2025年5月に自民党の西田昌司参議院議員がひめゆり平和祈念資料館の展示について「歴史の書き換え」などと暴言を吐いたことを覚えていますか? 発言もさることながら、東京都千代田区永田町にある自民党本部前で市民らが西田氏の辞職を求め抗議活動をした際、多数の警察官が動員され、市民らを圧迫、通行を妨害した過剰警備も問題になりました。抗議活動を主催した有志が警視庁に対し、情報公開請求をし、その上で非開示に対する不服審査請求と口頭意見陳述を行いました。「沖縄への偏見をあおる放送を許さない市民有志」の川名真理さんにご寄稿をいただきました。
警備計画書と報告書の開示を警視庁に請求
2025年5月に自民党の西田昌司参議院議員がひめゆり平和祈念資料館の展示について「歴史の書き換えだ」などと述べたことを受け、沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志(以下、市民有志)は同年5月16日、自民党本部前での抗議行動を呼びかけ、4日後の20日には自民党総裁と幹事長に西田氏の議員辞職を求める要請文を自民党本部管理課の増田氏に手渡しました。
両日ともに過剰な警備があり、とくに16日には多数の警官が人の壁を作って早くから集まっていた参加者約40人を歩道の縁ギリギリまで押し込め、身体接触によりケガをしたり不当逮捕されたりしかねない状況でした。さらに抗議に参加しようとした約50人が理由もなく警官に通行を妨害され、自民党本部前の私たちと合流できませんでした。20日は増田氏と日時を調整し、参加者は4人と伝えた上での要請行動だったのに、車道の両側に警察車両がびっしり並び、いつでも「ジャバラ」(遮蔽幕)で道路封鎖ができる体制を取るなど、より厳格な警備体制が敷かれていました。また警官が「全員揃わないと通さない」と勝手に条件をつけて自民党に行くのを阻んできました。
こうした過剰警備に納得がいかなかったため、情報開示請求の経験が豊富な渥美昌純さんに依頼し、この二日間の警備計画書と報告書の情報開示を警視庁に請求しました。2025年7月8日に「不開示決定通知書」が届きました。結果は「文書の存否を明らかにせず不開示」もしくは「文書不存在」。納得できるものではありませんでした。しかも「おや?」と思う不審な点もありました(警備計画書に20日の「要請行動」が「抗議行動」と書かれていたのです)。渥美さんから、希望すれば不服審査請求ができ、意見も述べられると聞き、できるところまでやってみることにしました。

録音・録画は禁止
それが実現したのが2026年4月23日。午前10時に警視庁前に渥美さん、市民有志の仲間のFさん、川名の3人が集まりました。その顛末をご報告します。
警視庁の受付で通行証を受け取り中に入ろうとすると、録画・録音は禁止なのでスマホを預けるように言われましたが、やりとりに必要な書類がスマホに入っていることを理由に拒否しました。身分証明書の提示も求められました。
案内された部屋に入ると、法廷のように椅子とテーブルが配置されていて驚きました。裁判長が座る場所に司会者(警視庁警務部管理官の畑尾伸之介警視)、原告と被告が座る場所に警視庁警備第一課庶務係2名と私たち3名が対峙して座り、傍聴席にあたる場所に、「この件を扱う事務官」といわれる人たちが数名座っていました。
三つのパターンをロボットのように繰り返す
まず司会役の畑尾氏から進行方法について希望があるか尋ねられ、渥美さんが「事前に質問を出すよう求められていたので、その質問に答える形で進行してほしい」と伝えました。
以下は質問と警視庁側の回答です。質問は私たちが追及したい点をヒアリングした上で渥美さんが8項目に整理してくれました。警視庁側の回答は三つのパターンをロボットのように繰り返すだけで、それ以上のことは一切、答えませんでした。
Q1 自民党本部前を通行する際、常に制服を着た警察官が警備している。従って警備報告書は毎日作成されていると考えているが、非開示なら理解できるが不存在扱いされたことは理解できない。5月16日の警備報告書は本当にないのか。ないとしたらどのような理由で作成していないのか、説明せよ。
→A1 報告書は検索したがなかった。
Q2 市民の抗議行動なり申し入れ行動なりが行われた時に警備報告書を作成する運用なら、5月16日の抗議行動について警備報告書が作成されていない理由について判断できない。非開示決定ではなく不存在決定をした以上、その理由について説明せよ。
→A2 今後の警備に差し障るので答えられない。
Q3 5月20日の行動は申し入れ行動として企画し、自民党にもその旨を事前に連絡して了承している。その行動を抗議行動としたのは自民党からの連絡か。それとも警視庁麹町警察署長の判断か。どの部署が5月20日の行動を抗議行動としたのか。説明されたい。
→A3 今後の警備に差し障るので答えられない。
Q4 5月20日の行動は申し入れ行動で抗議行動ではない。抗議行動ではなく申し入れ行動と訂正することを求める。その際の訂正申し入れ先を示されたい。
→A4 別件なので答えられない。
Q5 5月20日の行動に対する警備計画書として5月19日付「自民党警備行動抗議について」(報告(麹町.備2)第927号)に対応していると考えているが、5月20日当日の警備報告書に該当する文書が見受けられない。なぜ警備計画書があるのに5月20日当日の報告書がないのか。5月19日付の警備計画書が黒塗りとはいえ開示された以上、5月20日の報告書も公開するべきではないか。
→A5 報告書は検索したがなかった。
Q6 5月16日の抗議行動では自民党本部の正門前で抗議行動を考えていたが、警察から自民党本部正門前での抗議行動を阻止された。正門前でさせないという理由や根拠は何か。そのような理由や根拠があるなら具体的に示されたい。
