急声明はこの時期の自治体について、「新年度当初予算編成のまっただ中にあり、予算議会を目前に控え、年間でも最も業務が集中する時期にあります」「日常業務に加え、国の経済対策への対応、さらに選挙事務が短期間に集中することは、今後の行政運営や職員の働き方に深刻な影響を及ぼしかねません」と記す。

岸本さんは「政策を見比べる機会がないまま、投票せざるを得ない人もいる。雪国の人や受験生の中には投票できない人も。本当に公正な選挙だろうかと疑わざるを得ない。本質的な意味での投票権が守られていない」とみている。

緊急声明の末尾には「今回の事態を契機として、政権による解散権の行使の在り方、乱用を防ぐための制度や議論を、社会全体で改めて行うことを強く求めます」とある。

「公明かつ適正」な選挙なのか

公職選挙法第一条はその立法趣旨を次のように規定する。

「この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする」

結果は1週間後に出る。しかし、「公明かつ適正」に行われた選挙なのか、その結果は「有効」なのかどうか、私たちは鋭く問い続けなければならない。