使途不明金約800万円 ひとり親世帯支援のNPO法人

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 ひとり親世帯を支援する認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都千代田区・赤石千衣子理事長)は2日東京都内で開いた記者会見で、同法人の会計に、2019年度から2022年度の4年間に802万円7603円の使途不明金が生じていたことを明らかにした。

 同法人によると、今年5月に現金有高の不足が発覚し、内部調査を進めてきた。調査の結果、会計担当の職員によって帳簿の改ざんや未計上による、不正な会計処理が行われていたという。同法人はこの職員に対して、10月27日に刑事告訴の手続きを開始し、10月31日付で懲戒解雇とした。また、同法人の赤石理事長と事務局長2名を減給処分とした。同法人はまた、NPO法人の有識者や弁護士などで構成される第三者調査委員会を設置し、10月13日に第1回の委員会を開催。今後も同委員会が会計不備について調査を続け、来年1月に報告書を出す予定。

記者会見で不正会計について説明するしんぐるまざあーず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長(中央)ら

 同法人によると、2023年7月に別の会計担当が2021年度の会計について銀行口座の通帳記帳と帳簿の照合により、口座に振り込まれた複数の匿名の寄付金が帳簿では未計上であることを発見。さらに口座から引き出されている現金160万円も未計上だったことが判明したという。

 さらに2020年度会計についても、2021年度と同様、複数の匿名寄付が未計上であるとともに、178万円の現金引き出しが未計上であることが確認された。2019年度会計については、現金250万円が帳簿上、銀行口座に入金されたことになっているにもかかわらず、実際には口座に振り込まれていなかったという帳簿の改ざんが見つかった。その他さまざまな取引において、銀行口座から振り込んだ実際の支払額より水増しされた金額が帳簿に記載されており、口座残高と帳簿上の期末残高が一致するよう、帳簿が不正に操作されていたことが分かっているという。

 同法人によると、解雇された職員は2016年から法人と雇用関係にあったといい、会計を担当していた。現在、同法人は2018年度まで遡って5年間の会計の調査を進めている。新型コロナの拡大背景に支援事業が拡大した2020年ごろから領収書などの証憑が未整理状態であることが判明しており、現在整理を進めているという。すでに現段階で、証憑と帳簿の突き合わせで、金額相違や仕分け間違い、請求漏れなどが多数見つかっており、帳簿を一から作成し直しているという。

 同法人は、不正が起きた環境要因として、コロナ禍で予算規模が急拡大し、業務量が急増したと説明する。コロナ前は4000万円、6000万円だった事業規模が、2020年には4億円を超えるまでになった。同法人の収入源は、個人や団体の寄付のほか、同法人が国や東京都から請け負っている女性やひとり親家庭に対する支援事業の委託料や補助金など。2022年5月までは解雇された職員一人で会計を担っていたが、その後は複数体制で会計業務を行う対応をとっている。

 同法人は2018年から東京都の認定NPO法人となっており、5年目にあたる今年10月14日に満了日を迎えている。今回の不正会計処理を受けて、同法人は認定基準に不適合になる可能性がある見通しを示した。

記者会見で不正会計について説明するしんぐるまざあーず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長

 赤石理事長は「連携して協力してくださる皆さまが私どもの団体の事業を信頼して力を貸してくださっていた。この信頼を裏切ることになり、慚愧の念に堪えません。きちんとしたNPO法人として再生するために努力を続けるつもりです。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪した。 
(吉永磨美)

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