「NHKから国民を守る党」は「反社会的カルト集団」 投稿は名誉毀損にあたらず 東京地裁判決

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自らを「犯罪者、反社会的勢力」と認めていた政党があるんだって

政治団体「NHKから国民を守る党」は「反社会的カルト集団」と論評する記事をSNSに投稿したのは名誉毀損にあたるとして、同党代表の立花孝志氏がジャーナリストの石渡智大さん(46)に160万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁(阿部雅彦裁判長)は11月27日、立花氏の訴えを棄却しました。石渡さんはX(旧ツイッター)などで「選挙ウオッチャーちだい」の名前で活動、著書に「『NHKから国民を守る党』とは何だったのか?」があります。

今夏の都知事選をめぐる投稿が争点に

争点となった投稿は今夏の東京都知事選をめぐるもの。石渡さんは2024年6月24日、Xに都知事選の選挙ポスター掲示板の写真を添付し、「今日も反社会的カルト集団『NHKから国民を守る党』が展開しているポスター掲示板のショバ代ビジネスについて、無料で記事にしていきます」と投稿。6月30日、「選挙の取材をやっていて、事件屋の人間からどやされるのは、反社会的カルト集団である『NHKから国民を守る党』しか存在しない。このような反社会的カルト集団が野放しになっていると、これからますます事件が起こる。あちこちで被害に遭う人が増える」と投稿しました。また、インターネットの動画配信サイトで6月30日、「サリンをまかないオウムみたいなもん。危ない奴らの集団であることは間違いないですね、N国って」と発言しました。

被告は証拠として、N国党や立花代表が行った違法行為や違法行為を扇動する発言を18件、列挙しました。原告はこのうち、「石渡さんの住所をネット上にさらした結果、代引き商品の送りつけ被害などが生じた」という主張をのぞき、17件について「事実」と認めています。

原告が事実と認めた行為の例

〇(立花氏は)平成25年1月18日、NHK職員から契約書を奪い取り、その後、同事実により検察官送致された。同年10月18日、同調者数名とともに、NHKの法人委託業者の従業員が視聴者宅を訪問した際、同従業員に対し、腕をつかむ、身体を引っ張る、顔をヘッドロックするなどの暴行を加え、約40分間身体を拘束し、その後、同事実により検察官送致された。
〇N国党から柏市議選に立候補していた候補者の応援演説をしていた立花氏に対し、聴衆の男性が「嘘つき」と2回ヤジを投げかけたところ、立花氏は、N国党のスタッフらと10名以上で同男性を長時間追尾し、罵声を浴びせ続け、選挙妨害であるとして、同男性を現行犯逮捕し、警察官に引き渡した。なお、立花氏は一連の状況を撮影した動画を自身が管理している動画投稿サイトのチャンネルに、男性の顔等を画像処理することなく掲載している。
〇令和元年11月19日、当時桜井市長選に立候補していた立花氏は、選挙運動をするとの前置きをした上で、東京都渋谷区のNHK放送センター前の路上で、携帯電話を使用して、NHKの広報担当者に電話をかけ、NHKから預かっている個人情報を社会、世間に拡散すると申し向けた。立花氏は令和4年1月20日、威力業務妨害の有罪判決を受けた。
〇立花氏は上記の事実で検察官送致されたときの報道を受けて、自身の動画投稿サイトのチャンネルにおいて、自身を犯罪者、反社会的勢力と評した上で、これからもNHKの業務を妨害し続けると宣言した。
〇立花氏は、令和2年7月17日、N国党の役員会において、東京都知事選挙に立候補して落選した後の政策に関し、「我々は法律を守らない政党であるということを売りにしたい」「『法律を守りません』『我々は法律よりも正義や道徳を優先します』みたいなものを売りにしたい」などと発言した。
〇立花氏は、令和2年10月16日、動画投稿サイトを通じて、被告が詐欺を働いて逃亡している、被告を撮影したら10万円払うと発言した。これを受けて、氏名不詳者2名が被告の自宅を訪問し、被告を動画撮影した。

テロや民族虐殺をも辞さないかのような発言

東京地裁はこうした事実や、東京都知事選においてN国党だけで24人の候補者を擁立し、公費で設置するポスター掲示板の枠を一般市民に売り出したこと、性風俗店の広告ポスターが貼られたことなどについて、新聞各紙も批判的に論じていたことに注目しました。

その上で、立花氏は「被害者のある犯罪行為や不法行為を繰り返してきたのみならず、副党首とともに支持者に対して自らに批判的な言論活動を行う被告または第三者への迷惑行為を促し、テロや民族虐殺をも辞さないかのような発言すら行っていた事実が認められる」としました。

被告の投稿は、一般の読者等の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告について「違法と評価される行為を平然かつ盲目的に行う集団又は団体である」と述べていると解されるものであるとし、「違法な行為を平然と繰り返す盲目的な集団または団体と評価して『反社会的カルト集団』『オウムと一緒』『オウムみたいなもん』と表現したことは意見や論評としての域を逸脱したものとは認められない」と結論づけました。

「選挙ウォッチャーちだい」こと石渡智大さん=東京都内

「ただ言ってるだけで根拠がない」

判決後の記者会見で石渡氏は「国会議員が2人いる政党なので、簡単には認められないだろうと思ってきたが、私たちの主張の根幹の部分が認められた。画期的な判決だと思う。世の中の人にN国党がいかに反社会性があるのかを知ってほしい」と話しました。また、兵庫県知事選での立花氏のポスターや演説についても「自死した県幹部に不同意性交があったと吹聴した。下半身の問題は他の候補者は絶対に口にしないから、耳目を集める。以前の選挙でもある俳優の下半身問題をネタにし、言いっぱなしに終わった。今回、反社会的な行動をあっさり事実と認めた反応をみてもわかるが、立花氏の発言はただ言ってるだけで、根拠がない」と批判しました。 被告側の石森雄一郎弁護士は「N国党の特徴は、支持者を不法行為の実行主体として巻き込んでいくこと。一見面白いと思って追従すると、いつの間にか犯罪行為に引きずり込まれている」と指摘。石渡氏は「是非みなさんにこの判決を使っていただきたい。証拠もネット上に無料で開示する。N国党は発信があまりに多く、彼ら自身にも何を発信したのかがわからなくなっている。N国党や立花氏の違法性、犯罪性について、みなさん自身が検証してほしい」と話しました。