「検察は性被害を軽く見ないで」 被害者聴取で検察から二次加害を受けた女性が国に損害賠償を請求

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検察官は性暴力についての認識をアップデートして!

(この記事には、性暴力に関する具体的な描写が含まれます。お読みになる際にはご注意ください。)

性暴力事件の被害者聴取で、東京地検の検察官(当時)から攻撃的な発言や侮辱を受けたとして、被害女性が5月22日、国を相手取り500万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。同月29日、東京都内で原告の女性はるかさん(仮名)と代理人の桜井祐子弁護士らが記者会見を開き、「検察は性被害を軽く見るバイアスを排し、適当な事件処理を防ぐガバナンスを整備してほしい」と求めました。

不適切な言葉がけや態度による威圧

はるかさんは2022年に知人男性から、心理的に逆らえない状況に追い込まれる形で行われるエントラップ型の性暴力被害に遭いました。加害者の男性は2023年5月に書類送検されました。男性が著名人だったことから、週刊誌に「はるかさん側が1億円の慰謝料を要求している」などの事実に基づかないハニートラップ説が掲載されました。東京地検の被害者聴取はその年の6月6日にありました。

訴状によると、担当の男性検察官は約1時間20分にわたる聴取の中で、性暴力事件の捜査で被害者にかけてはいけない言葉や態度による威圧を何度も行いました。

男性検察官の発言の内容は以下のようなものです。

・直後に、被害を受けたことを医師になぜ言いたくなかったのか。

・沈黙は裁判では不利になります。色々考えていないで本当のことを話してください。

・(2回目の診察では被害にあった話をしているというと)それは弁護士に相談したあとでしょ?気持ちが変わっちゃったんだ?

・(膣に指を入れられてけがをしたことについて)、セックスしていないんでしょ?それを性行為と(医者に)伝えたのは虚偽申告じゃないの?

・嘘をついたら偽証罪になりますよ。

・LINEのデータを出せないということは何か他の人との連絡で見られたらまずいものがあるということですか?

・LINEを消したということは証拠隠滅になります。裁判ではだいぶ不利になります。

・(はるかさんが加害者に送ったLINEに「不正出血はおさまってきた」などとあることを踏まえ)性被害にあった被害者とその加害者のLINEのようには見えない。

・1億円要求しているみたいだけど、相場より遥かに高い金額を要求したら周りは金銭目的と思うよ。(週刊誌報道は事実ではないと告げると)、じゃあ、桜井弁護士が勝手に言ってることになるけどいい?

・不起訴になると思います。私が無理と言ったら無理です。あなたの証言は、信用できないことや疑わしいことが多い。

・指を入れられただけ、口に入れられただけ。最終的に挿入までの被害に遭った人でさえ、数百万円の示談金だよ。

代理人弁護士にも示談を誘導

被害者の聴取が終わった直後に被害者代理人として付き添っていた桜井弁護士が検察官に呼ばれ、対面で話をしました。

検察官は処分の見通しについて「起訴するのは難しいってわかりますよね」と言い、示談に応じるよう誘導しました。桜井弁護士が「性犯罪捜査の勉強を本当にされていますか?」と問い、「性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック」を読んだかと聞くと、検事は「そのような本があることは知っています」。性犯罪被害者の供述や反応についての論文については「知りません」と退け、「文献を出されるとしても、問題は本件の事実認定ですので、意味はないと思いますよ」と牽制しました。

桜井弁護士が、加害男性がはるかさんに送った性行為が不同意であったことを認め謝罪をしている内容のLINEについて言及すると、検事は「お二人の関係性……直後に医師に被害を言っていない」などと言い、証拠として取り扱わない可能性を示唆しました。また、他の弁護士も含めた検察官面談の申出を即時に拒否。週刊誌報道についてもはるかさんや桜井弁護士から情報が漏れているのではないかと決めつけられたといいます。

