【動画あり】「できるだけ離婚できないような社会に」 共同親権めぐり自民党議員が発言

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共同親権で「できるだけ離婚できない社会」に?

共同親権を導入する民法改正案の審議が衆議院で進んでいます。

参考人招致を交え共同親権に反対、慎重、推進の立場から各議員が、疑問点や不明点について法務省などに問いただす中、4月5日の衆議院法務委員会で、自民党の谷川とむ衆院議員がこう発言しました。
「できるだけ離婚できないような社会になればいい」

離婚事件を多く手がける太田啓子弁護士は憲法24条を引用し、谷川議員の発言に疑問を呈しました。
「個人の尊厳を守るために“離れられる自由”は大事です」


まずは、こちらの動画(1分55秒)でお聞きください。

「離婚しづらい世の中の方がいい」

衆議院法務委員会で質問する谷川とむ議員=2024年4月5日

谷川とむ議員は質問の冒頭で、ある日家に帰ったら妻子がいなかったという男性のエピソードを引き合いに出し、「”子の連れ去り”防止のために」として、共同親権の導入を求めました。「離婚できないような社会」というのはその質問の中で出た言葉です。

「特段の事情、DVや児童虐待ない限りですね、離婚しづらい社会になる方が健全だと僕は思っています。だからですね、やっぱり、離婚して誰も得しないです。みんな傷つくんです。子どもも親も。だからできるだけ仲良くできるようにしていくのが一番のあれですけど、やっぱり子どものことを考えればですね、離婚しづらい世の中の方が、それはみんな仲良くという意味ですけど、いいと思います。先ほども申しましたけど、DVや児童虐待があってですね、残念ながら離婚するというのは否定するものではありませんけれども、できるだけ離婚できないような社会になっていく方が僕はいいと思っていますのでその旨をお伝えさせていただきます」

法務省民事局長 法改正で「”子の連れ去り”の改善」

谷川議員から民法改正が子の連れ去りや親子交流の履行にどのような影響を与えうるかと聞かれ、法務省の竹内努民事局長は、民法改正案の「離婚後の子の養育に関し、父母が互いの人格を尊重し、協力しなければならない」という規定をひき、「父母の一方が子の居所を勝手に決めたり、親子交流の取り決めを守らなかったりした場合は、法に定める人格尊重義務や協力義務に違反する」としました。その上で、民法改正は「”子の連れ去り”の改善に資する」「親子交流の履行率の上昇に寄与するものと考える」と答弁しました。

「離れられる自由は大事」 個人の尊厳や本質的平等を侵す発言

インタビューに答える太田啓子弁護士

離婚事件を多く手がける太田啓子弁護士は一連のやりとりに驚きを隠しませんでした。太田弁護士は共同親権の導入で、DVや虐待から母子が避難できなくなる、逃げられなくなると心配しています。谷川議員の「離婚できないような社会」発言について、こう話しました。

個人の尊重というのが、一番大事な価値観です。あらゆる組織、国家や社会、家族は個人のためのものであるべき。個人が尊重されず、そこで苦しい抑圧を受けるのであれば、そこから個人を解放してあげる、離してあげることが必要になる。離れられる自由がすごく大事だし、憲法24条もそういう理念を謳っている条文だと思います」

太田弁護士はこう続けました。
「個人の尊厳と両親の本質的平等をないがしろにし、離婚の自由を制限していいというようなことを国会議員が言うのは恐ろしいことです

憲法学者「平等な関係性を飛ばして共同親権導入あり得ない」

太田弁護士は離婚後共同親権の導入に反対する集会に寄せられたある憲法研究者のメッセージも紹介してくれました。そこにはこう書かれています。

配偶者間の対等な関係性がない中での共同親権制の導入は強者を利するだけで、それは憲法24条2項の個人の尊厳と両性の本質的平等を鍵とする立法秩序の視点から考えると、少なくとも『現段階』ではありえないことだと強く思います」

「憲法24条は『両性の本質的平等』よりも前に『個人の尊厳』を持ってきていることに意義の一つがあり、法的救済に大きくかかわる個人の尊厳という概念を無視した立法はあり得ません。また、本質的平等にしても、共同親権制の前提となる〈公平性をベースとする平等な関係性〉が日本社会においては浸透されていないことを考えると、まずはそれに向けて権力関係の改善に取り組む施策を講じるのが先であって、それを飛ばしての共同親権制の導入はあり得ないことです」

「したがって、離婚後も元配偶者による支配が継続される可能性が高いような社会状況において、個人の尊厳を脅かしかねない憲法24条2項に反するような立法には賛成できません。 つまり、公平性に基づく平等の前提となる環境が整っていない中での立法は、反憲法的であるともいえ、結果的にそれはジェンダー平等の後退をもたらしかねません」

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