「デマに満ちた外国人への攻撃は社会を壊す」日本ペンクラブが緊急声明

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デマや差別はだめだと言える社会でありたい

日本ペンクラブ(桐野夏生会長)は15日、参議院選挙における外国人への差別やデマの拡散に対する緊急声明を発表しました。ペンクラブが選挙期間中に声明を出すのは初めてのことです。同日、東京都内で開いた会見で、声明の発出を呼びかけた作家の中島京子常務理事は「選挙戦を通じ、デマ合戦になってきていることに強い危機感を覚えた。デマに惑わされて票が伸び、国の政策に差別が反映されたものが入るのはとても怖い。デマはだめだとちゃんと言わないと、民主主義が壊れてしまう」と語りました。

日本ペンクラブのYouTubeチャンネルより

投票する前に一度立ち止まって

 会見では最初に、作家の桐野会長が「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」とする緊急声明を読み上げました。排外主義が支持を集めるのにはどのような背景があると考えられるかという質問に対し、桐野会長は「一つには貧困があると思う。抑圧されたものが弱いものに(憎悪を)噴出していく。外国人や女性にも向けられている」と答えました。また山田健太副会長は「投票する前や、友達と議論する時に、一度立ち止まってもらって、いつもみているSNSの情報は本当なんだろうか、自分たちの求める社会につながるのかと考えてほしい。そのきっかけになれば」と声明の意義を説明しました。

 声明の全文は以下の通りです。

【日本ペンクラブ緊急声明】

「選挙活動に名を借りたデマに満ちた外国人への攻撃は私たちの社会を壊します」

 私たちは、このまま社会が壊れていくのを見過ごすことはできません。

参議院選挙を通じ、与野党を問わず、一部の政党が外国人の排斥を競い合う状況が生まれています。しかも、刺々しい言葉で、外国人を犯罪者扱いし、社会の邪魔者のように扱うことが、さも日本の社会をよくするかのように振舞っています。

「違法外国人ゼロ」「日本人ファースト」「管理型外国人政策」など、表現の仕方は違えど、外国人を問題視するような政策が掲げられ、「外国人犯罪が増えている」「外国人が生活保護や国民健康保険を乱用している」「外国人留学生が優遇されている」といった、事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽る行為です。こうしたデマと差別扇動が、実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋がった歴史を私たちは決して忘れることはできません。

私たちはこれまで、過去の反省に立って多文化共生社会をめざし、すでに多くの自治体ではそのための条例も施行されています。そうして少しずつでも、成熟し前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うための「デマ」や「差別的発言」によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません。

民主主義社会を守るために、有権者がいま一度立ち止まり、自身の一票を大切に行使することを願います。

2025年7月15日

一般社団法人日本ペンクラブ

会長 桐野夏生

理事会一同