みんなが笑顔になるように 「みやぎSCD/MSA友の会」 当事者、家族がつながる場

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進行性の神経難病の患者会が宮城県にできました。つながり合い、話し合える場に。

患者会「みやぎSCD/MSA友の会」代表の宮崎滋さん

歩行のふらつきや、会話の時にろれつが回らないなどの症状を生じる進行性の神経難病「脊髄小脳変性症」(SCD)や多系統萎縮症(MSA)の患者会「みやぎSCD/MSA友の会」が宮城県で立ち上がった。東北で患者会の拠点があるのは青森県、山形県に続き3カ所目。昨年12月15日には、仙台市内で第1回友の会交流会が開かれ、県内外から当事者やその家族ら約20人が集まった。当事者で代表の宮崎滋さん(47)は「難病は情報が少なくて大変。気持ちを話せる場所もない。当事者やその家族が集まって情報交換できる場所作りをしていきたい」と話している。

症状も病気の進行速度もそれぞれ違う

患者会で配布された資料を読む参加者

全国脊髄小脳変性症・多統系萎縮症友の会のHPによると、脊髄小脳変性症では、主に小脳の神経細胞が徐々に減少することにより、運動がスムーズにできなくなる運動失調と呼ばれる症状が現れるという。小脳だけではなく、脊髄にも異常がみられるという。

一方、多系統萎縮症は、広義の脊髄小脳変性症の中に分類されているもののひとつで、運動失調症、自律神経障害、パーキンソン症状の3系統の症状が現れるとされている。

歩行時のふらつき、手や指の震えのほか、転びやすくなったり、起立や歩行が不安定になったりする。ただ宮崎さんによると、「症状も病気の進行速度も人それぞれで、必要としている支援や情報が異なることがある」という。

日々の生活を暮らしやすくするために

自身の病気のことを話す宮崎さん

宮崎さんは脊髄小脳変性症を抱えながら、仙台市でデザイナーとして働いている。体の異変を感じたのは20代の頃。歩いている時に「後ろ姿のバランスが悪く見える」と言われたことがきっかけだった。1〜2年経つとつまずきやすくなり、26歳ごろには杖を使って歩くようになったという。7年前から、車椅子で生活するようになった。

今年8月、山形市内で開かれた山形県の友の会に参加したことをきっかけに、宮城県でも患者会を立ち上げようと考えるようになった。

「普段、生活している中で同じ病の人と出会うことはほとんどなく、孤独を感じやすい。山形の友の会で、自分の日常生活での工夫を話したら、他の当事者の方にとても喜んでもらえた。少しでも日々の生活を暮らしやすくするために、気持ちを分かち合ったり情報交換できたりする場が宮城でも必要だと思った」と話す。

「病気を受け入れられなかった」

もう1人の発起人は事務局長の菅野友里絵さん(29)。菅野さんの母(63)が多統系萎縮症だ。

診断されたのは約8年前。当時県外に住んでいた菅野さんは、母と電話で話していた時に、ろれつが回っていないことに気がついたという。菅野さんの母も「周囲から歩き方が変だと言われている」と話しており、その後に病院を受診して病気がわかった。

病気の進行が早く、母の体は思ったように動かなくなったが、「母も私を含めた家族も、病気を受け入れられなかった」と振り返る。

3年前に誤嚥性肺炎で半年間入院したことがきっかけで寝たきりとなり、今は自宅で訪問看護などのサポートを受けながら生活している。病気の進行で会話も困難になってしまったため、目配せでやり取りしている。

「母は特に『自分でなんでもやりたい』と思っていた人だった。母の気持ちを思うと、食事や入浴などをどうサポートしていいのか悩んだ時期もあった。他の当事者家族はどう接しているのか情報がほしかった」と話す。

「みんなが笑顔になるように」

ロゴは2つの笑顔が寄りそって、「ハート型」になっている

現在は、宮崎さんが代表、菅野さんが事務局長として患者会の運営に携わっている。2人で友の会のロゴも考えた。左側のオレンジは「人とのつながり」、右側のピンクは「友の会に集う参加者」を表現しており、2つが重なると「ハート」の形になる。「友の会に参加することで、参加者みんなが笑顔になるように」「ここに参加するとほっこり落ち着けるよ」などの意味を込めているという。

初めての交流会で情報交換

情報交換をする参加者

交流会では、SNSなどで患者会の設立を知った当事者とその家族らが集まった。参加者は輪になって、1人ずつ、自己紹介とあわせて、病気を抱えながらの生活で困っていること、治療や介護に関する悩みなどを自由に話した。

「病気になってしまったが、運転はいつまでしているのか」「どんなリハビリだと効果があったのか」などの悩みや質問が寄せられると、その都度、宮崎さんが「お話できる範囲でいいので、皆さんはどうしていますか」などと声を掛け、それぞれが自由に、自分の経験を共有した。

当事者が車椅子から落ちて動けなくなった場面に遭遇したある家族が、「どう介助したら良かったのか」という悩みを打ち明けると、別の当事者家族が、介助の方法を実演する場面もあった。

「まだ病気が受け入れられない」「思った以上に病気の進行が早くてショックを受けている」などと、病気と向き合う中での安や戸惑いなどを吐露する当事者や家族の姿もあった。「こういう場所を探していました」と感想を述べて、患者会の発足を喜んでいる当事者もいた。

3年前に診断を受けたという宮城県気仙沼市から参加した男性(57)は、「同じ病気の人と会ったことがなかったので、少しでも情報が欲しくて参加した。同じ病気でもいろいろな症状があることが分かり、みなさんのお話が聞けて良かった」と話していた。

友の会では、今後は当事者ら同士の情報交換の他に、生活面での困り事を相談できるよう、管理栄養士や理学療法士などの専門家を招いた勉強会なども企画していきたいとしている。

「みやぎSCD/MSA友の会」への問い合わせは、「みやぎSCD・MSA友の会」事務局(scdmsa.miyagi@gmail.com)まで。Xにも公式アカウントを設け、定期的に情報発信しているという。