NHKがインターネットサイト「みんなでプラス」内に、2019年に開設したサイト「性暴力を考える」が昨年9月30日をもって閉鎖されました。放送法改正に伴い、10月1日から新しいインターネットサービス「NHK ONE」を移行したためです。「みんなでプラス」は視聴者との双方向のやりとりが特徴のプラットフォームでした。「性暴力を考える」にも多くの性暴力被害者、研究者らが関わり、NHKの記者やディレクターとともに、いたわり合いながら社会課題と向き合う場を作ってきたといいます。しかし、閉鎖について未だに外部に説明はありません。性暴力被害者、研究者らでつくる<NHK「性暴力を考える」サイト存続を求める会>有志が今年1月15日、総務省にNHKに対し、サイト閉鎖の理由を明らかにするよう求めました。
市民と共に作る「課題解決型のプラットフォーム」
有志は昨年9月19日〜今年1月14日に集めたサイト存続を求める署名22,272筆を総務省に提出しました。昨年9月1日に閉鎖が発表された後、NHKの複数の窓口に繰り返し説明を求めてきましたが、はっきりとした返答はないままだといいます。
要望書は、林芳正総務相と、放送法改正を審議してきた「デジタル時代における放送制度のあり方に関する検討会」座長の三友仁志氏あて。
「性暴力を考える」サイトについて、「NHKが情報を公開する前提で性暴力被害者に対し取材を行い、コミュニティを運営し、そこで行われた議論や調査結果が刑法改正に結びついた事実を考えれば、市民と共に作る『課題解決型のプラットフォーム』と呼ぶのが相応しい」と評価し、2点を要望しました。
1)NHKの必須業務化に伴い、ネット活用業務においては放送と“同一の価値”を提供するとなりましたが、そのことによって、多くのサイトが閉鎖となりました。改正された制度では「性暴力を考える」のようなサイトを閉鎖すべきという規制がなされたのでしょうか。そうであれば、このサイトはどのような部分が規制に該当するのでしょうか。
2)検討会の場において、ぜひNHKに対し「性暴力を考える」閉鎖理由の説明をするよう、促してください。そのうえで、性暴力被害者や現場の記者を含むステークホルダーとの対話およびアカウンタビリティを確立するよう促してください。
総務省からは1点目について「国からの規制の事実はなく、すべてNHKの判断である」、2点目について「総務省の検討会では個別の事案について働きかけは難しいが、検討会の座長に要望書を渡す方向で検討する」と返答があったそうです。
性暴力被害者の声を可視化し、政策に反映するのに不可欠
要望書を提出後、存続を求める会のメンバーで、性暴力被害者で元ライターの池田鮎美さん、性暴力被害当事者の岩田美佐さんが記者会見を開きました。

池田さんは「性暴力を考える」サイトが果たしてきた役割として5点を挙げました。
- 性暴力の構造やトラウマについての正しい理解が進む「きっかけ」を日本社会に与えた。
- 被害者のみならず、家族や友人、弁護士が、被害にどう対応したらよいかを「学ぶ」ことができた。
- このサイト自体が、被害者や記事を読んだ人がつながり、支え合う「場」となっていた。
- 2022年に実施した「実態調査アンケート」に3万8千件を超える回答があり、刑法改正につながった。
- このサイト自体が、当事者の声が社会を動かした「歴史の記憶」となっていた。
「日本は100年以上にわたって性暴力があってもほとんど加害者を有罪にできなかった。この事実を甘くみてはいけないと思っています。性暴力被害者の声を可視化し、政策に反映していく、つまり民主主義的なプロセスに被害者が参加するには、このようなプラットフォームの存在が不可欠でした」(池田さん)
「本来、このようなプラットフォームは様々な活用法が考えられ、総務省の検討会でそのような革新性が見落とされてしまったことは残念です。未来のためにこそ必要なプラットフォームだったと思います。性暴力に関する情報は命に関する情報でもありますので、見つけやすいところ、目立つところに普段から表示しておいてほしいと思います」(岩田さん)
有志は署名活動を続行しています。

相模原障害者殺傷事件を考える「19のいのち」も復活を
「みんなでプラス」内にあった他のサイトについても、復活を求める声が上がっています。
2016年7月16日に発生した相模原障害者殺傷事件を考えるサイト「19のいのち」も昨年9月30日をもって閲覧できなくなりました。
サイトには事件で殺害された19人のエピソードや似顔絵が掲載され、随時更新されていました。被害者遺族の多くが、氏名の公表を望まない中で、亡くなった人の人となりに触れ、その生命を悼む数少ない場所でした。7.26追悼アクション有志とリメンバー7.26神戸アクションが共同で、すべての人がページにアクセス出来る状況に戻すよう署名運動をしています。(締め切りは2月28日)

サイト終了は「新しいルールに則ったNHKの編集判断」
生活ニュースコモンズはNHKに対し、「みんなでプラス」で公開されていたサイトの復活を求める声が上がっていることに関し、以下の2点について回答を求めました。
1)閉鎖の理由、経緯について
2)再開の可否について(形を変えたミラーサイトのようなものでも難しいか)
NHKからは1月28日付で文書回答がありました。
1)閉鎖の理由、経緯について
NHK のインターネットサービスは、昨年9月末までは放送法、インターネット活用業務実施基準に基づいて運用していましたが、改正放送法が施行された10月1日からは改正放送法、番組関連情報配信業務規程、NHK任意的配信業務実施基準などに基づいての運用になりました。
放送法改正にともない、NHKでは新しいルールへの適合性と正確な情報を持続的に提供できる体制面などの観点から、過去に掲載しているものも含めたインターネットサービス全体を対象にサービスの見直しを行いました。その結果、NHK の編集判断としていくつかのサイトの公開を終了しました。
2)再開の可否について
過去に掲載したものでも公開を継続する場合は、現在のルールに則っていることが前提となるため、閉鎖したサイトをそのまま復活させることは考えておりません。今後も、ルールに則った上で NHK としての編集判断を行い、お伝えすべき内容を視聴者の皆様にお届けしてまいります。

