韓国『京郷新聞』FLAT おんな物語アーカイブで紹介されました!
2024.07.12 17:11
毎日新聞で25年間働いた吉永磨美(写真左)と朝日新聞で33年間働いた阿久沢悦子(写真真ん中)は昨年会社を辞めた。日本のマスコミの男性中心的文化に疲れた若い女性後輩たちが辞めるのを見て「何かしなければダメだ」という危機感を感じたからだ。似たような問題意識で意気投合した彼女らは、フリーランス記者の岡本有佳らと共に「生活ニュースコモンズ」というメディアを昨年7月に設立した。
メディア名「コモンズ」には年齢・ジェンダー・国籍など多様な人々が集まる「共有する空間、公園」という意味を込めた。「コモンズ」は今年3月8日世界女性の日、ホームページを公開して現在累積ページビュー30万を越え、記者も10人程度に増えた。韓国のマスコミ状況を取材しにきた吉永・阿久沢・岡本に去る4日ソウル鍾路区仁寺洞で会った。
吉永は2年間の新聞労連委員長の任期を終えて会社に戻ることができたが、「男性中心的な意思決定に耐えながら働かなくてもよいメディアを味わいたかった」。彼女は「多くの女性記者が男性中心的な会社で我慢しながら働かなければならなかったので、新しいメディアを提示したかった」と話した。
阿久沢は、2022年に10代の少女たちを応援してきた団体「コラボ(Colabo)」に対する取材をしたときの話をした。彼女はこの団体に対する妨害活動について取材して記事を出したが、2ヶ月間保留された。男性デスクは「コメントを女性から男性に変更してほしい」と露骨に要求した。 「朝日新聞は包括的差別禁止法が必要だとは思わない」という意見まで聞かなければならなかった。阿久沢は「女性の話を聞かない新聞」だとし「ジェンダーデスクはあるが、(担当は)男性で、ジェンダーデスクを通過しても編集局長ラインでダメだったという話を聞いたりもした」と話す。
2023年4月基準の日本も新聞・通信社91社のうち女性記者比率は23%に過ぎない。20年前に比べて女性記者比率は増えたが、新規卒業者採用でも依然として女性は5%にはならない。女性管理職の割合(9.7%)は10%に達せず、足踏み状態である。岡本(写真右)は「デスクなど意思決定構造に女性がいないため、性差別、性搾取、女性貧困、性少数者などに対する報道が極端に少ないという問題意識が共通している」と話した。
彼女らは男性中心メディアで報道されない現実について口をそろえた。日本の女性衆議院比率は9.7%、参議院比率は23.1%、都道府県議会比率は11.8%で、女性の政治的代表性が不足している。性別賃金格差は24.3%で、男性が100万ウォンを受け取るとき、女性は75万7000ウォンを受けとる。企業の管理職に従事する女性の割合は12.7%に過ぎない。婚姻時に夫の性に従う女性の割合は95%に達する。
彼女らは女性の半分以上非正規職として働いている現実、女性たちが処遇改善を要求する動きについて取材している。 「会計年度任用職員」という1年契約の不安定な雇用形態で働く多くの女性が、月に十数万円(数十万~百数十万ウォン)の給与を受ける現実を変えるためだ。この問題を解決するため、去る4月「困難女性支援法」が施行されたが、この法律に従ってこれらの女性を相談する労働者も非正規職だ。阿久沢は「支援される女性も、支援する女性も非正規職でお互いが『困難な状態』に置かれている」と話した。
彼女らは日本社会の性差別的視線についても心配した。吉永は最近、社会関係網サービス(SNS)上で議論になった一つの製薬会社飲料広告に対して「性差別的」と批判した。同社は女性の顔の上には「仕事、育児、家事、3人の自分が欲しくないですか?」という広告フレーズを付けたが、男性には「時代が変わると疲れも変わりますからね」と付け加えた。吉永は「女性が3つの役割を果たさなければならないという日本社会の雰囲気を見せてくれる」とし「日本社会は女性に与えられる圧力が過度であることを知らない」と話した。
彼女らは日本メディアの文化を変えるためにも努力している。吉永など新聞労連組合員らは2022年『失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック』を出版した。性暴力被害報道時の注意点、女性に対する偏見や性少数者に対する表現で考慮する点などをまとめた。 ‘女性特有の配慮’などのような表現を止めようなど実際の例を盛り込んだ本だ。

これから「コモンズ」は女性当事者の声をそのまま伝えるメディアになることが目標だ。彼女らは「女性たちがより多くの権利を獲得していく姿を記録し、『見えない家父長制』を可視化する」と抱負を語った。
▼イム・アヨンジェンダーデスク兼フラットチームリーダー
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