止まらない物価の上昇。
働いたら働いただけ、がっつり取られる税金。
毎日毎日、苦しい思いと、なんとかして子どもたちを守らなければという必死の思いで胸がはち切れそうです。
息子が最近、不登校になりました。
生きていてもつらいだけと口にしました。
話を聞けば、貧困がいじめにつながっていると…。
仕事を掛け持ちしようか…寝ずに働かないと生活できないのか…決して贅沢をしたい訳ではありません。
もうどうしたら良いのかわかりません。
東京都で子ども2人を育てるシングルマザーの声だ。
4人に1人が「年収の壁」考え、就労制限
ひとり親の4人に1人が、児童扶養手当や奨学金などを受給するために就労を制限した経験を持つことが、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)の調査でわかった。最低賃金が上がる一方で、各種手当や給付の所得制限の見直しが追いつかず、ひとり親が働く時間や日数を制限して年収を調節している様子がわかる。また、物価高の影響で、低く抑えた収入と児童扶養手当だけでは最低限の生活が成り立たず、食事もまともに取れない状況にあることも浮かび上がった。
調査は同団体のメールマガジン会員約1万人とNPO法人横須賀ひまわりの公式LINE登録者233人を対象に、2023年12月中旬にWEB上で行った。20歳以下の子どもがいる世帯の2393人から有効回答があった。
賃金「下がった」26%
11月中に収入を伴う仕事をした人は85%、そのうち、仕事を掛け持ちした人は13%だった。雇用形態はパートが37%、正社員等が34%、派遣社員、アルバイトが各7%、非常勤職員が3%だった。11月の就労収入は12.5万〜15万円が最も多く、半数が月収17万5000円未満だった。岸田内閣は実質賃金の上昇を目標に掲げているが、昨年と比べて賃金が「上がった」は19%にとどまり、「変わらない」が55%、「下がった」も26%いた。収入の不足を補うために副業をしている人も337人に上った。宿泊業、飲食サービス業が40人と最も多く、次いで介護職19人、その他サービス業17人。キャバクラ、ホステスなどの「夜の接客業」も8人いた。
給付金や手当、奨学金などの社会保障制度を利用するために、所得制限を考えて就労収入を抑えた事があるかどうかを聞いたところ、26%が「ある」と答えた。その際、年収の上限をいくらと考えているかを聞いたところ、住民税非課税ラインで、高等教育無償化、緊急小口資金の特例貸付の返済免除、臨時給付金受給の条件にもなっている「年収204万円」という回答が最も多く38%、次いで、児童扶養手当全部支給の「年収160万円」が24%、児童扶養手当一部支給の「年収365万円」が14%だった。
一方で、家計は火の車だ。11月に支払った食費は「3万〜3万5000円」がピーク。子どもの数にもよるが、おおむね「2万5000円〜4万円」の範囲に収めようとしている家庭が多い。昨年の12月と比べた食費の家計への負担は「とても負担に思う」75%、「やや負担に思う」23%で、実に98%が「負担が重くなった」と感じていた。対応策として「食べない」を挙げた人が多い。前日の食事の回数を聞いたところ、親は「1食」が19%、「2食」が47%で、3人に2人が食事を抜いていた。子どもに関しては「3食食べさせたい」と思っている親が多いが、それでも「2食」が24%いた。
節約についての自由記述には切実な声が並んだ。
「ご飯の水の量を増やした」「うどんの汁だけ飲んだ」
- ご飯の水の量を増やすようになった(千葉県、30代、子ども1人)
- 30円の豆腐、19円のもやしに醤油をかけて自分のご飯にする。乾麺をブヨブヨになるまでゆでて、おなかをふくらせる(大阪府、50代、子ども3人)
- お粥にする(鹿児島県、40代、子ども2人)
- 私の昼食は60円のカップ麺、賞味期限切れ当日の物を買って、それを数日かけて消費する(三重県、40代、子ども2人)
- 育ち盛りが3人なので、私が毎食我慢をしている。うどんの時は玉が足りなくて汁だけ飲んだ日もある(愛知県、40代、子ども3人)
仕事をする上で制約になっていることとして、「自身の病気や心身の不調」を挙げた人が3割にのぼった。欠食による貧血や栄養失調で、就労にドクターストップがかかったという母親も複数いた。
