女性が困っていることは決まらず、男性の困りごとには即対処 離婚後共同親権を含む民法改正案を閣議決定

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女性の困りごとは解決が遅いのか……

国際女性デーの8日、岸田内閣は離婚後の共同親権に道をひらく民法改正案を閣議決定しました。

同日には選択的夫婦別姓の実現を求める第3次訴訟が提起され、その原告の何人かは氏の変更を希望しないため、法律上の婚姻ではない事実婚で子どもを育てており、「父親に親権がない」との不便を訴えていました。子どものことについて、同居して子育てに関わっている人に決定権がないというのは、大変に不便で不安定な立場だと思います。ワクチン接種などの医療行為の同意すらできないのですから。

こうした実情を汲んで、選択的夫婦別姓を求める人の中に、共同親権に賛成という人が少なくないことは理解します。しかし、それは選択的夫婦別姓の実現によってかなえるべき課題です。民法改正により、配偶者の暴力や虐待から子どもを連れて逃げた人にまで、共同親権を強制されるようなことがあってはなりません。現行案の共同親権は弱い立場の人に追い打ちをかけかねないという点でやってはならないことなのです。

「離婚後共同親権」から子どもたちを守ろう実行委員会による法務省前のスタンディング=2024年1月30日、東京都千代田区

3年の議論で決まる共同親権、30年店ざらしの夫婦別姓

今改正の要綱案を議論した法制審議会家族法制部会では、「3年も議論したのだから、もう十分だ」という声が民法学者らから上がっていました。一方で、選択的夫婦別姓は、議論開始から30年、法制審議会の答申から28年以上も、国会の不作為によって店ざらしになっています。

3年と30年。

夫婦別姓の記者会見場で、支援者の女性が言っていました。「日本という国は、女性が困っていることは全く決まらず、男性の困りごとには即対処」

バイアグラと経口避妊薬の認可のスピードに感じた差は、そのまま離婚後共同親権と選択的夫婦別姓にあてはまります。論点としては同じ。でも解決のベクトルは真逆なのです。

困っている人、弱い立場の人、とりわけ女性と子どもにとって、暴力による支配関係が継続しないように、国会では離婚後共同親権について慎重に議論が尽くされることを願います。

昨秋から院内集会や記者会見に取り組んできた当事者と支援者による団体「離婚後共同親権」から子どもを守る実行委員会の、閣議決定を受けた声明をシェアします。(望)

共同親権に慎重な立場から、本日3月8日、岸田内閣は、「離婚後共同親権」導入を柱とした民法改正案を閣議決定しました。私たち「離婚後共同親権」から子どもを守る実行委員会は、子の利益を損ねる「離婚後共同親権」を導入する民法改正案に反対します。

民法改正案は、父母の合意がない場合でも、家庭裁判所が共同親権を命じる制度です。子どもの進学・医療、保育、居所などの決定に、共同親権者(父母双方)の許可が必要となります。離婚に至った関係性の父母に共同親権を強制すれば、子どもは身動きが取れず、子どもの希望は塞がれてしまいます。離婚後も長期間にわたって両親の紛争下に置くこととなり、子どもの利益を大きく損ねるものです。

また、親権者の決定にあたっては、協議離婚では、DV・虐待があっても共同親権に合意させられる事案を除外できません。裁判離婚においても、DV・虐待について証拠不十分で立証に失敗すると共同親権となる可能性が高く、離婚後も子どもと同居親を加害者がコントロール(支配)することを許容する制度となる懸念が払拭できません。

とりわけ、単独での親権行使を認める「子の利益のための急迫の事情があるとき」との文言は、DV・虐待事案での子連れ別居を規制する危険性をもたらすばかりか、単独での親権行使を現行法より強く制限するものであるため、離婚家庭以外の広く一般の家庭や子どもと関わる業界に大きな影響を与える制度変更であり、国会審議では、DV・虐待の当事者・支援者等を参考人に呼び、条文を修正することを求めます。

離婚後共同親権導入について、専門家は「DV虐待保護法制や社会的システムが格段に劣る日本での犠牲は、先進諸外国とはくらべものとならないくらい激烈なものとなる可能性が高い」と警告しています。

命に関わる重大な問題であり、国会では、徹底して議論を尽くすことを強く求めます。

2024年3月8日
「離婚後共同親権」から子どもを守る実行委員会代表世話人
熊上崇(和光大教授)
北仲千里(N P O法人全国女性シェルターネット)

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