改めて「私の身体のことは私が決める」

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My Body My Choice 当たり前のこと

トランプ前大統領の再選が決まった後のアメリカで、トランプ氏を支持する男性たちが、女性に向かって「Your body my choice」と言い放つ例が増えているとニュースで見た。子どもたちの間でも、男児から女児へのからかいの言葉となっているというから深刻だ。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの合い言葉「My body my choice」(私の身体のことは私が決める)を反転させたもので、「女性の身体に関する選択権は男性の手の中にあるぞ」という脅しであり、時間を100年巻き戻すような言葉だ。

対岸の火事かと思いきや、日本でも日本保守党代表の百田尚樹氏が、少子化対策の一案として「小説家のSF」「ええ言うてるんちゃうで」と前置きしながら「30超えたら子宮を摘出する」と発言した。その前には「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超えて独身だったら、生涯結婚できない法律にする」と述べている。まさに「Your body my choice」を体現したような脅しであり、呪いの言葉だ。

百田氏発言の何が問題か

百田氏は「下品でどぎつい表現」で「人によっては不快な思いをさせた」ことを謝罪したが、本質はそこではない。女性の身体に関する決定権を、あたかも他者(この場合は男性)が握っているかのような発言が問題なのだ。

女性の教育を受ける権利を否定し、婚姻の自由を否定し、女性を「子どもを産む装置」としてしか見ていない——その人間観、女性観が政治家としてあるまじきものだ。

マスメディアの報道からはこの発言で女性たちがどのような恐怖を感じ、腹の底から怒っているかという熱が感じられない。どこかに「百田氏のいつもの暴言」「バカな発言」というシニシズムがあると感じる。しかし、シニカルになっている場合では全くない。

女性の人権や自由を制限しない少子化対策を

女性にばかり子どもを持つことに年齢制限があるかのように言われるが、男性だって働けるうちに子どもが自立できる年齢まで育て上げることを念頭に置けば、おのずと子どもを持つ年齢の上限は見えてくる。70過ぎて子どもを授かりました、なんてミック・ジャガーのような大スターでもなければ、生活がおぼつかなくなるだけだ。実際に、日本で60代で子どもを持つ男性は0.05%、70代にいたっては0.005%という統計がある。「40過ぎて子どもを持たない男性は性器を切断する」と言われたら、男性は恐怖を感じないだろうか? ここはぜひ、同じ恐怖を感じて、それから一緒に怒っていただきたい。

少子化対策というならば、未婚・非婚でも安心して子どもを育てられるような社会保障、男女の賃金格差の是正、教育の無償化、養子縁組や里親制度の普及など、個人の身体を犠牲にせず、人権や自由を制限せずにできることがたくさんあるはずだ。いやしくも政治家ならば、そういう方策について熟議していただきたい。

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