6月〜11月の半年間に水光熱費や家賃、学校納付金の滞納があった人は36%。
4月〜10月に家計がショートし、借り入れ等を行った人は64%。内訳は「貯金を取り崩す」(24%)、「家族や親戚から借りる」(18%)など。クレジットカードのキャッシング利用や、銀行のカードローン、消費者金融からの借り入れなど、複数の選択肢にまたがる回答も少なくない。
コロナ時期の返済が重なり、滞納 「子どものお年玉、借りた」
「コロナ時期に借りた返済が重なっている」「支払えず滞納し、毎日電話がかかってきて精神的にとても苦痛で、消えたいと思う」「子どもがお年玉や祖父母や親戚からもらって貯めていたお金を借りたので、早く返したい」などの切実な声もあった。
子どもに関して必要な物が買えなかった体験の有無を聞いたところ、「新しい洋服・靴」は67%、「文具や学用品」は39%、「問題集や参考書」は59%、「スマートフォンやパソコン」は71%が「買えなかったことがある」と答えた。
また「子どもの誕生日を祝えなかった」は29%、「部活動関連の費用を払えなかった」は31%、「修学旅行など学校行事に参加できなかった」は10%にのぼった。
ひとり親や困窮家庭の子の不登校傾向、顕著に
子どもの状況で心配なことを聞いたところ、「不登校(年間30日以上の欠席)」が13%、「学校への行き渋り」が25%にみられた。認定NPO法人「キッズドア」の2023年11月の調査でも、生活困窮世帯の21%に「子どもの不登校」が見られたという。文部科学省の2022年度の調査によると、小中学生の不登校率は3.2%で、ひとり親や困窮世帯では不登校の子どもの率が顕著に高い。背景には上記に挙げたような「買えない」体験や、友達との連絡手段がなく輪に入れないなどの状況があるとみられる。しんぐるまざあず・ふぉーらむの調査に戻ると、子どもの状況に対応するために、親が「仕事を休んだ」(38%)、「短時間の仕事に変わった」(11%)、「仕事を辞めざるをえなかった」(10%)と、就労にも影響が出ていた。
わずかに所得制限オーバー 支援から外れ「希望が持てない」
現在、児童扶養手当は子ども1人あたり満額で4万4140円。第2子は満額で1万420円、第3子は満額で6250円が加算される。子どもが多くなるほど、1人あたりの金額は少なくなる。この支給額は過去40年間で35%しか増額されていない。最低賃金が244%増となったのとは対照的だ。所得制限限度額も子1人の世帯で、全部支給が160万円、一部支給が365万円と、2002年に大幅減額されて以降、低く据え置かれてきた。子どもの貧困対策に取り組む支援団体は昨年12月、こども家庭庁や厚生労働省に要望書を提出し、児童扶養手当や加算額を子ども1人あたり1万円ずつ増額する▽所得制限を全部支給で200万円、一部支給で400万円に引き上げるーーの2点を求めた。これに対し、政府が同月末にまとめた「子ども未来戦略」では、増額は第3子の加算額を1万円に引き上げるのみで、所得制限の引き上げも全部支給で190万円、一部支給で385万円までにとどまった。
調査の自由記述欄では、最低賃金の上昇やコロナ給付金により所得制限をわずかに超え、かえって生活が苦しくなったという訴えが目立った。
- コロナでの一時的な慰労金などの支給があり、収入が上がったことにより、わずかな差で自治体の支援から外されました(北海道、40代、子ども1人)
- 11月から1万5000円オーバーしたために、年30万円いただいていた母子手当が0円になってしまいました。段階的に減らしてほしかった。物価高で社会保険料も上がり、手取りが毎年減っているのに手当がなくなってしまい希望が持てません(石川県、40代、子ども2人)
- 中途半端な年収(所得制限限度額を54円オーバー )で児童扶養手当を受けられず。収入調整しようとすると解雇になるため、動くに動けない。食料支援も児童扶養手当受給が条件ばかり。食事の回数を減らすしかなく本当に辛い(東京都、40代、子ども2人)
調査を受け、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は「アフターコロナと物価高が、ひとり親と子どもたちの生活を生存ぎりぎりの状況に追い詰めている」とし、「今すぐの、恒久的な手当の増額等の支援が望まれる」と訴えている。
(生活ニュースコモンズ編集部)