はるかさんはついたての向こうから「検察を変えてほしい」と訴えた=東京都千代田区

被害申告が嘘であるかのように決めつけられた

はるかさんは聴取後、桜井弁護士に「被害申告が嘘であるかのように決めつけられ、信じられないようなことを言われた。ショックで言葉を失ってしまい、言いたいことを何も話せなかった」と訴えて泣き、過呼吸に陥りました。

桜井弁護士は、はるかさんへの聴取と自身との面談について詳細をまとめ、最高検検事総長と東京地検検事正にあてて内容証明郵便を送付し、担当検事の交代を求めました。東京地検から苦情に基づき調査手続きを開始したとの連絡がありましたが、事件は十分な補充捜査がないまま不起訴処分になりました。桜井弁護士が不起訴処分の理由説明の申し入れを行いましたが、担当検事は「嫌疑不十分。それ以上の説明は証拠の説明にわたってしまうのでしません」と応じませんでした。

桜井祐子弁護士=東京都千代田区

検事の不適切な言動についての東京地検の調査は「問題なし」という結論が出され、検察官の交代はないまま事件は終局処分となりました。

桜井弁護士は記者会見で「検察では、性被害も被害者もあまりに軽く扱われ、捜査や証拠の評価が担保されていない。性被害の申告を嘘かもしれないで片付けてはいけない。検察では適当な事件処理を防ぐガバナンスがきいていない」と話しました。

はるかさんも次のように話しました。

3年前、性被害についての聴取を受けました。私の人生の中で一番つらかったのは被害を受けた日です。ですが、検察で聴取を受けた日もそれと同じくらいの深い絶望を感じた日でした。私は被害を受けてから今日までずっと正攻法で闘ってきました。加害者が著名人であるということもあり、正直、事件を知る友人からも他の手段を進められたこともありました。それでも私が司法の手続きを選び続けたのは、この国の司法が、事実にしっかりと向き合い公平に判断してくれると、信じて疑わなかったからです。ですが、担当検事の聴取の後、東京地検の上席の方から言われたのは『証拠が足りませんでした』。本当にそうなんでしょうか?証拠が足りないという一方で、私の主張について十分な裏付け捜査を行わず、複数いる事件関係者への聞き取りも一切行いませんでした。さらに性被害について十分な知識や理解があるとは到底思えない、自身でも性被害について不勉強だったと認めた検事が事件を担当し、侮辱発言に関する調査結果も示されないまま、事件の結論は出されました。十分な知識と経験を持つ検事が必要な捜査を尽くした上でそれでも起訴に至らない結論だったのであれば、私自身、ここまでの思いには至らなかったのかもしれません。
私は、今回検察からの対応を受けて、性被害に限らず多くの事件で被害者が置き去りにされてしまう可能性がある、そしてその可能性が高いということに強い不安と不信感とおそろしさを感じました。性被害という問題は特に担当検事の価値観や先入観、認識の差が判断に大きく影響しやすい分野だと感じます。だからこそ司法には個人の感覚ではなく、組織としての知識や理解、そして公平性が求められるのではないでしょうか? 検察には勝てる事件を扱うのではなく、被害者の声に真摯に向き合い、重い被害結果をもたらす性被害に対して、もっと誠実に向き合う姿勢が必要だと思います。何より検察組織全体の性被害に対する知識や認識を今の時代に合わせてしっかりとアップデートさせていく必要があると強く感じています。
私はこの国の司法や検察が確かな透明性を持ち、被害者が安心して声を上げられる組織になってほしいと心から願っています。
もし今後も検察組織が今の体制のまま変わらないということであれば、性被害に限らず、不起訴という形で声を失っていく被害者がこれからも増え続ける一方なのではないでしょうか? 私はこれ以上、声を上げることすらあきらめてしまう被害者が出ないことを願って、そして検察を変えるために声を上げました。

刑法改正後も上がらない起訴率

刑法改正後、性暴力事件について、警察の事件受理件数は増えたものの、起訴率が上がっていないという指摘もあります。

はるかさんは「元検事正の性暴力を告発したひかりさんの姿を見て、未来の人の安全のために私もがんばろうと思った。検察には被害申告だけでも覚悟がいることをどうか理解してほしい」と訴えました。

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