憲法集会で語られた「日本」の改悪
「ウクライナ、パレスチナ、ベネズエラ、イラン、レバノン、そして『日本』の改悪。武器輸出、国家情報局、スパイ防止法の問題や自衛隊の演習事故。新聞を読み、ニュースを見るたびにざわざわと胸が苦しくなる毎日です。この地球に住む誰もが平和を望んでいるはずなのに、どうして戦争は繰り返し起き続け、なくならないのでしょうか。同じ空が続く地球上で、たった今も爆撃が繰り返され、多くの人々が命を落とし、危険にさらされている。戦争を放棄したはずの日本も再び戦争の道を歩み始めている」
「今こそ、私たちの国の憲法が何を守ってきたかを再認識し、再び戦争へと進もうとしていることを止めなくてはならない。同時に今こそ、日本中の原発を止めなければならない」
日本国憲法が施行されてから79回目の記念日である5月3日、国内各地で憲法集会が開かれた。東京都江東区の東京臨海広域防災公園であった集会には約5万人が参加(主催者発表)。冒頭の言葉は、福島県三春町の武藤類子さんが、市民リレートークで発言したものだ。
「私たちは国に棄てられたのだ」
武藤さんは、2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から半年後、東京で開かれた「さようなら原発集会」に登壇した。
「真実は隠されるのだ。国は国民を守らないのだ。事故はいまだに終わらないのだ。福島県民は核の実験材料にされるのだ。莫大な放射能のゴミは残るのだ。大きな犠牲の上になお、原発を推進しようとする勢力があるのだ。私たちは国に棄てられたのだ」
武藤さんの、静かに、でも力強く、語りかけるような言葉が、大勢の人たちの胸を打った。
あれから15年。原発事故被害者団体連絡会の共同代表を務める武藤さんに、なおも、こうした思いをさせているのが、日本という国であり、この国の市民社会であることを痛感した。

復興予算で軍事転用可能な技術を開発
武藤さんの言を借りると、原発の構内では過酷な被ばく労働が続き、汚染水が海に流され、除染で集めた土が「復興再生土」と名付けられ、全国の公共事業で使われようとしている。
小児甲状腺がんの多発、避難者の住宅追い出しの裁判、避難解除をしないままの帰還困難区域内での活動自由化など、理不尽で困難な問題が山積している。その中で、沿岸部で進む国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」や、浪江町に設立された「福島国際研究教育機構(F-REI)」によって、ロボットやドローン、ロケット、軍事転用が可能な技術の開発が、莫大な復興予算を使って行われている。
どんなに願っても元の身体に戻ることはできない
甲状腺がんの問題については、「311子ども甲状腺がん裁判」の原告意見陳述集が3月に刊行された。裁判は、事故当時、6~16歳だった7人が、国や福島県、東京電力などに損害賠償を求めて2022年1月に提訴したものだ。東京地裁で裁判が続いている。原告はいずれも甲状腺がんと診断され、うち3人は再発を経験している。意見陳述集には、過酷な闘病生活、将来への不安など、法廷で語られた苦しい胸のうちがつづられる。がんが再発し、治療のために大学を中退した女性は、体に残った手術跡を見た人から「自殺未遂でもしたのか」と心ない言葉をかけられた。そして「もとの身体に戻りたい。そう、どんなに願っても、もう戻ることはできない」と訴える。

日本での小児甲状腺がんの発症数は100万人に1人程度といわれるが、福島県での18歳以下の38万人調査では300人超に甲状腺がんかその疑いがあることが判明した。これに対し、東電側は体内に隠れている無害ながん細胞を検査で見つけるなどの「過剰診断」によるものであり、原発事故によるがん多発ではないと主張する。弁護団は、「国のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)のデータなどが隠され、被災者の知る権利が侵されている」と指摘している。意見陳述集を作成した「311甲状腺がん子ども支援ネットワーク」(事務局03-3296-2724)は、事故の記憶が薄れつつあるいまこそ、原告たちの思いを多くの人に伝えたいという。
「権力を監視するのが憲法の役目」と言われる。アジアの多くの人々の尊い命が犠牲になり、その教訓からつくられた平和憲法を、暮らしに、社会にどう生かすか。それは私たち市民やメディアに向けられた課題でもある。(元新聞労連委員長・明珍美紀)