→A6 別件なので答えられない。
Q7 5月16日の抗議行動に参加しようとしたら歩道を通行する人を規制し足止めされた例を聞いた。抗議行動に参加しない人の通行は足止めしないのに、抗議行動に参加すると警察が判断すると規制し足止めする法的根拠は何か。
→A7 別件なので答えられない。
Q8 5月20日の申し入れ行動は自民党に事前に連絡し、参加人数も4人と決定した上で、その人数で申し入れた。にも関わらずジャバラやかまぼこ車が用意されており、過剰警備に感じ、一般市民への申し入れ行動をさせにくくする圧力を感じた。このような体制を取ったのはなぜか。自民党側の要請か、警視庁麹町署の判断か。示されたい。
→A8 今後の警備に差し障るので答えられない。
このやり取りで私がもっとも腑に落ちなかったのは警視庁が庶務係を出してきたことです。彼らは該当する日に自民党本部前にいたのかと尋ねたところ、それにも答えられないということでした。もう一点、気になったのは「なかった」と言わず、「検索したが、なかった」と回答している点です。言葉の綾で逃げ道を作っているのではと感じました。

報告書がないのはおかしい
不満だらけでしたが私からは2点に論点を絞って不服を申し立てました。
不服1
あれだけ大規模な警備をしながら、5月16日も20日も報告書がないのはおかしい。本当とは思えない。沖縄・高江の米軍ヘリパッド基地建設現場へ県外6都府県の機動隊が派遣されて「警備」を行った際、千葉県警の情報開示請求では「ない」と言われた警備報告書が沖縄県警の情報開示請求で見つかった例があるのを知っている。回答は虚偽ではないのか。不服を申し立てる。
不服2
質問8について「今後の警備に差し障るので答えられない」という回答に特に納得がいかない。どんな警備だったのか、私は現場にいて現認している。自民党の担当者とも私が直接やりとりをしている。自民党の担当者は、自分は警察に連絡を入れていないと言っていた。それが本当なら警察の判断ということになる。事情を半ば知っている当事者に対し、「今後の警備に差し障るので答えられない」という理由は理由になっていない。不服を申し立てる。
西田議員は謝罪も撤回もしていない
また、やり取りの合間に、私は次のように意見を述べました。
今回なぜ自民党に抗議したのか、この場にいる人に理解してもらいたい。西田議員がひめゆりの展示に関して事実に基づかない歴史捏造発言をし、撤回も謝罪もしていないからだ。当時の石破首相もこの見解は誤りであると玉城デニー知事の前で謝罪した。それほど明らかな過ちなのに、自民党は放置した。だから抗議せざるを得なかった。
私たち市民有志はこれまでも社会的に影響力のある人や企業が、沖縄への偏見をあおるようなデマを流したとき、そのつど抗議してきた(例:TOKYO MXテレビやDHC、講談社)その抗議スタイルは、横断幕を広げてリレートークをするおだやかなもの。まるで暴徒のように規制されるようなことはいっさいしていない。身動きも取れないほど取り囲んで圧迫してくるのは恐怖でしかなく、国家権力が市民のおだやかな抗議行動を威圧した。これは憲法違反、人権侵犯だ。
また20日に関しては、自民党の担当者と日時や参加者の人数を打ち合わせの上、要請書を渡す「要請行動」なのに、16日以上に強い警備体制が敷かれた。警備計画書に「抗議行動」と書かれていたことを情報公開請求で初めて知った。これには心底驚いた。当日「全員揃わなければ通さない」など警察が勝手なルールをその場で作り、要請書を渡しに行くことを阻んだのも人権侵害だ。過剰警備と合わせ、市民を威嚇し恐怖を与えるものにほかならない。憲法違反ではないか。こんなにひどいことが行われたのに、起きたことが誰にも知られず、なかったことにされていいのか。警察が社会のためにあるというのであれば、このようなことがまかり通っていいはずがない。とても残念だし、理不尽だ。
市民を足止めした法的根拠を示せ
同席した2人からは、主に次のような意見が述べられました。
1 一方的に規制し、市民を足止めした法的根拠を明示すべき。示せないのであれば、不当な規制をやめるべき。
2 不服審査請求という制度があるにもかかわらず誠意のない回答ばかりで、警察への感情を悪化させる効果しかない。それでは本来の意味がないのではないか。市民を足止めした法的根拠を示せ。示さないから警察との関係が悪化する。
終了後、3人で感想を述べあったなかで渥美さんは「あまりにもひどい回答だった。当日の警備責任者が出てこなければやり取りにならない。対面してやり取りした意味がなかった」とネガティブな評価をしていましたが、後日、「国会や官邸前で抗議行動などを主催する市民団体が逐一、警備体制について情報開示請求をしたら、回答がほぼ黒塗りの文書だとしてもわかることがいろいろ出てくるはずで、大変だけどやる意味がある」とも述べていました。Fさんは「不服審査請求と口頭意見陳述がどんなものかわかったのは成果だった。ほとんど知られていないのでは」という感想でした。
今回の不服審査請求のやりとりは記録として残り、情報開示請求をすれば内容を見ることができるそうなので、どのように記録されるのか、ぜひ読んでみたいものです。
この経験が警察の過剰警備への抗議方法の一つとして、市民運動に関わる方たちの参考になれば幸いです。
かわな まり 1963年東京生まれ、埼玉育ち。フリーの編集者として小中学生向けの雑誌に携わる。同誌で「偽ニュースの見分け方」特集も担当した。「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」呼びかけ人。行動等はXの@nonewsjyoshiで発信。

